ベーチェット病に関する調査研究

文献情報

文献番号
201231022A
報告書区分
総括
研究課題名
ベーチェット病に関する調査研究
課題番号
H23-難治-一般-006
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
石ヶ坪 良明(横浜市立大学 大学院医学研究科病態免疫制御内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 大野 重昭(北海道大学大学院医学研究科 )
  • 猪子 英俊(東海大学医学部)
  • 岩渕 和也(北里大学医学部)
  • 鈴木 登(聖マリアンナ医科大学)
  • 桑名 正隆(慶應義塾大学医学部)
  • 水木 信久(横浜市立大学大学院医学研究科)
  • 広畑 俊成(北里大学医学部)
  • 黒沢 美智子(順天堂大学医学部)
  • 蕪城 俊克(東京大学大学院医学系研究科)
  • 後藤 浩(東京医科大学)
  • 中村 晃一郎(埼玉医科大学)
  • 齋藤  和義(産業医科大学医学部)
  • 岳野 光洋(横浜市立大学大学院医学研究科病態免疫制御内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
29,270,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班では、基礎研究として、全ゲノム解析(GWAS)により、ベーチェット病(BD)の新規疾患感受性遺伝子(IL10、IL12RB/IL23R)が存在することを示し、さらに、病態におけるTh1、Th17を中心とした自己免疫応答、自然免疫の異常について解析を続けているが、平成24年度は、インピュテーション法を用いて、新たな疾患感受性遺伝子の同定、免疫病態の解明を目指す。臨床研究としては、本邦の実情に即した診療ガイドラインを策定し、国内診療レベルの向上および均一化を目的とする。
研究方法
1)遺伝素因の解析:GWASの結果を踏まえ、標的分子を絞り、インピュテーション法を用いて再解析する。
2) HLA-B51新規トランスジェニックマウスの開発:HLA-B51の第三世代トランスジェニックマウスを開発する。
3) 免疫病態の解析:患者リンパ球(Th1、Th17、Th22)の機能解析、実験的ブドウ膜炎モデルに対する新規IKKリン酸化阻害薬の治療効果の検討、自然免疫活性化機序に関与するパイリン結合蛋白の機能解析を行う。
4)診療ガイドラインの作成および改訂:過去の文献、研究班内の105症例の調査に基づき、血管型診療ガイドライン案の作成に取り組む。腸管型については、「原因不明の小腸潰瘍症の実態把握、疾患概念、 疫学、治療体系の確立に関する研究(代表者 慶應大 日比紀文)」班と共同改訂を行う。BDぶどう膜炎の活動性を定量化する眼活動性スコアの作成、およびインフリキシマブの効果減弱について薬理動態的解析を行う。
結果と考察
1)遺伝素因の解明:CCR1、STAT4、KLRC4、ERAP1の新規の4つの疾患感受性遺伝子を同定した。特に、ERAP1はHLA-B51と相乗効果(エピスタシス)を示し、疾患特異的抗原の提示に関与する可能性を示唆する。
2) HLA-B51新規トランスジェニックマウスの開発:マウスH-2欠損マウスにHLAB51遺伝子にリンカーを介してタンデムにヒトβ2ミクログロブリン遺伝子を用いたHLA-B51トランスジェニックマウスを開発した。
3) 自己免疫的側面:患者リンパ球を用いた解析から、Th1、Th17の病態への関与、Th17のIL-23依存性増殖、Th22の病態制御に関する役割が明らかになった。
4) 自己炎症的側面:β2マイクログロビンがパイリンの機能を制御している可能性が示唆された。
5) 実験動物モデル:実験的自己免疫性ぶどう膜炎マウスに新規NKT細胞リガンドRCAIを投与すると、IL-22、IL-17、IFN-、TNF-産生低下とともにブドウ膜炎の発症を予防する。また、エンドトキシン誘発ぶどう膜炎モデルマウスに対して、IKKリン酸化阻害薬IMD-0354が治療効果を示した。
6) 診療ガイドライン:「原因不明の小腸潰瘍症の実態把握、疾患概念、 疫学、治療体系の確立に関する研究(代表者 慶應大 日比紀文)」班と腸管型診療ガイドライン案を共同改訂し、インフリキシマブ(IFX)を標準治療に位置づけた。また、血管型診療ガイドラインの原案を作成した。眼病変の客観的評価指標として、ベーチェット病眼活動性スコア24(Behçet disease ocular activity score24:BOS24)を作成した。
7) 眼病変に対するIFX治療:治療患者における薬剤血中濃度とAntibody toward infliximab (ATI)を測定し、ATIが血中濃度の低下による効果減弱および投与時反応に関与することを見出した。
8) 神経型:シクロスポリンに誘発される急性型神経病変は、その再投与を行わない限り、再発しないことが示された。
9) 腸管型:既存治療抵抗性腸管型BD20例へのIFX治療の1年継続率90.0 %、潰瘍治癒率65 %で、3例で再燃を認めたが、腸管再穿孔例はなく、8例に認められた有害事象はいずれも軽微であったことから、腸管BDに対するIFX療法の安全性と有効性が示された。
10) 患者相談:研究班事務局に寄せられる患者・家族からの質問、診療の相談(年間50件程度)には継続して回答した。
結論
基礎研究では、GWASにより感受性遺伝子が同定されることにより、病態に関与する自己免疫、自然免疫の病態が解析され、その研究結果を踏まえた機能的異常も解明が進んでいる。さらに、病型や治療反応性との関連を解析することにより、さらに有用な情報を提供できると考える。臨床面では、今後、血管型診療ガイドライン案の完成を目指すとともに、特殊系のガイドライン案の評価、改訂を行う。

公開日・更新日

公開日
2013-04-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231022Z