原発性免疫不全症候群に関する調査研究

文献情報

文献番号
201231019A
報告書区分
総括
研究課題名
原発性免疫不全症候群に関する調査研究
課題番号
H23-難治-一般-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
原 寿郎(国立大学法人九州大学 医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 宮脇 利男(富山大学 大学院医学薬学研究部)
  • 有賀 正(北海道大学 大学院医学研究科)
  • 野々山 恵章(防衛医科大学校 医学研究科)
  • 森尾 友宏(東京医科歯科大学 大学院発達病態小児科学)
  • 今井 耕輔(東京医科歯科大学 大学院小児・周産期地域医療学)
  • 近藤 直実(岐阜大学 大学院医学系研究科)
  • 小島 勢二(名古屋大学 大学院発育・加齢医学)
  • 谷内江 昭宏(金沢大学 大学院医学系研究科)
  • 平家 俊男(京都大学 大学院医学研究科)
  • 小林 正夫(広島大学 大学院病態情報医科学)
  • 布井 博幸(宮崎大学 医学部)
  • 横田 俊平(横浜市立大学 大学院医学研究科)
  • 中畑 龍俊(京都大学 iPS細胞研究センター)
  • 峯岸 克行(徳島大学 疾患プロテオゲノム研究センター)
  • 笹原 洋二(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 河野 肇(帝京大学 医学部)
  • 小原 收(財団法人かずさDNA研究所 ヒトゲノム研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
44,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班は、患者登録による患者実態の把握、診断や治療に関する患者や主治医からの相談に対する専門的情報提供、診断法の開発や遺伝子解析システムの整備、最新の分子遺伝学的手法を駆使した病因・病態解析、治療ガイドラインの作成、新規治療法の開発を介して、原発性免疫不全症候群患者QOLと医療水準の向上に貢献することを目的とする。
研究方法
以下の重点目標を掲げ研究を行う。
1. 疫学調査研究:平成20-23年度に行った全国調査結果の解析を継続し、生活習慣や合併症との関連等を解析する。患者登録、データベース構築を推進する。
2. 新規診断法、迅速診断法の開発:flowcytometer等を駆使した迅速診断法を開発する。
3. Primary Immunodeficiency Database in Japan(PIDJ)プロジェクト:
On lineで患者登録を行い、依頼のあった遺伝子解析や蛋白解析、生体試料の保存を理化学研究所やかずさDNA研究所と共同で行う。
4. 責任遺伝子、病態の解明:エキソーム解析やRNA Seq法等を駆使して新規責任遺伝子を同定する。iPS細胞やヒト化マウスを用いた病態解析を行う。
5. 治療ガイドラインの作成と新規治療法の開発:最適な治療法等を提示し公開する。遺伝子治療の実用化に向けた研究を行う。
6. QOL調査と患者家族や医療者への情報提供:原発性免疫不全症候群の患者家族向け概説書を作製する。患者家族会との講演会、相談会を実施する。
結果と考察
1. 全国疫学調査の解析結果
XLAでは成人例で気管支拡張症・難聴の合併が多かった。CVIDでは15歳未満での発症例が重篤な合併症が多かった。重症先天性好中球減少症の全国調査では、76%にELANE変異、12%にHAX1変異を認めた。46人中4人がMDS/AMLに移行していた。12例は悪性転化前に造血幹細胞移植が行われ全例生存していた。
2. 新規診断法、迅速診断法の開発
p47phox/p67phox欠損型CGD、FHL、TYK2欠損症の迅速診断法を確立した。重症複合免疫不全症の新生児マススクリーニング法の実用化に向けて調整している。
3. Primary Immunodeficiency Database in Japan(PIDJ)への登録、遺伝子解析
平成20年度から平成24年11月までに1747例が登録された。遺伝子解析に次世代シーケンサーの活用を開始した。
4. 責任遺伝子の同定や病態の解明
Chediak-東症候群患者由来のiPS細胞を樹立した。原因が不明である3疾患についてエキソーム解析を行い、B細胞欠損症(FANCE遺伝子変異)、CVID(BTK遺伝子変異やSTAT1遺伝子変異、FANCA遺伝子)、NKT細胞欠損と高IgM血症・抗体産生不全を特徴とする新規原発性免疫不全症候群(新規遺伝子)の責任遺伝子を同定した。XIAP遺伝子変異と低ガンマグロブリン血症との関連を明らかにした。X染色体の不活化異常によってWASが女性に発症する事を明らかにした。乳児期発症の炎症性腸疾患を呈したIL-10R異常症を同定した。STAT1 DNA結合領域にミスセンス変異を有するCMC患者を同定した。IKZF1変異を有するB・NK細胞欠損症の児が、NOTCH1 somatic 変異によりT-ALLを発症した事を解明した。TRAM分子がMyD88を細胞膜へと誘導する事、IL-18によるINF-gamma産生に関与している事を明らにした。DAMPsに関連したC3、ATPとP2X7、Mincleの死細胞に対する炎症への関与を検討した。
5. 治療ガイドライン作成と新規治療法の開発
SCID、WAS、CGDに対する造血幹細胞移植ガイドライン、高IgM症候群や原発性免疫不全症候群患者のBCG感染症の治療ガイドラインを作成・公開しているが、重症先天性好中球減少症についてもガイドライン作成に向けて議論を行った。NEMO欠損による難治性腸炎に抗TNF-alpha抗体が有効である事を解明した。CGDに対する遺伝子治療に関して、国立成育医療研究センター研究所との研究体制を確立した。
6. 患者QOL調査と患者家族や医療者への継続的情報提供
PIDJホームページで相談を受け付け、専門家が主治医へ診断や治療のアドバイスを行った。医師や患者向けの疾患概説書を作成し配布した。日本免疫不全研究会を開催し情報提供を行った。患者家族会PIDJつばさの会との連携を深め、相談会を実施した。患者家族会と共同でWorld PI Week(国際免疫不全症週間)に参加した。
結論
原発性免疫不全症候群患者のQOLと医療水準の向上に向け活発な活動を展開できたものと考える。

公開日・更新日

公開日
2013-05-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231019Z