特発性造血障害に関する調査研究

文献情報

文献番号
201231017A
報告書区分
総括
研究課題名
特発性造血障害に関する調査研究
課題番号
H23-難治-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
黒川 峰夫(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 小澤 敬也(自治医科大学医学部血液内科学、遺伝子治療学)
  • 金倉 譲(大阪大学大学院医学系研究科血液・腫瘍内科学)
  • 直江 知樹(名古屋大学大学院医学系研究科血液・腫瘍内科学)
  • 中尾 眞二(金沢大学医薬保健研究域医学系細胞移植学)
  • 澤田 賢一(秋田大学医学部血液・腎臓・膠原病内科学)
  • 赤司 浩一(九州大学大学院医学研究院血液内科学)
  • 宮崎 泰司(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科血液内科学)
  • 高折 晃史(京都大学大学院医学研究科血液学・ウィルス学)
  • 岡本 真一郎(慶應義塾大学医学部血液内科学、移植)
  • 中畑 龍俊(京都大学iPS細胞研究所臨床応用研究部門)
  • 太田 晶子(埼玉医科大学医学部公衆衛生学・疫学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
52,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班では再生不良性貧血、溶血性貧血、骨髄異形成症候群、骨髄線維症の4疾患を対象としている。今までの調査研究を発展させつつ、先進性や国際化の視点をとりいれて本領域の疫学・病因・病態・診断・治療・予後などを包摂した研究を推進することを研究目的としている。
研究方法
本領域でわが国を代表する専門家に、研究分担者・研究協力者として全国から参加を得て、密接な連携のもとで全国規模の共同研究を推進した。全国の主要病院、日本血液学会、日本造血細胞移植学会、日本小児血液学会など関連諸学会の協力を得た。また厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業の「不応性貧血の治癒率向上を目指した分子・免疫病態研究(研究代表者 小川誠司)」とも密接に連携した。全国の施設から参加者を得て班会議総会を年2回開催した。
結果と考察
再生不良性貧血
臨床調査個人票を利用し、データベースの入力状況やその仕組みの現状について観察・検討し、本データベースの有効活用、有用性について議論した。また、免疫抑制療法の適応を適切に判断するために、初診時再生不良性貧血患者のHLA-Aアレル欠失血球を調べ約2割に検出されることが示された。成人赤芽球癆における免疫抑制療法不応および再発は死亡リスクとなることが示された。再発・難治性慢性赤芽球癆に対する鉄キレート療法の役割が前方視的疫学研究により明らかにされることが今後期待される。

溶血性貧血
日本で特徴的にみられる発作性夜間血色素尿症(PNH)に対するエクリズマブ不応性の機序がクリズマブの結合部位の遺伝子多型であることを示した。PNH患者のGPI欠損細胞特異的な体細胞突然変異を合計9個見つけた。PNHの発症をもたらすPIGA変異クローンの拡大は造血障害免疫の回避による選択的生存および良性腫瘍様の増殖獲得に依存することを示した。また、クームス陰性AIHA患者が、クームス陽性AIHAより貧血・溶血は軽度であり、同等のステロイド反応性と生存率を示すことを明らかにした。

骨髄異形成症候群
形態診断の中央診断を伴う一元登録と追跡調査を進め、これまでに蓄積された診断確度が担保された280例以上の登録時データと、170例以上の追跡調査データを用いて、病型診断、予後予測、治療効果の解析を進めた。国際的な予後指標因子IPSS-Rの作製に本邦を代表して参加したが、この指標の国内症例での有用性の検討を進めている。またこの指標で採用された芽球比率2%を境界とする妥当性を検討した。遺伝子異常、スプライス異常、欠失挿入をもつ異常mRNAの発現など、骨髄異形成症候群の発症に関与する異常との関連を確認し、意義を検討している。特にRUNX1変異とBMI1の協調により骨髄異形成症候群/急性骨髄性白血病を発症することを示した。鉄キレート療法の実態と血球回復効果を調査し、鉄過剰症の診療に不可欠なNTBI測定やヘプシジン測定の新たなシステムを構築した。鉄芽球性貧血が先天性・後天性で発症機序が異なる事を示した。低形成性MDS、悪性リンパ腫との合併例、小児からの移行症例の追跡調査、チロシンキナーゼ阻害剤使用後染色体異常など、特殊な病態についての全国的な調査をおこない、その病態の解明を進めている。

骨髄線維症
骨髄線維症の領域では、前方視的患者登録の結果、本邦の原発性骨髄線維症では血小板5万/μL未満、芽球10%以上、17番染色体異常の3項目が予後予測に有用であることが示された。二次性骨髄線維症の臨床情報も集積し、その基礎疾患は、ET 46%、MDS 24%、PV 8%である事を示した。さらに2種類存在するMPL遺伝子変異の精度の高い検出法を開発した。

造血細胞移植
同種造血幹細胞移植後の移植前臓器障害の程度から見た予後予測に関して、我が国では臓器障害の頻度に基づいたflexible HCT-CIスコアがある程度有効であることが示唆された。また、各co-morbiditiesの重み付けの調整に加えて年齢・PSを総合的に評価することで移植成績をある程度正確に予測できることが明らかとなった。

小児科領域
ファンコニ貧血の患者由来のiPS細胞をもちいた解析や、小児骨髄異形成症候群のうち先天性素因・家族性素因を有する可能性がある72例の遺伝子解析を通じて、小児造血器疾患の病態解明を進めた。さらに、ファンコニ貧血におけるアルデヒド代謝の影響をALDH2遺伝子の解析を通じて明らかにした。また、小児再生不良性貧血におけるウサギ抗胸腺細胞グロブリンとシクロスポリンによる併用療法を検討し、ウマ抗胸腺細胞グロブリン治療後と比べ治療後期の反応例が多く見られることを示した。
結論
本研究班が担当する各分野において、着実な成果を上げることが出来た。これらの成果を実際の臨床に応用するべく、来年度以降の研究を継続する。

公開日・更新日

公開日
2013-06-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231017Z