プリオン病のサーベイランスと感染予防に関する調査研究

文献情報

文献番号
201231016A
報告書区分
総括
研究課題名
プリオン病のサーベイランスと感染予防に関する調査研究
課題番号
H22-難治-指定-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
水澤 英洋(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 正仁(金沢大学医薬保健研究域医学系 脳老化・神経病態学(神経内科学))
  • 齊藤 延人(東京大学大学院 脳神経外科学)
  • 北本 哲之(東北大学大学院医学系研究科 病態神経学分野)
  • 中村 好一(自治医科大学地域医療センター 公衆衛生学部門)
  • 金谷 泰宏(国立保健医療科学院健康危機管理部)
  • 村山 繁雄(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所 老年病理学研究チーム・神経病理学)
  • 佐藤 克也(長崎大学医歯薬学総合研究科・感染分子)
  • 原田 雅史(徳島大学ヘルスバイオサイエンス研究部 放射線科学分野)
  • 太組 一朗(日本医科大学武蔵小杉病院 脳神経外科)
  • 森若 文雄(医療法人北祐会北祐会神経内科病院 神経内科学)
  • 青木 正志(東北大学大学院医学系研究科 神経内科)
  • 西澤 正豊(新潟大学脳研究所臨床神経科学部門 神経内科学)
  • 黒岩 義之(横浜市立大学大学院医学系研究科 神経内科学)
  • 犬塚 貴(岐阜大学大学院医学系研究科 神経内科・老年医学)
  • 武田 雅俊(大阪大学大学院医学系研究科 精神医学教室)
  • 阿部 康二(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 脳神経内科学)
  • 村井 弘之(飯塚病院 神経内科)
  • 田村 智英子(木場公園クリニック)
  • 古賀 雄一(大阪大学大学院工学研究科 生命先端工学専攻 物質生命工学講座 極限生命工学領域)
  • 三條 伸夫(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 脳神経病態学(神経内科学))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
41,260,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本のプリオン病の疫学的実態を解明し、二次感染予防対策を行うと共に、診断法・滅菌法の開発に務め、患者と家族の心理ケアを行う。また、プリオン病の臨床研究を推進しその克服をめざす。
研究方法
サーベイランス委員会を組織し、各都道府県の行政担当者、難病担当専門医、主治医と協力して全国サーベイランスによる疫学研究を推進する。病型ごとに発症年齢、生存期間、家族歴、遺伝子異常、画像所見、髄液異常、手術歴などの情報を収集し、髄液・遺伝子・病理などの必要な検査を提供する。手術を受けていたインシデント事例は器具の消毒状況等まで詳細な調査を行い、二次感染等の可能性を調査し、状況に応じて個別に指導を行う。異常プリオン蛋白に有効な消毒法の開発や、開発中の抗プリオン病薬の治験に向けて協力体制を整備し、患者や家族の心理ケアも行う。
結果と考察
日本全国を10ブロックに分け、各ブロックに地区サーベイランス委員を配置し、迅速な調査を行うと共に、それぞれ遺伝子検査、髄液検査、画像検査、病理検査、脳外科を担当する専門委員を加えて年2回委員会を開催し、2013年2月の時点で83例の硬膜移植後クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)を含む2026例がプリオン病と認定され最新の疫学像が明らかにされた。我が国の遺伝性プリオン病ではコドンV180I変異による遺伝性CJDが48.2%と半数近くを占めていることが明らかとなった(Plos One 2013)。変異型CJDは2004年度の1例のみである。医療を介する感染の予防については年2回の定期的なインシデント委員会の開催を行い、新たに2件の事例に対する対策を検討した(フォロー事例は合計13)。基礎研究では、動物実験で超高熱耐性プロテアーゼTKサチライシン処理によりプリン蛋白の感染性が低下することを報告し、VV2型プリオン蛋白の滅菌方法の研究を開始した。現在開発中の抗プリオン病薬のファースト・イン・ヒューマンの治験開始に向けてコンソーシアム設立に協力した。研究成果は、すぐさまプリオン病のサーベイランスと対策に関する全国担当者会議にて報告し、全国にその周知徹底を計った。

結論
プリオン病の高感度の診断法が提供され、サーベイランス体制およびインシデント体制が整備された。治験の開始に向けて臨床研究体制を整備し、より効果的な滅菌法の開発、二次感染対策、患者や家族のケアを引き続き推進する。

公開日・更新日

公開日
2013-06-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201231016B
報告書区分
総合
研究課題名
プリオン病のサーベイランスと感染予防に関する調査研究
課題番号
H22-難治-指定-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
水澤 英洋(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 正仁 (金沢大学医薬保健研究域医学系 脳老化・神経病態学(神経内科学))
  • 齊藤 延人(東京大学大学院脳 神経外科学)
  • 北本 哲之(東北大学大学院医学系研究科 病態神経学分野)
  • 中村 好一(自治医科大学地域医療センター 公衆衛生学部門)
  • 金谷 泰宏(国立保健医療科学院健康危機管理部)
  • 村山 繁雄(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所老年病理学研究チーム・神経病理学)
  • 佐藤 克也(長崎大学医歯薬学総合研究科・感染分子)
  • 原田 雅史(徳島大学ヘルスバイオサイエンス研究部 放射線科学分野)
  • 太組 一朗(日本医科大学武蔵小杉病院 脳神経外科)
  • 森若 文雄(医療法人北祐会北祐会神経内科病院 神経内科学)
  • 青木 正志(東北大学大学院医学系研究科 神経内科)
  • 西澤 正豊(新潟大学脳研究所臨床神経科学部門 神経内科学)
  • 黒岩 義之(横浜市立大学大学院医学系研究科 神経内科学)
  • 犬塚 貴(岐阜大学大学院医学系研究科 神経内科・老年医学)
  • 武田 雅俊(大阪大学大学院医学系研究科 精神医学教室)
  • 阿部 康二(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 脳神経内科学)
  • 村井 弘之(飯塚病院 神経内科)
  • 田村 智英子(木場公園クリニック)
  • 古賀 雄一(大阪大学大学院工学研究科生命先端工学専攻物質生命工学講座極限生命工学領域)
  • 三條 伸夫(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科脳神経病態学(神経内科学))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本のプリオン病の疫学的実態を解明し、二次感染予防対策を行うと共に、診断法・滅菌法の開発に務め、患者と家族の心理ケアを行う。また、プリオン病の臨床研究を推進しその克服をめざす。
研究方法
サーベイランス委員会を組織し、各都道府県の行政担当者、難病担当専門医、主治医と協力して全国サーベイランスによる疫学研究を推進する。病型ごとに発症年齢、生存期間、家族歴、遺伝子異常、画像所見、髄液異常、手術歴などの情報を収集し、髄液・遺伝子・病理などの必要な検査を提供する。手術を受けている症例は器具の消毒状況等まで詳細な調査を行い、二次感染等の可能性を調査し、状況に応じて個別に指導を行う。異常プリオン蛋白に有効な消毒法の開発や、開発中の抗プリオン病薬の治験に向けて協力体制を整備し、患者や家族の心理ケアも行う。
結果と考察
日本全国を10ブロックに分け、各ブロックに地区サーベイランス委員を配置し、迅速な調査を行うと共に、それぞれ遺伝子検査、髄液検査、画像検査、病理検査、脳外科を担当する専門委員を加えて年2回委員会を開催し、2013年2月の時点で83例の硬膜移植後クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)や本邦特有と言えるV180I遺伝子変異が本邦に多いことが判明した遺伝性プリオン病を含む2026例がプリオン病と認定され最新の疫学像が明らかにされた。全国から髄液検査、遺伝子検索の依頼をうけ年間約200検体を検査した。変異型CJDは2004年度の1例のみである。医療を介する感染の予防については年2回の定期的なインシデント委員会の開催を行い、これまでにフォローしている事例は合計で13となった。基礎研究では、動物実験で超高熱耐性プロテアーゼTKサチライシンを用いた新たな滅菌方法の開発を続け、VV2型プリオン蛋白の滅菌方法の研究を開始した。現在開発中の抗プリオン病薬のファースト・イン・ヒューマンの治験開始に向けてコンソーシアム設立に協力している。これらの知見は、すぐさまプリオン病のサーベイランスと対策に関する全国担当者会議にて報告され、全国にその周知徹底を計った。
結論
この3年間で、全国にプリオン病の高精度の診断法が提供されサーベイランスおよびインシデント体制が整備された。効果的な滅菌法の開発、二次感染対策、患者や家族のケアも進み、治験の開始に向けて臨床研究体制が構築された。

公開日・更新日

公開日
2013-06-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201231016C

成果

専門的・学術的観点からの成果
全国サーベイランスを1999年4月1日から現在まで継続し、これまでに3664例を調査した。1894人をプリオン病と認定し詳細な検討を行い、人口100万人対の罹患率は1.01人と欧米の罹患率と同等で、平均発症年齢が67.8歳であることを明らかにした。本邦では硬膜移植歴を有するCJD患者が多発し、遺伝性プリオン病では我が国特有の変異を有する例が多いという特徴がある。オールジャパン体制の治療法開発のための日本プリオン病コンソーシアム(JACOP)設立への協力をしている。
臨床的観点からの成果
MRI画像の標準化と読影実験を行うことによる診断率の向上とMRI読影サービス、髄液中の14-3-3蛋白測定と異常プリオン蛋白(real-time QUIC法)検出、遺伝子解析、病理解剖脳の解析などの各検査による診断支援を全国規模で無料でおこない、胃瘻増設用の胃カメラの無料貸し出しを行った。さらに、医療行為を介した二次感染予防対策として、病院調査・指導、新規滅菌法の開発などを行った。
ガイドライン等の開発
プリオン病剖検促進のため、パンフレット作成、病理学会・神経病理学会でのシンポジウム、情報宣伝活動などを行った。更に、「改訂版プリオン病感染予防ガイドライン(2008年版)」の啓発に務め、ホームページを活用した啓発、事務局への個人的な問い合わせに対する対応など実際の感染予防活動により国民の健康と安全に大きく貢献し、国際的にもとくに変異型CJDの診断については極めて大きく寄与することができた。
その他行政的観点からの成果
本研究班を中心に2011年に設立されたアジア大洋州プリオン病研究学会(APSPR)とその学術集会であるアジア大洋州プリオンシンポジウム (APPS2012)を後援し、国際学会でありPRION2012への参加にも協力して、国際化を進めた。データ管理において、電子登録システム上の診断アルゴリズムの変更をおこない、国の調査システムの精度向上、より正確な疾病把握が可能となった。
その他のインパクト
広く国民に情報が伝わるように難病情報センターや研究班ウエブサイトなどを利用して、各種ガイドラインをホームページ上で公開し、例年公開シンポジウムと全国担当者会議を開催している。

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
51件
その他論文(和文)
57件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
35件
学会発表(国際学会等)
15件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
1件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

特許の名称
14-3-3蛋白γアイソフォーム特異的ELISA
詳細情報
分類:
特許番号: 特開2013-101047
発明者名: 佐藤 克也
出願年月日: 20111108

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Deguchi K, Takamiya M, Deguchi S,他
Spreading brain lesions in a familial Creutzfeldt-Jakob disease with V180I mutation over 4years.
BMC Neurololgy , 12 , 144-  (2012)
原著論文2
Ikeda Y, Ohta Y, Kobayashi H, 他
Clinical features of SCA36: a novel spinocerebellar ataxia with motor neuron involvement (Asidan).
Neurology , 79 (4) , 333-341  (2012)
原著論文3
Kurata T, Kawai H, Miyazaki K, 他
Statins have therapeutic potential for the treatment of Alzheimer's disease, likely via protection of the neurovascular unit in the AD brain.
Journal of the Neurological Sciences , 322 , 59-63  (2012)
原著論文4
Sato K, Morimoto N, Matsuura T, 他
Impaired response of hypoxic sensor protein HIF-1α and its downstream proteins in the spinal motor neurons of ALS model mice.
Brain Research , 1473 , 55-62  (2010)
原著論文5
Nozaki I, Hamaguchi T, Sanjo N, 他
Prospective 10-year surveillance of human prion diseases in Japan
Brain , 133 , 3043-3057  (2011)
原著論文6
Atarashi R, Satoh K, Sano K,他
Ultrasensitive human prion detection in cerebrospinal fluids using real-time quaking-induced conversion
Nat Med , 17 , 175-178  (2011)
原著論文7
Nagoshi K, Sadakane Y, Nakamura Y,他
Duration of prion diseases in Japan is longer than that in other countires.
J Epidemiol , 21 , 255-262  (2011)
原著論文8
Noguchi-Shinohara M, Hamaguchi T,他
Serum tau protein as a marker for the diagnosis of Creutzfeldt-Jakob disease.
J Neurol , 258 , 1464-1468  (2011)
原著論文9
Fujita K, Harada M, Sasaki M,他
Multicentre, multiobserver study of diffusion-weighted and fluid-attenuated inversion recovery MRI for the diagnosis of sporadic Creutzfeldt-Jakob disease: a reliability and agreement study
BMJ Open , 2 , e000649-  (2012)
原著論文10
Schmidt C, Haïk S, Satoh K, 他
Rapidly progressive Alzheimer's disease: a multicenter update.
J Alzherimers Dis. , 30 (4) , 751-756  (2012)
原著論文11
Fujita K, Harada M, Sasaki M, 他
Multicentre multiobserver study of diffusion-weighted and fluid-attenuated inversion recovery MRI for the diagnosis of sporadic Creutzfeldt-Jakob disease: a reliability and agreement study.
BMJ Open. , 30 (2(1)) , e000649-  (2012)
原著論文12
Matsui Y, Satoh K, Miyazaki T, 他
High sensitivity of an ELISA kit for detection of the gamma-isoform of 14-3-3 proteins: usefulness in laboratory diagnosis of human prion disease.
BMC Neurol. , 4 (11) , 120-  (2011)
原著論文13
Atarashi R, Satoh K, Sano K, 他
Ultrasensitive human prion detection in cerebrospinal fluid by real-time quaking-induced conversion.
Nat Med. , 17 ((2)) , 175-178  (2011)
原著論文14
Nozaki I, Hamaguchi T, Sakai K, 他
Prospective 10-years surveillance for human prion diseases in Japan.
Brain , 133 ((Pt 10)) , 3043-3057  (2010)
原著論文15
Kimura E, Kobayashi S, Kanatani Y, 他
Developing an Electronic Health Record for Intractable Diseases in Japan.
Stud Health Technol Inform. , 169 , 255-259  (2011)
原著論文16
Maya Higuma, Nobuo Sanjo, Katsuya Satoh, 他
Relationships between Clinicopathological Features and Cerebrospinal Fluid Biomarkers in Japanese Patients with Genetic Prion Diseases
PLoS One , 8 , e60003-  (2013)
原著論文17
Sano K, Satoh K, Atarashi R, 他
Early Detection of Abnormal Prion Protein in Genetic Human Prion Diseases Now Possible Using Real-Time QUIC Assay
PLoS One , 8 , e54915-  (2013)
原著論文18
Takumi Hori, Nobuo Sanjo, Makoto Tomita, 他
Visual Reproduction on the Wechsler Memory Scale-Revised as a predictor of Alzheimer’s disease in Japanese patients with mild cognitive impairments
Dementia and Geriatric Cognitive Disorders , 35 , 165-176  (2013)
原著論文19
Kobayashi S, Saito Y, Maki T, 他
Cortical propagation of creutzfeldt- Jakob disease with codon 180 mutation.
Clin Neurol Neurosurg , 112 , 520-523  (2010)
原著論文20
Terada T, Tsuboi Y, Obi T, 他
Less protease-resistant PrP in a patient with sporadic CJD treated with intraventricular pentosan polysulphate.
Acta Neurol Scand , 121 , 127-130  (2010)

公開日・更新日

公開日
2017-06-12
更新日
-

収支報告書

文献番号
201231016Z