文献情報
文献番号
201231012A
報告書区分
総括
研究課題名
脊髄性筋萎縮症の臨床実態の分析、遺伝子解析、治療法開発の研究
課題番号
H22-難治-一般-012
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
斎藤 加代子(東京女子医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 中野 今治(自治医科大学内科学講座神経内科学部門)
- 小牧 宏文(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター病院小児神経科)
- 齊藤 利雄(独立行政法人国立病院機構刀根山病院神経内科)
- 西尾 久英(神戸大学大学院医学研究科地域社会医学・健康科学講座疫学分野)
- 中島 孝(独立行政法人国立病院機構新潟病院)
- 野本 明男(公益財団法人微生物化学研究会、微生物化学研究所)
- 菅野 仁(東京女子医科大学附属遺伝子医療センター)
- 山本 俊至(東京女子医科大学統合医科学研究所)
- 伊藤 万由里(東京女子医科大学附属遺伝子医療センター)
- 近藤 恵里(東京女子医科大学附属遺伝子医療センター)
- 松尾 真理(東京女子医科大学附属遺伝子医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
19,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では1)脊髄性筋萎縮症(SMA)の臨床病態解明、2)原因遺伝子解析、3)治療効果評価法の確立と治療法開発が目的である。平成24年度は、SMAの根本治療の臨床研究・医師主導治験の実施に向けての基盤整備として、患者登録システムを開始した。またバルプロ酸治療パイロットスタディーも実施した。
研究方法
1)患者数調査と患者登録:全国の大学病院、国公立病院・施設、有床地域拠点病院の小児科・内科(神経内科)・遺伝子診療科を対象に郵送アンケートにて患者数調査を行う。
2)臨床病態の解明:Ⅳ型では臨床解析、遺伝子解析、剖検を実施した。I、III型患者と健常人由来の線維芽細胞について、細胞骨格タンパク質の性状と機能の差異を検討した。
3)SMAの原因遺伝子解析: Multiplex ligation-dependent probe amplification(MLPA)法による遺伝子解析、コピー数解析を実施する。
4)SMAのin vitro治療開発研究:皮膚線維芽細胞、絨毛細胞、EB transform B細胞を作製し、SMN mRNA発現量、SMN蛋白量を対照と比較し、バルプロ酸、フェニル酪酸の投与を行う。培養線維芽細胞を用いて、サルブタモール投与を施行する。
5)SMAのiPS細胞作成:線維芽細胞にて、エピソーマルベクターを使った遺伝子導入法による患者由来iPS細胞樹立を実施する。
6)SMN1遺伝子導入ポリオウイルスベクターの作製:患者由来培養細胞に感染させSMN1の導入を証明する。
7)運動機能評価の検証と臨床評価基準の策定:日本人のSMAにおいて、Modified Hammersmith Functional Motor Scale (MHFMS)など、運動機能評価スケールを検証し臨床評価基準を策定する。ロボットスーツHALの臨床治験における評価基準を検討する。
8)VPAによる治療パイロットスタディー:患者を対象としたバルプロ酸投与を実施する。
2)臨床病態の解明:Ⅳ型では臨床解析、遺伝子解析、剖検を実施した。I、III型患者と健常人由来の線維芽細胞について、細胞骨格タンパク質の性状と機能の差異を検討した。
3)SMAの原因遺伝子解析: Multiplex ligation-dependent probe amplification(MLPA)法による遺伝子解析、コピー数解析を実施する。
4)SMAのin vitro治療開発研究:皮膚線維芽細胞、絨毛細胞、EB transform B細胞を作製し、SMN mRNA発現量、SMN蛋白量を対照と比較し、バルプロ酸、フェニル酪酸の投与を行う。培養線維芽細胞を用いて、サルブタモール投与を施行する。
5)SMAのiPS細胞作成:線維芽細胞にて、エピソーマルベクターを使った遺伝子導入法による患者由来iPS細胞樹立を実施する。
6)SMN1遺伝子導入ポリオウイルスベクターの作製:患者由来培養細胞に感染させSMN1の導入を証明する。
7)運動機能評価の検証と臨床評価基準の策定:日本人のSMAにおいて、Modified Hammersmith Functional Motor Scale (MHFMS)など、運動機能評価スケールを検証し臨床評価基準を策定する。ロボットスーツHALの臨床治験における評価基準を検討する。
8)VPAによる治療パイロットスタディー:患者を対象としたバルプロ酸投与を実施する。
結果と考察
1)患者数調査と患者登録:全国863施設に郵送し、349施設から回答を得た(回収率40.4%)。患者数は431人、臨床型別にはI型123人(29%)、II型183人(42%)、III型80人(19%)、IV型45人(10%)であった。都道府県別患者数は、東京98人(23%)、大阪34人(8%)、北海道24人(6%)であった。平成24年10月から本研究班、「SMA家族の会」Webページを介して患者登録システムを開始した。平成25年3月末現在76件である。
2)臨床病態の解明:中野らはIV型の症例にALSや遺伝性軸索型運動ニューロパチーの症例が含まれる可能性を証明しIV型の病因は複数であることを示唆した。西尾らはSMA I、III型患者と健常人由来の線維芽細胞について、SMA患者の線維芽細胞では、1)F-アクチンの配向と極性の異常、2)細胞接着の上昇、3)αチュブリン脱アセチル化反応の下方制御を証明した。
3)SMAの原因遺伝子解析:小牧らは患者17名にMLPA法を行いSMN1およびSMN2のコピー数と臨床との相関を述べた。斎藤加らは、2例でSMN遺伝子の片アレルの欠失と新規点変異を同定した。
4)SMAのin vitro治療開発研究:
斎藤加らは、皮膚線維芽細胞、絨毛細胞において、SMN蛋白量が、EB transform B細胞においてSMN mRNA発現量が対照より低値であることを示した。絨毛細胞ではVPAまたはフェニル酪酸によりSMNタンパク質の発現量が投与前より増加した。
5)SMAにおけるiPS細胞の作成:エピソーマルベクターによる遺伝子導入が効率良く実施できて、患者由来iPS細胞を樹立することができた。
6)SMN1遺伝子導入ポリオウイルスベクターの作製:野本らは、SMN1 mRNA搭載ポリオウイルスベクターを開発し、in vitroで患者細胞へのSMN1の導入に成功した。
7)運動機能評価の検証と臨床評価基準の策定: MHFMSにより検証し臨床評価基準を策定した。中島らは、ロボットスーツHALの臨床治験における評価基準を検討した。
8)齊藤利らはSMA患者7例を対象にバルプロ酸投与のパイロットスタディーを実施した。SMN転写、スプライシングへの効果を認めた例(2歳)を報告した。年少例で効果がある可能性がある。斎藤加は、I型症例(1歳3か月)においてバルプロ酸(10mg/kg→20mg/kg)投与により、臨床効果を示し気管切開を免れ、いったん減少した体重が増加に転じた症例を報告した。その後、4歳5か月時にても気管切開をせずに経過した。
2)臨床病態の解明:中野らはIV型の症例にALSや遺伝性軸索型運動ニューロパチーの症例が含まれる可能性を証明しIV型の病因は複数であることを示唆した。西尾らはSMA I、III型患者と健常人由来の線維芽細胞について、SMA患者の線維芽細胞では、1)F-アクチンの配向と極性の異常、2)細胞接着の上昇、3)αチュブリン脱アセチル化反応の下方制御を証明した。
3)SMAの原因遺伝子解析:小牧らは患者17名にMLPA法を行いSMN1およびSMN2のコピー数と臨床との相関を述べた。斎藤加らは、2例でSMN遺伝子の片アレルの欠失と新規点変異を同定した。
4)SMAのin vitro治療開発研究:
斎藤加らは、皮膚線維芽細胞、絨毛細胞において、SMN蛋白量が、EB transform B細胞においてSMN mRNA発現量が対照より低値であることを示した。絨毛細胞ではVPAまたはフェニル酪酸によりSMNタンパク質の発現量が投与前より増加した。
5)SMAにおけるiPS細胞の作成:エピソーマルベクターによる遺伝子導入が効率良く実施できて、患者由来iPS細胞を樹立することができた。
6)SMN1遺伝子導入ポリオウイルスベクターの作製:野本らは、SMN1 mRNA搭載ポリオウイルスベクターを開発し、in vitroで患者細胞へのSMN1の導入に成功した。
7)運動機能評価の検証と臨床評価基準の策定: MHFMSにより検証し臨床評価基準を策定した。中島らは、ロボットスーツHALの臨床治験における評価基準を検討した。
8)齊藤利らはSMA患者7例を対象にバルプロ酸投与のパイロットスタディーを実施した。SMN転写、スプライシングへの効果を認めた例(2歳)を報告した。年少例で効果がある可能性がある。斎藤加は、I型症例(1歳3か月)においてバルプロ酸(10mg/kg→20mg/kg)投与により、臨床効果を示し気管切開を免れ、いったん減少した体重が増加に転じた症例を報告した。その後、4歳5か月時にても気管切開をせずに経過した。
結論
目的・目標を達成し、新たに続くSMA根本治療のための医師主導治験や企業との協力によるグローバル治験の端緒・可能性を見出すことができた。
公開日・更新日
公開日
2013-05-30
更新日
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