文献情報
文献番号
201231011A
報告書区分
総括
研究課題名
多発性硬化症に対する新規分子標的治療法の開発
課題番号
H22-難治-一般-011
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
山下 俊英(大阪大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 桑原 聡(千葉大学 大学院医学研究科院)
- 森 雅裕(千葉大学 大学院医学研究科院)
- 望月 秀樹(大阪大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
26,924,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の最終目標は、多発性硬化症(MS)の発症および病態形成を制御する分子標的治療薬を開発し、臨床応用を実現することである。MSは複数の神経症候が再発と寛解を繰り返し、比較的強い障害が残る例が少なくなく、根本的治療法が確立していないのが現状である。我々は、抗RGM抗体治療薬が、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の発症を抑制し、さらに修復過程を促進することを見いだした。したがってRGM阻害剤は多発性硬化症の各病期に対する症状緩和に寄与するのみならず、根本的治療薬として有望である。我々は、脊髄損傷治療薬としてヒト型抗RGMモノクローナル抗体を製薬企業との共同開発で進めている。本研究では、RGMモノクローナル抗体のMSの急性増悪期および再発寛解型に対する薬剤としてのfeasibility studyを実施している。複数の実験的自己免疫性脳脊髄炎モデルを用いて、各病期における薬効・薬理試験を行い、薬剤治療の最適条件を決定することが本研究の到達目標である。
研究方法
具体的な実施項目は以下のとおりである。
1. RGMによるT cellの活性化の分子メカニズムの解析を行った。
2. マウスのEAEモデルを作成し、RGM中和抗体の投与による、その後の症状の改善の有無を評価した。さらに抗体の作用のメカニズムをin vivoで明らかにした。
3. 多発性硬化症のPBMCを用いて、RGM中和抗体の作用について検証した。さらに多発性硬化症の脳・脊髄の組織を用いて、蛋白発現解析を行った。
4. T cellにおけるRGM中和抗体の作用の解析を行った。
1. RGMによるT cellの活性化の分子メカニズムの解析を行った。
2. マウスのEAEモデルを作成し、RGM中和抗体の投与による、その後の症状の改善の有無を評価した。さらに抗体の作用のメカニズムをin vivoで明らかにした。
3. 多発性硬化症のPBMCを用いて、RGM中和抗体の作用について検証した。さらに多発性硬化症の脳・脊髄の組織を用いて、蛋白発現解析を行った。
4. T cellにおけるRGM中和抗体の作用の解析を行った。
結果と考察
これまでの研究によって、自己免疫性脳脊髄炎におけるRGMの機能を明らかにした(Nature Med., 2011)。また、RGM中和抗体がEAEの発症を抑制すること、また症状の改善を促進することを明らかにした。さらに、抗体のin vivoでの効果のメカニズムを明らかにした。また再発時および寛解期のMS患者(21症例)のPBMCを用いて、PMAとionomycinによりT細胞を活性化し、RGM抗体を作用させると、T細胞の増殖および炎症性サイトカイン産生が抑制された。またRGMが神経細胞の突起の伸展および細胞死を制御していることを見いだした。以上より、RGM中和抗体が多発性硬化症の各病期に対して有効であることを示し、薬剤の作用機序を解明した。
結論
特に臨床研究による結果は、MSに対する有効性を強く示唆する結果であり、今後の臨床応用を加速させるものである。本研究終了後、速やかに前臨床試験へ移行し、問題のないことを確認したうえで臨床治験に進む。本薬剤は多発性硬化症の根本的治療薬となりうる点で医学的に貢献するのみならず、特に「要介護状態」からの回復が可能になるという観点で、医学経済面での大きな貢献も望める。
公開日・更新日
公開日
2013-05-08
更新日
-