文献情報
文献番号
201231001A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性炎症性腸管障害に関する調査研究
課題番号
H22-難治-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 守(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
- 坪内 博仁(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
- 今井 浩三(東京大学医科学研究所附属病院)
- 上野 文昭(大船中央病院)
- 藤山 佳秀(滋賀医科大学)
- 廣田 良夫(大阪市立大学 大学院医学研究科)
- 松井 敏幸(福岡大学筑紫病院)
- 三浦 総一郎(防衛医科大学校)
- 日比 紀文(慶應義塾大学医学部)
- 岡崎 和一(関西医科大学)
- 杉田 昭(横浜市立市民病院)
- 高後 裕(国立大学法人旭川医科大学)
- 鈴木 康夫(東邦大学医療センター佐倉病院)
- 千葉 勉(京都大学 大学院医学研究科)
- 味岡 洋一(新潟大学 大学院医歯学総合研究科)
- 福島 浩平(東北大学 大学院医学系研究科)
- 渡邉 聡明(東京大学 大学院医学系研究科)
- 松本 譽之(兵庫医科大学(研究分担者 前任))
- 中村 志郎(兵庫医科大学(研究分担者 後任))
- 武林 亨(慶應義塾大学医学部)
- 松本 主之(九州大学大学院)
- 竹田 潔(大阪大学医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
65,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我が国における炎症性腸疾患診療体系の質的向上と均一化を介し患者QOLの向上を目指すこと、また総国民医療費の抑制を通じ医療財政へ貢献することを目指し、1)疫学解析の最新化により疾患構造変化を追究し、発症に関わる環境因子を明らかにすること、2) 多施設間で共有する情報ネットワークを利用し、質の高い臨床研究を推進すること、3)バイオマーカー探索と再生医療の二つをキーワードとした目的志向型基礎研究を展開すること、4)国民、患者、一般医家への啓発を促進し、治療レベルの向上と画一化を図ることを目的とした。
研究方法
総括的疫学解析プロジェクトでは、1)日本における基礎疫学指標の最新推定値を求め、また2) 有病率・罹患率の上昇に関わる新しいリスク因子を多施設共同・症例対照研究で解析した。臨床プロジェクトでは、内科的治療に関する臨床研究を推進した他、カプセル内視鏡検査や内視鏡的バルーン拡張術など新しいデバイスの利用に関する研究をすすめた。外科治療に関する調査研究をおこなったほか、診断基準および重症度基準の改変、診療ガイドライン作成・改訂、治療指針の標準化をすすめた。基礎研究プロジェクトでは、1)診断、重症度判定、発癌、感染症同定のためのバイオマーカーの探索プロジェクトをすすめ、2) 腸上皮幹細胞あるいは骨髄間葉系幹細胞を利用する再生医療技術の基礎検討をすすめた。成果報告・啓発・専門医育成プロジェクトでは、1)国民・患者・一般臨床医への啓発・広報活動を積極的にすすめ、また2) 専門医育成プログラムの策定準備をおこなった。
結果と考察
平成24年度も目標に沿った成果をあげることができた。総括的疫学解析によって、本邦のIBDに関する疫学解析の最新値が共有できるようになった。臨床個人調査票の改訂とこれを利用した情報の電子化により、今後は一層データの信頼度が高まるものと考える。臨床プロジェクトは、我が国における診療体系の質的向上を目指すコアプロジェクトは計画通りにすすみ、内容を最新化しながらの改訂作業を継続した。複数の多施設臨床研究が着実に進行し、一部は論文発表も済んだ。さらに新しい臨床研究の実施可能性と必要性に関する議論の結果、本邦発の研究成果を海外に発信する基盤が十分整った。基礎研究プロジェクトでは、Nature Medicine誌などの一流誌に研究成果が掲載された。成果公表プロジェクトでは、市民公開講座や医師に対する啓発活動への評価が高く、本班で作成した刊行物も好評であるなど、本調査研究班の活動が社会的に広く認知されることとなった。
平成25年度においては、以下の未達成課題についての研究を重点的にすすめる予定である。すなわち、①計10年間にわたる疫学データ解析の結果として、統計学的有意差が明らかな高いエビデンスの論文公表に至る。②近年の患者数増加のリスク因子解析を大規模多施設研究として質の高い論文として公表する。③「炎症性腸疾患患者における内視鏡による癌サーベイランス法確立」、④「クローン病術後のインフリキシマブ併用療法の効果についての多施設共同研究」、⑤「クローン病術後の生物製剤の再燃予防効果」などの多施設共同研究においても、学術的にも社会的にもインパクトの大きな研究成果として公表までに至る。基礎研究では、⑥2012年に世界で初めてとなる報告した「培養大腸上皮細胞を用いた傷害上皮の治療技術」のヒト臨床への応用を図る研究を推進し、これらの特許取得、論文公表をおこなう。⑦また、疾患特異的バイオマーカー探索では、実際の症例の診断・病型分類・治療効果の予測に有効で、簡便に利用できるバイオマーカー分子の臨床応用を図る。さらに、⑧市民向け成果報告会や、⑨専門医師育成プログラムをすすめ、すでに高い評価を得ている研究成果報告会をほぼ全国で開催することが可能となるのみならず、⑩炎症性腸疾患診療専門医師育成プログラムに基づいて、医師向け講習会・成果報告会の開催が未だ開催していない地域で開催できる。
平成25年度においては、以下の未達成課題についての研究を重点的にすすめる予定である。すなわち、①計10年間にわたる疫学データ解析の結果として、統計学的有意差が明らかな高いエビデンスの論文公表に至る。②近年の患者数増加のリスク因子解析を大規模多施設研究として質の高い論文として公表する。③「炎症性腸疾患患者における内視鏡による癌サーベイランス法確立」、④「クローン病術後のインフリキシマブ併用療法の効果についての多施設共同研究」、⑤「クローン病術後の生物製剤の再燃予防効果」などの多施設共同研究においても、学術的にも社会的にもインパクトの大きな研究成果として公表までに至る。基礎研究では、⑥2012年に世界で初めてとなる報告した「培養大腸上皮細胞を用いた傷害上皮の治療技術」のヒト臨床への応用を図る研究を推進し、これらの特許取得、論文公表をおこなう。⑦また、疾患特異的バイオマーカー探索では、実際の症例の診断・病型分類・治療効果の予測に有効で、簡便に利用できるバイオマーカー分子の臨床応用を図る。さらに、⑧市民向け成果報告会や、⑨専門医師育成プログラムをすすめ、すでに高い評価を得ている研究成果報告会をほぼ全国で開催することが可能となるのみならず、⑩炎症性腸疾患診療専門医師育成プログラムに基づいて、医師向け講習会・成果報告会の開催が未だ開催していない地域で開催できる。
結論
質の高い複数のプロジェクトを、多角的に、研究者の有機的連携をもってすすめる本調査研究班の活動により、我が国における炎症性腸疾患診療体系の質的向上と均一化を介し患者QOLの向上が期待されるのみならず、不十分・不適切な医療による病態遷延や医療費高騰を是正し、総国民医療費の抑制を通じ医療財政への貢献も期待されると考えた。
公開日・更新日
公開日
2013-05-30
更新日
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