生命予後に関わる重篤な食物アレルギーの実態調査・新規治療法の開発および治療指針の策定

文献情報

文献番号
201229039A
報告書区分
総括
研究課題名
生命予後に関わる重篤な食物アレルギーの実態調査・新規治療法の開発および治療指針の策定
課題番号
H24-難治等(免)-一般-005
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
森田 栄伸(国立大学法人島根大学 医学部皮膚科学)
研究分担者(所属機関)
  • 片山 一朗(大阪大学大学院医学系研究科 皮膚科学)
  • 松永 佳世子(藤田保健衛生大学 医学部 皮膚科学)
  • 秀 道広(広島大学大学院医歯薬保健学研究院皮膚科学)
  • 岸川 禮子(独立行政法人国立病院機構福岡病院アレルギー科)
  • 千貫 祐子(島根大学 医学部 皮膚科学)
  • 横関 博雄(東京医科歯科大学医学部 皮膚科学)
  • 相原 道子(横浜市立大学医学部 皮膚科学)
  • 藤枝 重治(福井大学医学部 耳鼻咽喉科・頭頸部外科)
  • 塩飽 邦憲(島根大学)
  • 福冨 友馬(独立行政法人国立病院機構相模原病院臨床研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
11,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、加水分解コムギアレルギーの実態調査および診断基準・治療指針を策定することを目的とした。併せて成人の重篤な食物アレルギーである食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)および口腔アレルギー症候群(OAS)の患者実態調査に基づき、疾患概念や診断基準を確立し、治療指針を確立することを目的とした。
研究方法
1.加水分解小麦アレルギーの実態把握と対策
本課題は日本アレルギー学会「化粧品中のタンパク加水分解物の安全性に関する特別委員会」および難治性疾患等克服研究事業(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業)福富班と密接に連携し、日本全国から症例を集積した。
2.FDEIAの実態調査
分担研究者および研究協力者の所属施設を過去3年間に受診したFDEIA症例を集積し、その実態を把握するとともに、診断基準の作成に有用な情報を解析した。島根大学が実施している島根県下の成人病コホート事業に参加し、小麦によるFDEIAの有病率を算出した。
3.OASの実態調査
FDEIAの実態調査と同様に、OAS症例を集積し、その実態を把握するとともに、診断基準の作成に有用な情報を解析した。福井県下の耳鼻科医療施設を受診した患者にアンケート調査を行い、OASの有病率を算出した。
4.抗原解析による新規あるいは精度の高い診断法の開発
成人の食物アレルギーの診断における好塩基球活性化試験やimmunoblot法、ELISA法、IgEアレルゲンパネルによる血清中食物抗原特異的IgEの検出の診断における有用性を検討した。納豆アレルギーの抗原解析を行った。
結果と考察
国内の加水分解コムギアレルギー患者数は、未登録や治癒した症例を考慮すると3000例程度と推定された。加水分解コムギ含有石鹸の販売量から単純計算すると発症率は1500人に1人の割合(0.06%)と推定された。これは、塩飽らの島根県下におけるコホート調査による小麦FDEIAの推定有病率 (0.2%) およびこれまで学童を対象としたFDEIAの有病率 (0.008%)よりも高い有病率である。このことは、成人における小麦抗原による感作は、従来認識されていた有病率より1桁以上高い有病率である可能性を示唆するものである。加水分解コムギ含有石鹸による小麦アレルギーの患者については、予後の調査が必要であると考えられる。一方、藤枝らによる福井県でのOASの調査では、その有病率は10%とさらに高いものであった。しかし、今回の調査は問診に基づいたもので、アレルギー機序によることが確認されていないため今後の確認が必要である。
FDEIAとOASの診断基準の作成のため、約1000名の症例集積を行った。FDEIAの原因食物に関しては、加水分解コムギ含有石鹸による小麦アレルギーが全体の53%を占め、加水分解コムギ含有石鹸による小麦アレルギーのアウトブレイクを裏付ける結果であった。千貫らの加水分解コムギの抗原性の解析の結果、分子量の大きい加水分解コムギ成分が感作を起したことが示唆された。通常型のFDEIAの原因食物の内訳は、小麦が80%以上を占め、従来の報告よりさらに高い割合であった。次いで甲殻類、野菜が多いと報告されてきたが、今回の調査においても同様の傾向であった。FDEIAの診断における抗原特異的IgEの感度は、小麦が原因となる症例においてω-5グリアジン特異的IgE検査の有用性が確認されたが、従来の報告よりは低いものであった。プリックテストは、実施例は少ないもののω-5グリアジン、グルテンの感度が90%以上であり、高い有用度と考えられる。一方、甲殻類に関してはエビ、カニ抗原特異的IgEの感度は40~60%に留まっていた。これらのことから、小麦および甲殻類の抗原解析とそれに基づく抗原特異的IgE検査の改良が課題である。今回の検討では運動誘発の既往のない即時型食物アレルギーの症例も併せて集積し、原因食物はFDEIAと同様に小麦、エビの症例が多かった。FDEIAの診断については、運動誘発の既往のない即時型食物アレルギーとの異同が今後の検討課題である。
 OASの原因食物は、果物、野菜が多いことが確認された。今後は、交差抗原の同定が可能な検査法などの検討が必要と考えられた。
納豆アレルギーの抗原解析の結果、主要原因抗原がポリガンマグルタミン酸であることが明らかとなった。診断法に関する検討の結果は、抗原特異的IgEのパネル検査の有用性、患者末梢血好塩基球活性化試験の有用性が示され、今後の臨床への応用が課題と思われる。
結論
加水分解コムギ含有石鹸による小麦アレルギーのアウトブレイクの実態および従来型のFDEIAおよびOASの原因食物の実態を明らかにすることができた。原因食物の抗原解析とそれに基づく同定法および治療指針の策定が今後の課題である。

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201229039Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,000,000円
(2)補助金確定額
15,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 9,225,736円
人件費・謝金 84,600円
旅費 1,484,503円
その他 744,161円
間接経費 3,461,000円
合計 15,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
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