多関節障害重症RA患者に対する総合的関節機能再建治療法の検討と治療ガイドライン確立

文献情報

文献番号
201229036A
報告書区分
総括
研究課題名
多関節障害重症RA患者に対する総合的関節機能再建治療法の検討と治療ガイドライン確立
課題番号
H24-難治等(免)-一般-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
石黒 直樹(名古屋大学大学院医学系研究科・機能構築医学専攻 運動・形態外科学講座 整形外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 石川肇(新潟県立リウマチセンター)
  • 織田弘美(埼玉医科大学・整形外科学)
  • 木村友厚(富山大学大学院医学薬学研究部(医学)整形外科・運動器病学)
  • 小嶋俊久(名古屋大学医学部附属病院・整形外科)
  • 小嶋雅代(名古屋市立大学大学院医学研究科公衆衛生学分野)
  • 田中栄(東京大学医学部附属病院・整形外科)
  • 二木康夫(慶應義塾大学医学部  整形外科 )
  • 西田圭一郎(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科・人体構成学)
  • 芳賀信彦(東京大学医学部附属病院  リハビリテーション科 )
  • 橋本淳(独立行政法人国立病院機構(大阪南医療センター臨床研究部)・免疫疾患センター)
  • 宮原寿明(国立病院機構九州医療センター・整形外科・リウマチ膠原病センター)
  • 桃原茂樹(東京女子医科大学・膠原病リウマチ痛風センター)
  • 行岡正雄(医療法人行岡医学研究会・行岡病院)
  • 里宇明元(慶應義塾大学・リハビリテーション医学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
7,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は「多関節障害を持つRA患者に対し、手術種類に応じた関節再建治療に関わる総合的な治療ガイドライン」を開発することを目指し行うものである。多関節障害の評価方法を確立し、それを基に個々の患者に最適な、総合的な生活機能(ADL, QOL)回復のための手術と、術後の運動・作業療法指導が実施できれば、より早期により高いレベルまでの回復が可能となり、新たな関節障害の発症も予防できる。また、特にRAでは疼痛、身体機能障害が患者に負の心理的影響を与え(Arthritis Rheum 2009)、治療満足度低下に繋がる事に注目し、患者自身の評価を重視し、心理社会的要因に配慮した全人的な標準的治療プログラムを構築する。
研究方法
RAでは全身の運動器に影響が及ぶため、障害発生部位に注目し、問題部位と障害されるADL項目との関連、患者自身による評価の妥当性、上肢、下肢、多関節障害患者に対するリハビリテーション効果、及びこれら障害程度と治療効果を総合的に評価するシステム開発の検討を平行して進めた。
研究対象に対するアプローチとして2つの側面から検討した。まず多関節障害を持つRA患者のADLに影響を与える要因が何かを探り、その評価方法の妥当性を検証した(課題研究1~9)。また、機能回復を目的として行う各種関節再建術の有用性と問題点を検討した(課題研究10~15)。
結果と考察
ADL低下の問題部位として挙げられることが多かったのは、手指関節、下肢、手関節であった。ADL低下の原因は、筋力低下、疼痛が大部分を占めた。RA患者の受ける日常生活上の制限は多面的で、多関節が協働してADLレベルを決定していることが確認された。患者VASは臨床所見、検査値に比べて、個人内では値の変動が少なく、患者の病歴、心理社会的背景要因を反映していることが示唆された。各種患者ADL指標とPROの関係を検討し、従来医師が把握していなかった機能障害が、患者満足度に係わる可能性を示した。多職種間での情報共有が、多関節障害患者の治療を進めるうえで重要なポイントであることが示唆された。下肢機能再建効果を検討し、不可逆的関節破壊・変形に対する全身の機能障害の厳密な評価と的確なタイミングの手術が必要であると考察した。下肢多関節障害のために手術を受けたRA患者の背景、治療内容、治療成績を検討し、RA下肢多関節手術例においては、単関節手術例と比較して、手術に伴う骨折、感染、ゆるみの合併症がやや多い傾向にあった。下肢多関節手術に関する治療効果評価法が存在しないため、新たな評価法を開発し,信頼性・妥当性について検討した。上肢機能再建・維持効果を検討し、人工肘関節置換術(TEA)により、肘関節機能は十分な可動域と無痛性が得られたにも拘わらず、一部の動作項目では回内外が70°以上を獲得できなければ評価が改善しない傾向を示し、手関節・遠位橈尺関節障害の残存による回内外制限の影響を考えた。手術効果の判定は、局所機能、全身的な機能に加えて、その他の関節の状態、患者の治療や治療ゴールに対する意識変化など多面的な評価が必要であることが示唆された。手指伸筋腱断裂再建術に関しては腱断裂の本数が多いことは術後治療成績を低下させる因子であり、これには発症してから手術までの待機期間の延長が関与していた。すなわち腱断裂が発症すれば早期に手術を行うことが望ましいことが判明した。生物学的製剤使用中の上肢手術例は非使用例と比べ、若年齢、短罹病期間、 低疾患活動性、低患者VAS、mHAQでみた身体機能障害は同等などの特徴が認められた。患者VASが低いにも関わらず手術を希望したことは、患者のニーズが薬物治療効果によって変化した可能性が考えられる。RA患者でのADLと関節障害部位との関連について検討した。要介助となる下肢障害は近年減少傾向であったが、上肢障害は同程度であった。上肢障害のうち反対側で代償機能が効かない両手使用のADL障害が高率にみられた。多関節障害患者例では、歩行時、立ち上がり時の重心変化に特徴が見られ、今後はこれを主たる指標として動作分析をするのが有用であると考えられる。関節リウマチ患者の動作分析に関する研究の考察を行い、研究が不十分なこと、特に上肢機能や起居動作を含むADLの研究は少なく、RA患者のADLにおける問題点は十分に検討されていないこと見出した。
結論
本研究の前提となるRA多関節障害が広範囲にわたり患者ADL低下に繋がる事が確認できた。多関節障害の評価法は定まったものがなく、多くは単関節障害の指標の転用であったが、従来の方法では正確に評価できないこと、手術成績に他の関節の障害が影響を及ぼす事実も確認された。来年度に向け、継時的データを蓄積し、今回示された問題点の解決のための糸口を模索する。

公開日・更新日

公開日
2013-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201229036Z