ドナーとレシピエントの双方を改変した、骨髄非破壊的新規造血幹細胞移植法の開発基盤研究

文献情報

文献番号
201229034A
報告書区分
総括
研究課題名
ドナーとレシピエントの双方を改変した、骨髄非破壊的新規造血幹細胞移植法の開発基盤研究
課題番号
H23-免疫-若手-022
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
田代 克久(独立行政法人医薬基盤研究所 創薬基盤研究部幹細胞制御プロジェクト)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
875,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
造血幹細胞移植は白血病等の血液疾患の根治療法として実施されているが、高齢者や合併症をもった患者(レシピエント)へ適応例は少ない。それは、全身放射線照射等の移植前処理はレシピエントへの負担が大きいためである。また、この前処理によりレシピエント骨髄の造血幹細胞ニッチ(niche:本来の居場所)が破壊されることも推察されることから、骨髄非破壊的な造血幹細胞移植法の開発が必要不可欠である。一方、骨髄非破壊状態では骨髄に多くの血液細胞が残存しているためドナー造血幹細胞の生着率が低下することが懸念される。したがって、造血幹細胞移植の適応を拡大するには、骨髄非破壊的、かつ高生着を可能とする造血幹細胞移植法の開発が重要である。そこで本研究では、アデノウイルス(Ad)ベクターを用いて機能遺伝子を導入して造血幹細胞の機能を増強する(ドナーの改変)とともに、レシピエントの骨髄内環境を操作する(レシピエントの改変)ことにより、骨髄破壊を伴わない新規造血幹細胞移植法の基盤技術を開発する。本目的達成のため、本年度は特に、1.ドナー造血幹細胞の機能修飾法の開発、2.VEGF投与時の骨髄環境の解析、3.サイトカイン投与マウスへのドナー骨髄細胞の移植、に関する検討を行った。
研究方法
1.ヒトCD34陽性細胞へ種々の機能遺伝子を導入し、in vitroにおける増殖能と分化能を評価した。2.VEGFによる造血幹細胞・血液前駆細胞動員機構の解明を目指し、Ad-VEGF投与時の骨髄間葉系幹細胞数や生着に関与する接着分子の発現量等を解析した。3.Ad-GCSF投与マウスへドナー細胞(GFP発現骨髄細胞)を移植し、移植4週間後にレシピエントマウスの末梢血を回収し、ドナー細胞キメリズムを解析した。
結果と考察
1.ヒトCD34陽性細胞へ抗アポトーシス遺伝子を導入することによりin vitroにおいて分化能を保持したまま蔵宿可能であることが明らかとなった。2.VEGF投与マウスの骨髄では、造血幹細胞のニッチ細胞として知られる間葉系幹細胞数が著明に減少していること、そして骨髄ストロマ細胞において接着分子の発現が低下していることを明らかにした。3.G-CSFと抗がん剤5-FUを併用投与したマウスをレシピエントとすることにより、放射線非照射条件においてもドナー細胞が生着可能であることを明らかにした。
結論
放射線非照射条件においても移植が成立するという知見は大変意義深いものである。今後、機能修飾した造血幹細胞の移植を試みる予定である。本年度得られた成果は、骨髄非破壊的な新規造血幹細胞移植法の開発のための重要な知見となると思われる。

公開日・更新日

公開日
2013-05-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201229034Z