非血縁者間同種末梢血幹細胞移植開始におけるドナーおよびレシピエントの安全性と移植成績向上に関する研究

文献情報

文献番号
201229026A
報告書区分
総括
研究課題名
非血縁者間同種末梢血幹細胞移植開始におけるドナーおよびレシピエントの安全性と移植成績向上に関する研究
課題番号
H23-免疫-一般-014
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
宮村 耕一(名古屋第一赤十字病院 造血細胞移植センター)
研究分担者(所属機関)
  • 岡本 真一郎(慶應義塾大学 医学部 血液内科)
  • 日野 雅之(大阪市立大学大学院 医学研究科 血液腫瘍制御学)
  • 豊嶋 崇徳(北海道大学大学院医学研究科 内科学講座 血液内科学分野)
  • 田中 淳司(北海道大学大学院医学研究科 内科学講座 血液内科学分野)
  • 上田 恭典(倉敷中央病院 血液内科)
  • 長藤 宏司(久留米大学 医学部 内科学講座血液・腫瘍内科部門)
  • 高橋 聡(東京大学医科学研究所)
  • 西田 徹也(名古屋大学医学部附属病院 血液内科)
  • 飯田美奈子(愛知医科大学 医学部 造血細胞移植振興寄附講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
8,201,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成22年10月1日に開始された非血縁者間末梢血幹細胞移植同移植(URPBST)について以下の①~④についての研究を行い、ドナー及びレシピエント双方の安全性の向上および移植医療の成績向上をめざすことを目的とする。
① ドナーの安全性: ドナーの安全性の確認のために「ドナーの安全およびQOLの調査研究」を行い公表する。また「ドナーの生涯フォローの基盤作り」を世界BMT機構と連携を取りつつ、短期および中長期の安全性を確保する基盤を作る。「G-CSFの外来投与と一日採取のための基盤整備」を行いドナーの安全性に加え、利便性を検討する。
② レシピエントの安全と成績向上:「URPBSCTに関する観察研究」を行い、安全性を確認するとともに、それを基盤に次の成績向上のための臨床研究を立案する。PBSCTで課題となる慢性GVHDの治療に対し、対外紫外線治療(ECP)の導入を実現する。造血幹細胞や免疫担当細胞が豊富に含まれるPBSCTの特性を利用する「養子免疫療法」の基盤整備を行う。
③ 関連バンクの関係強化:「非血縁者移植ソース決定のアルゴリズム作成」によりURPBSCT導入に伴い複雑になるドナー選択の道筋を明らかにするとともに、「骨髄・臍帯血両バンクのドナー検索の一元化」を行い、迅速に最適のドナー検索ができるシステムを臍帯血バンクの協力も得て検討する。
④  安全管理・品質保証の推進: 欧米で行われているFACT/JACIEの相互監視システムを調査し本邦の実情に合わせた形で導入を検討する。凍結手順、細胞数定量などを標準化するとともに、各施設の体制強化にも協力する。
研究方法
「ドナーの観察研究」「URPBSCTに関する観察研究」を推進するとともに、登録状況、安全性情報をモニターし、適切な対応を取る。「ドナーおよびレシピエントの生涯フォロー」のための手帳の電子化を進める。安全を確保したうえでのG-CSFの外来投与、一日採取の実現に向けて米国の複数施設の調査を行う。PBSCTで課題となる慢性GVHDに対し、対外紫外線治療(ECP)の導入のための治験を推進する。「非血縁者移植ソース決定のアルゴリズム作成」「骨髄・臍帯血両バンクのドナー検索の一元化」を両バンクの協力も得て検討する。欧米で行われている相互監視システムを調査し本邦の実情に合わせた形で導入を検討する。これらの研究はすべて関係する倫理指針を順守して行われ、ドナーの安全と人権に最大の配慮を置き遂行される。
結果と考察
URPBSCTの施行数は予想より少なかったが、これは多くのドナーが「採取施設の通える範囲である」という安全の見地より、除外されたためであり、ドナー候補数が多い府県にURPBSCT施設がないこと、施設があるが広い地域をカバーできないためであった。この解決のためにはURPBSCT認定施設を増やすことが必要であり、施設認定への申請の呼びかけ、フローサイトメトリーがないためにURPBSCT認定施設に申請できない施設への本機器の設置の推進などを行い、上記府県にも認定施設となるなど、施設数60施設ドナーカバー率を80%以上になる見込みとなった。またURPBSCT認定施設以外の財団認定施設が、その施設の診療圏のドナーに対して緊急の場合の対応を行うシステムを構築することになった。昨年までの12例の採取例において、ドナー選択基準、施設基準、採取マニュアルに従い問題なく施行されていることが確認されたが、採取量の規定通りに取ると血小板数の低下することがあり、これについては骨髄移植推進財団より関係施設に注意喚起がなされた。今年度は採取について米国の調査を行い、多くの情報を得ることができた。ECPは厚生労働省、関連企業と詳細な打ち合わせを繰り返し行い、PMDAとの治験相談に至った。移植患者手帳については、改訂第二版を作成し、現在スマートフォンでも患者が利用できるよう検討中である。骨髄・臍帯血バンクのドナー検索の一元化について、班会議でどのように進めるか検討された。学会が出した「院内における血液細胞処理指針」をURPBSCT施設で行われているか検証するシステムを作成中である。班会議にてバンクの骨髄移植ドナーからのDLIの研究的利用の手順が発表された。
結論
URPBSCTの施行例は当初の予想に比較して少なかった。2回の班会議と1回の打合せにおいて、URPBSCTの現状について検討が行われ、採取の安全およびURPBSCTの推進に向けての適切な対応を行った。欧米と比較して遅れているインフラをそれに近づけるという研究課題については、各研究者において目標に向けてインフラ整備、プロトコールの作成および実施、基礎的な検討、各機関との打合、米国施設への調査などを行った。

公開日・更新日

公開日
2013-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201229026Z