文献情報
文献番号
199800120A
報告書区分
総括
研究課題名
保健医療福祉に関する医療施設に対する時系列指標の総合的開発と応用に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 敏彦(国立医療・病院管理研究所)
研究分担者(所属機関)
- 堀口裕正(九州大学医学部医療システム学教室)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 統計情報高度利用総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
1,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
医療供給体制を把握するためには時系列でその変化を捉えることが重要であると考える。しかし,これまでの厚生省の統計は年度や調査単位で企画されており,時系列で情報を得ることが難しかった。そこで医療供給体制の最小のユニットである病院・診療所といった医療施設で,時系列で結び付ける指標の開発を試みた。また病院の特性を分析するには患者特性も重要で,IDを用いて医療施設調査と患者調査の連携を試みた。これらの過程でID番号の振り方等の問題を明らかにし,今後の総合的指標の開発に資することを目的としている。
研究方法
研究方法は以下の方法をとった。
1.データセットの作成
医療施設静態調査における同一医療機関の医療施設番号の変遷を調査した。医療機関にユニークな仮の施設番号を振り,各年次のデータを統合した。患者調査の情報を医療機関別に集計し,上記のデータセットに統合した。
2.ID統合の方法
医療施設静態調査において1975年から1996年の21年分で,年度毎に変わらない属性(名称・住所・開設者・開設年)をキーとして同一施設と認められるものをつなぎ合わせた。医療施設動態調査において開設・廃止をチェックし,施設番号の確認を行なった。
3.完成したデータセットを利用し,総合的な医療供給体制分析を行なう施設の開廃,病床規模や平均在院日数など。
1.データセットの作成
医療施設静態調査における同一医療機関の医療施設番号の変遷を調査した。医療機関にユニークな仮の施設番号を振り,各年次のデータを統合した。患者調査の情報を医療機関別に集計し,上記のデータセットに統合した。
2.ID統合の方法
医療施設静態調査において1975年から1996年の21年分で,年度毎に変わらない属性(名称・住所・開設者・開設年)をキーとして同一施設と認められるものをつなぎ合わせた。医療施設動態調査において開設・廃止をチェックし,施設番号の確認を行なった。
3.完成したデータセットを利用し,総合的な医療供給体制分析を行なう施設の開廃,病床規模や平均在院日数など。
結果と考察
以下のような結果と考察をえた。
1.データの統合について
1)技術的問題
調査年によって結合に難があり(例:1975年=施設名・住所なし,1978年=施設名・住所カナのみ),中途での廃止施設に関しては一部完全でないものが残った。
2)判明した2点の本質的問題
①1981-1984年の間で,岡山県を除く全ての施設で,ID番号のふり直しがあった。
②名称・住所・開設者の変更,合併等の際にID番号をふり直すかどうかについてなど,個々のケースによって対応がまちまちであった。
施設番号だけでは施設の同一性を保証できない現状は打開する必要がある。しかしながら,またすべての施設に新規の番号を振りなおすことに関しては混乱を招くだけであると思われる。よって,医療施設の同一性を保証する番号を振るメソッドを今後開発することと,過去の情報を読み替えることの出来る変換表を活用し今後の研究や行政資料として生かしていく必要性があると思われる。しかし一方で,これらの限界を踏まえることにより,より詳細な分析が可能となることが示唆された。今後はデータリンクしうるように調査当初から企画することが肝要と考えられた。
2.時系列指標を用いたデータの分析
1)病院の開廃,病床の増減分析
医療法に基づく地域医療計画の駆け込み増床のため約20万床の増床をみた時期の前後,1984-1996年までの病院の開設・廃止,あるいは病床の増減を分析した。1984年当時,8500あった病院が1996年にらいの療養所を除いて8406になり,この間廃止された病院は1510,新設された病院は1407,他の種類の病院から転換したものが6であり,約1000の病院が減少していた。その大半は50床未満の病院で,1984年当時に存在した50床未満の病院の38.4%が廃止されている。規模が増えるに従って廃止された病院は減少している。新設された病院は中小規模病院が多く,300床以下の病院で約20%の増加をみている。両方合わせると50床以下の病院での減少の多くが観察されている。次いで病床の増減を1980から1996年までに存続した7035の病院で見ると増加率は規模が大きくなるに従って,増加しており,50床未満では29.7%であったものが,500床以上では43.0%と約半数にのぼっている。減少した病院は50床から300床の中規模病院に多く,約20%であった。50床以下の病院はあまり減少しておらず,減らすのであれば廃止してしまうという傾向が示唆される。500床以上でも14.0%とあまり減少しておらず,減少よりもむしろ増加の傾向が顕著と思われる。以上の分析結果より,日本の病院は大病院を中心に規模の拡大が認められ,中規模病院は廃止の傾向が認められる。
1)病院の機能分化の分析
筆者はこの間,病床規模別の機能分化の分析を行い,平均在院日数,病床当たり投入職員数,手術施行機能,入院外来比の変数からみて,高機能を中心とする大病院,療養機能を中心とする中規模病院,外来機能を中心とする小規模病院の3つ,ならびに未分化の病院が存在することを明らかにした。さらに高機能と療養型機能は1970年代の半ばに機能分化が始まったことも分析してきた。さらに所有主体別に分析すると,医療法人や個人立の医師が所有する純粋な私的病院と,国公立等の公的病院では前者に療養型が多く,後者に急性期病院が多いことを指摘してきた。これらの研究結果から1970年代半ばに起きた技術革新により,公的病院が急性期病院として機能強化に成功した一方,私的病院の多くが機能強化し得ず,療養型の病院として経営されるに至っているという仮説を持つに至った。今回時系列指標を用い,1975年と1996年の病院の規模と平均在院日数の変化を,公的と純私的の2グループに分けて分析した。1975年に7535あった病院のうち1996年に存在している病院は,らいの療養所を除いて,3174であった。これらを病床規模別に50床未満,50床以上100床未満,100床以上200床未満,200床以上~300床未満,300床以上500床未満,500床以上,6段階に分け,1975年の規模と平均在院日数を比較してみると,500床以上と50床未満の病院を除いて,1975年には両方大差がなかったが,公的病院では病床規模の増加と平均在院日数の短縮が見られた。一方,純私的病院では病床規模の増加と共に平均在院日数の延長が見られた。例外は50床以下の病院で公的病院においても平均在院日数の延長が認められ,500床以上の純私的病院ではわずかな病床数の低下が認められた。
1.データの統合について
1)技術的問題
調査年によって結合に難があり(例:1975年=施設名・住所なし,1978年=施設名・住所カナのみ),中途での廃止施設に関しては一部完全でないものが残った。
2)判明した2点の本質的問題
①1981-1984年の間で,岡山県を除く全ての施設で,ID番号のふり直しがあった。
②名称・住所・開設者の変更,合併等の際にID番号をふり直すかどうかについてなど,個々のケースによって対応がまちまちであった。
施設番号だけでは施設の同一性を保証できない現状は打開する必要がある。しかしながら,またすべての施設に新規の番号を振りなおすことに関しては混乱を招くだけであると思われる。よって,医療施設の同一性を保証する番号を振るメソッドを今後開発することと,過去の情報を読み替えることの出来る変換表を活用し今後の研究や行政資料として生かしていく必要性があると思われる。しかし一方で,これらの限界を踏まえることにより,より詳細な分析が可能となることが示唆された。今後はデータリンクしうるように調査当初から企画することが肝要と考えられた。
2.時系列指標を用いたデータの分析
1)病院の開廃,病床の増減分析
医療法に基づく地域医療計画の駆け込み増床のため約20万床の増床をみた時期の前後,1984-1996年までの病院の開設・廃止,あるいは病床の増減を分析した。1984年当時,8500あった病院が1996年にらいの療養所を除いて8406になり,この間廃止された病院は1510,新設された病院は1407,他の種類の病院から転換したものが6であり,約1000の病院が減少していた。その大半は50床未満の病院で,1984年当時に存在した50床未満の病院の38.4%が廃止されている。規模が増えるに従って廃止された病院は減少している。新設された病院は中小規模病院が多く,300床以下の病院で約20%の増加をみている。両方合わせると50床以下の病院での減少の多くが観察されている。次いで病床の増減を1980から1996年までに存続した7035の病院で見ると増加率は規模が大きくなるに従って,増加しており,50床未満では29.7%であったものが,500床以上では43.0%と約半数にのぼっている。減少した病院は50床から300床の中規模病院に多く,約20%であった。50床以下の病院はあまり減少しておらず,減らすのであれば廃止してしまうという傾向が示唆される。500床以上でも14.0%とあまり減少しておらず,減少よりもむしろ増加の傾向が顕著と思われる。以上の分析結果より,日本の病院は大病院を中心に規模の拡大が認められ,中規模病院は廃止の傾向が認められる。
1)病院の機能分化の分析
筆者はこの間,病床規模別の機能分化の分析を行い,平均在院日数,病床当たり投入職員数,手術施行機能,入院外来比の変数からみて,高機能を中心とする大病院,療養機能を中心とする中規模病院,外来機能を中心とする小規模病院の3つ,ならびに未分化の病院が存在することを明らかにした。さらに高機能と療養型機能は1970年代の半ばに機能分化が始まったことも分析してきた。さらに所有主体別に分析すると,医療法人や個人立の医師が所有する純粋な私的病院と,国公立等の公的病院では前者に療養型が多く,後者に急性期病院が多いことを指摘してきた。これらの研究結果から1970年代半ばに起きた技術革新により,公的病院が急性期病院として機能強化に成功した一方,私的病院の多くが機能強化し得ず,療養型の病院として経営されるに至っているという仮説を持つに至った。今回時系列指標を用い,1975年と1996年の病院の規模と平均在院日数の変化を,公的と純私的の2グループに分けて分析した。1975年に7535あった病院のうち1996年に存在している病院は,らいの療養所を除いて,3174であった。これらを病床規模別に50床未満,50床以上100床未満,100床以上200床未満,200床以上~300床未満,300床以上500床未満,500床以上,6段階に分け,1975年の規模と平均在院日数を比較してみると,500床以上と50床未満の病院を除いて,1975年には両方大差がなかったが,公的病院では病床規模の増加と平均在院日数の短縮が見られた。一方,純私的病院では病床規模の増加と共に平均在院日数の延長が見られた。例外は50床以下の病院で公的病院においても平均在院日数の延長が認められ,500床以上の純私的病院ではわずかな病床数の低下が認められた。
結論
結合データベースを用いて,多彩にして詳細な分析が可能となった。しかし各調査の結合には種々の問題があること,例えばIDの非ユニーク性等が認められた。今後,ID定義原則の確立や結合することを調査設計に盛り込むことが必要と考えられる。また,種々の調査データの結合を試み,それぞれの問題点を明らかにすることが必要と考えられる。マルチデータプール法や,メタアナリシス法によって結合の方法や,結果の精度を検討していく必要がある。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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