文献情報
文献番号
201229019A
報告書区分
総括
研究課題名
アレルギー疾患のダイナミックな変化とその背景因子の横断的解析による医療経済の改善効果に関する調査研究
課題番号
H23-免疫-一般-007
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
片山 一朗(大阪大学大学院 医学系研究科皮膚科学)
研究分担者(所属機関)
- 横関 博雄(東京医科歯科大学 大学院医歯学研究科 皮膚科学 )
- 室田 浩之(大阪大学大学院 医学系研究科皮膚科学 )
- 田中 敏郎(大阪大学大学院 医学系研究科 抗体医薬臨床応用学)
- 藤枝 重治(福井大学医学部感覚運動医学講座・耳鼻咽喉科頭頸部外科学)
- 金子 栄(島根大学医学部 皮膚科学)
- 宇理須 厚雄(藤田保健衛生大学医学部・藤田保健衛生大学 坂文種報徳會病院 小児免疫アレルギー学)
- 河原 和夫(東京医科歯科大学 大学院医歯学研究科 保健医療公共政策学 )
- 瀧原 圭子(大阪大学保健センター 循環器内科学・一般内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
11,250,000円
研究者交替、所属機関変更
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研究報告書(概要版)
研究目的
アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、気管支喘息といったアレルギー疾患はいつ始まり、その後症状はどう変化するのでしょうか。アレルギー症状の自然史を知ることは、医療や社会の行うべき対応方法の構築に役立つものと期待されます。アレルギーの有病率は近年のライフスタイルの変貌に伴い年々変化しています。近年、思春期以降のアトピー性皮膚炎患者が増加傾向にあり、対策が急務となっています。そのためには実態や原因の把握が不可欠です。しかし、思春期以降のアトピー性皮膚炎がこの時期のアレルギー症状の実態はよくわかっていません。不明な背景として、(1)アレルギーが様々な臓器に生じるため診療科が多岐に渡ること、(2)思春期の年齢層の病院受診率が低いことなどがあります。本研究では診療科横断的に思春期成人期のアレルギー疾患疫学調査を行い、その実態調査から得られた情報をもとに患者指導箋を作成します。また、思春期・成人期は社会生活を支える年齢層でもあります。個々の患者さんがよりよい社会生活を営むことができるような指導箋を立案し、労働生産性を改善させることで社会に貢献することが本研究班の目的です。
研究方法
1.思春期アレルギー疾患の有病率、その発症と進展、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、気管支喘息といったアレルギー疾患の相互の影響(アレルギーマーチの実態)調査:コホート・症例対照研究によって各アレルギー疾患の有病率、罹患率、発症、寛解、増悪時期を調査します。アレルギー症状悪化因子を年代別に調査しました。また成人型アトピー性皮膚炎の治療実態調査を行いました。2.限られた医療資源をより有効に配分するための医療経済学的検討:アレルギー症状が労働生産性(*)、勉強能率に与える影響を調査しました。(*)労働生産性とは労働の効率を示す指標で、投入した労働量に対してどの程度の生産量が得られたかを表します。3.生活習慣とアレルギー疾患の発症・進展に関わる新しい視点からの検討:悪化因子、改善因子のエビデンス確立に向けた個別研究を行いました。1)食生活のアレルギ―疾患の発症・進展に及ぼす影響について、フラボノイドの抗アレルギー効果を調査しました。2)皮膚生理機能、特に汗に関する調査を行いました。3)バリア機能と乳幼児期食物アレルギー発症の関連について、フィラグリン遺伝子変異の検討を行いました。
結果と考察
1.思春期~成人期のアトピー性皮膚炎患者の病院受診は増加傾向にありました。大学新入生を対象としたアレルギー実態調査から、思春期・成人期のアトピー性皮膚炎の自然経過は1)乳幼児期のみで自然消退(アウトグロー)する型(アウトグロー型)、2)自然消退した後、思春期で再び再燃する型(思春期再燃型)、3)乳幼児期から症状の持続する型(非アウトグロー型)、4)思春期以降で発症する型(思春期発症型)の4つに分かれました。汗やストレスなど思春期に特徴的な悪化因子、医療従事者からの外用治療指導内容が症状の経過に与える影響が見えてきています。以上をふまえ、指導箋の確立を行っています。平成24年度は特に汗に関して、アトピー性皮膚炎の発汗低下に着目し発汗を促す指導介入を行い、発汗を促す指導が症状の改善につながることを確認しました。2.これまで本研究班ではアレルギー性皮膚疾患が労働生産性に与える影響を検証し、実際にアレルギー性皮膚疾患罹患者の労働生産性が有意に障害されていることを報告してきました。全般労働障害率はアトピー性皮膚炎で特に大きく、この障害を改善することで社会に副次的に好影響をもたらすものと想像されます。一方、アレルギー疾患によって勉学能力も約20%障害されていることが判明し、対策が急務と考えられました。3. 食物に含まれるフラボノイドの摂取がアレルギー症状を緩和する効果、また皮膚バリア機能に関わるフィラグリンの遺伝子変異が食物アレルギーの獲得に影響を与えるかの検討を行ってきました。その結果、互いに関係があることが分かってきました。
結論
本研究結果は思春期・成人のアレルギー症状の実態を明らかにするとともに、的確な指導箋を作成し、広く国民に有益な情報を提供できるものと期待されます。引き続き、現代人のライフスタイルのダイナミックな変化に対応すべく、データを拡充し新しい患者指導の立案を行って参ります。
公開日・更新日
公開日
2013-04-19
更新日
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