文献情報
文献番号
201229018A
報告書区分
総括
研究課題名
免疫療法による花粉症予防と免疫療法のガイドライン作成に向けた研究
課題番号
H23-免疫-一般-006
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
岡本 美孝(千葉大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
- 櫻井 大樹(千葉大学 大学院医学研究院)
- 下条 直樹(千葉大学 大学院医学研究院)
- 岡野 光博(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
- 藤枝 重治(福井大学 医学部)
- 竹内 万彦(三重大学 大学院医学系研究科)
- 大久保 公裕(日本医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
21,039,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
スギ花粉症は一旦発症すると中高年者を除き自然改善は非常に少ない。スギ花粉に感作陽性ながら非発症者は「発症予備軍」として捉えられ、感作陽性者の半数以上を占める。感作陽性者の発症予防の検討、すなわち花粉症発症に対する2次介入を、このような感作陽性ながら未発症者を対象に検討する。また今後アレルギー性鼻炎の治療に期待される免疫療法のガイドラン作成に向けて、花粉症治療の実態調査から現状の治療の課題を明らかにする。
研究方法
1、スギ花粉感作陽性でかつ未発症者を対象に、スギ花粉エキスを用いた舌下免疫療法の発症予防効果を明らかにする介入試験を、プラセボエキス(溶剤)を対照として2重盲検試験により昨年に続いて実施した。(キーオープンは平成25年度)
2、研究班にて作成したアレルギー性鼻炎治療に関して、内容、費用、効果などから問題点を問うアンケート用紙を用いて、学校健診、あるいは疫学調査など直接受療と関係なく医療機関を訪れたアレルギー性鼻炎患者に対して調査を行った。
3、花粉症の発症の機序を明らかにするために、鼻粘膜上皮細胞に存在することを確認したCystatin SNの発症への関与を検討した。また、抗原ディスク誘発試験を連日行ない非発症者の鼻汁の解析を行った。
4、舌下免疫療法の効果向上を目的にNKT細胞のリガンドであるα-galactosylceramide(α-GalCer)と抗原でパルスした樹状細胞投与した鼻アレルギーモデルマウスの検討を行った。
5、舌下免疫療法の機序の解明を目的に、花粉飛散室での症状、鼻水のメディエーターの解析を行った。
2、研究班にて作成したアレルギー性鼻炎治療に関して、内容、費用、効果などから問題点を問うアンケート用紙を用いて、学校健診、あるいは疫学調査など直接受療と関係なく医療機関を訪れたアレルギー性鼻炎患者に対して調査を行った。
3、花粉症の発症の機序を明らかにするために、鼻粘膜上皮細胞に存在することを確認したCystatin SNの発症への関与を検討した。また、抗原ディスク誘発試験を連日行ない非発症者の鼻汁の解析を行った。
4、舌下免疫療法の効果向上を目的にNKT細胞のリガンドであるα-galactosylceramide(α-GalCer)と抗原でパルスした樹状細胞投与した鼻アレルギーモデルマウスの検討を行った。
5、舌下免疫療法の機序の解明を目的に、花粉飛散室での症状、鼻水のメディエーターの解析を行った。
結果と考察
1、舌下免疫療法によるスギ花粉症発症予防の二次介入試験が述べ300人以上のスギ花粉感作陽性未発症者の参加で進んでおり、平成25年6月にキーオープンの予定で、抑制効果、発症の作用機序、免疫療法の奏効機序などの解析結果が期待される。
2、アレルギー性鼻炎に対して現在の治療に対する満足度は、成人、小児患者ともに満足、やや満足を合わせてもその割合が20%前後と低かった。効果が十分ではない、頻回な通院の必要性、副作用への危惧、費用などが主な不満の理由であった。一方、抗原特異的免疫療法についての患者認知度は低く、正しい免疫治療に関する情報提供が必要である。
3、Cystatin SNはアレルギー反応の抑制に作用している可能性が認められたが、感作未発症者のうち皮内反応陽性者で陰性者より高く鼻粘膜に発現しており、感作から発症へ関与する可能性が示唆された。
一方、抗原ディスク誘発試験を連日行なうことで無症状者でも有症者と差がなく鼻水中にトリプターゼの増加がみられ、アレルギー反応自体は生じている可能性が示唆された。
3、α-GalCerと抗原でパルスした樹状細胞投与した鼻アレルギーモデルマウスでは症状の有意な改善、IgE,Th2サイトカイン産生抑制、IFN-γ、IL-21発現の増加がみられた。抗IL-21抗体、抗IFN-γ抗体投与により、このような抗アレルギー反応は解除された。NKT細胞免疫系を利用したアジュバント療法の有用性が示唆された。
4、花粉飛散室内での3時間のスギ花粉曝露により、スギ花粉症患者全員に退室後にもくしゃみ、鼻漏、鼻閉症状が持続し、鼻汁中にはTh2サイトカイン、ECP,ロイコトリエン、さらにヒスタミン,トリプターゼの増加が遅発相に認められた。CD203陽性細胞も高頻度に検出された。舌下免疫療法群ではプラセボ群に比較して特に遅発相での症状の改善が認められた。
2、アレルギー性鼻炎に対して現在の治療に対する満足度は、成人、小児患者ともに満足、やや満足を合わせてもその割合が20%前後と低かった。効果が十分ではない、頻回な通院の必要性、副作用への危惧、費用などが主な不満の理由であった。一方、抗原特異的免疫療法についての患者認知度は低く、正しい免疫治療に関する情報提供が必要である。
3、Cystatin SNはアレルギー反応の抑制に作用している可能性が認められたが、感作未発症者のうち皮内反応陽性者で陰性者より高く鼻粘膜に発現しており、感作から発症へ関与する可能性が示唆された。
一方、抗原ディスク誘発試験を連日行なうことで無症状者でも有症者と差がなく鼻水中にトリプターゼの増加がみられ、アレルギー反応自体は生じている可能性が示唆された。
3、α-GalCerと抗原でパルスした樹状細胞投与した鼻アレルギーモデルマウスでは症状の有意な改善、IgE,Th2サイトカイン産生抑制、IFN-γ、IL-21発現の増加がみられた。抗IL-21抗体、抗IFN-γ抗体投与により、このような抗アレルギー反応は解除された。NKT細胞免疫系を利用したアジュバント療法の有用性が示唆された。
4、花粉飛散室内での3時間のスギ花粉曝露により、スギ花粉症患者全員に退室後にもくしゃみ、鼻漏、鼻閉症状が持続し、鼻汁中にはTh2サイトカイン、ECP,ロイコトリエン、さらにヒスタミン,トリプターゼの増加が遅発相に認められた。CD203陽性細胞も高頻度に検出された。舌下免疫療法群ではプラセボ群に比較して特に遅発相での症状の改善が認められた。
結論
舌下免疫療法によるスギ花粉症発症に対する2次介入試験が進んでいる。スギ花粉症の感作・発症におけるマーカーの検討も進み、現在進行中の介入試験でその検証が行われ有力なマーカーが明らかになるものと期待される。一方、従来の治療に対する患者の満足度は低く免疫療法の普及が期待されるが、患者への免疫療法に関する正しい情報提供が必要である。
公開日・更新日
公開日
2013-05-31
更新日
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