RSウイルス気道感染予防によるアトピー型気管支喘息の発症抑制効果に関する研究

文献情報

文献番号
201229017A
報告書区分
総括
研究課題名
RSウイルス気道感染予防によるアトピー型気管支喘息の発症抑制効果に関する研究
課題番号
H23-免疫-一般-005
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
望月 博之(東海大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 吉原重美(獨協医科大学 医学部)
  • 岡田賢司(国立病院機構福岡病院 小児科)
  • 楠田 聡(東京女子医科大学母子総合医療センター 小児科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
7,608,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
乳幼児期のRSウイルスによる下気道感染が、その後の喘鳴・喘息発症のリスクの増大に関与するという報告は数多いが、RSウイルスの感染によりアレルギー疾患が発症しやすくなることについても、これまでに多数の報告がある。
我々は2008年7月から「早産児におけるRSウイルス感染による反復性喘鳴発症抑制効果の検討」を実施し、満3歳まではパリビズマブの投与がその後の反復性喘鳴の発症を抑制することを確認している。しかしながら、3歳の小児では喘息の診断は困難であることやアトピーの発症の有無については確定しがたいことから、RSウイルス感染とアトピー型喘息の発症との関連が十分に検証できない。そこで、新たに乳児喘息病態解明委員会(SCELIA)を立ち上げ、喘息の診断が可能な年齢として6歳までの評価を継続的に行う前向きの観察研究を計画した。
研究方法
これまでの検討に参加していた児で、文書での同意が得られた児を対象とし、2013年12月31日(対象児が満6歳を迎えるまで)を研究期間とした。主要評価項目は、登録時から満6歳の期間におけるアトピー型喘息の発症の有無、副次的評価項目として、反復性喘鳴発症までの経過日数(医師判断)、同(保護者判断)、さらに登録時から満6歳時期間における呼吸器関連疾患による受診回数、入院回数、アレルギー疾患の発症の有無、発育状況、身長、体重、BMIの推移の検討を計画した。方法は、①アンケート調査:保護者に対して携帯電話(パソコン)回答システムにより、月1回(合計36回)、アンケート調査を実施する。②「SCELIAカード」の運用:被験者が呼吸器疾患で医療機関を受診するごとに、保護者が「SCELIAカード」を担当医師に提示する。呼気性喘鳴の有無、および呼気性喘鳴があった場合、医師に確認してもらい、その旨を本カードに記入する。③血液検査及び健康診断:被験者が満6歳の誕生日を迎える月において、血液検査及び健康診断を実施する。
結果と考察
昨年度からの研究でも、月ごとの集計データが各研究分担者にメールで配信され、その経過の確認と評価が継続して行なわれている。本年度の2012年4月1日からもSCELIAカードを用いた検討は続けられ、最新の2013年2月までの結果では、返信は346名 合計4138回であった。2012年11月より2013年1月まで、総数にして19名の再登録があった。主要評価項目である「医師判断による反復性喘鳴の発症(3回の喘鳴診断あり)」の結果は、投与児で 32名(投与児全体の9.2%、返信のあった投与児全体の12.2%)であった。非投与児の反復性喘鳴ありの群は22名(投与児全体の23.2%、返信のあった投与児全体の27.8%)で、有意に高値であった(p<0.001)。一方、副次評価項目の結果では、喘鳴の有無など、2群間に有意な差はみられなかった。
結論
これまでの結果から、パリビズマブの反復性喘鳴に対する明らかな阻止効果がみられた。一方、単に喘鳴のみに注目すれば、投与群、非投与群で効果に差がないことから、乳幼児の喘鳴には、Steinらの指摘する「Transient early wheezers」と考えられる「RSウイルス」と「気管支喘息」に関連しない群が少なからず存在すること、「Non-atopic wheezers」というべきRSウイルス感染に関連する反復性喘鳴群は、「IgE-dependent wheezers/asthma」と、1:1の比率で存在することが推測され、興味深い。本研究から、乳幼児のRSウイルス感染によるアトピー型喘息発症についての明確なエビデンスが得られることにより、①喘息発症の素因のある乳幼児に対して、RSウイルス感染の積極的な感染予防を含む喘息発症の予防措置・指導により、アトピー型の喘息発症を回避できる可能性がある。②さらに、乳児期にRSウイルスによる気道感染症を罹患した小児の予後予測に活用することも期待される。

公開日・更新日

公開日
2013-04-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201229017Z