保健医療福祉に関する地域指標の標準化と妥当性に関する研究

文献情報

文献番号
199800119A
報告書区分
総括
研究課題名
保健医療福祉に関する地域指標の標準化と妥当性に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 修二(東京大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 林正幸(福島県立医科大学情報科学)
  • 尾島俊之(自治医科大学公衆衛生学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 統計情報高度利用総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
-
研究費
3,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
保健医療福祉に関わる対策には、都道府県、保健所、市町村を地域単位として立案・実施されるものも多い。地域の対策立案の支援として、統計情報を生データに近い形態とともに、高度な加工を加えた上で提供することが重要である。とくに、統計情報の加工形態として指標があるが、地域に対する適切な指標の提供は、地域の対策立案の直接的支援のみならず、現在の対策の見直しや新たな対策の実施促進にもつながるものであろう。
保健医療福祉の分野は、きわめて多くの次元から表現されるべきものであるが、統計情報の提供という観点からは次元をある程度に限定することが必要であり、また、対策立案の支援という観点からは次元の意味を明確にしておくこと(具体的な指標で表現)が肝要であろう。
本研究の目的は、地域に対する保健医療福祉に関する統計情報の提供をねらいとする指標群(地域指標と呼ぶ)を具体的に提案することにある。なお、本研究は平成9年度から検討を開始したゆえ、ここでは、それを含め研究全体の概要を示す。
研究方法
1.検討の流れ
地域指標の開発の流れとして、地域指標の概念規定、地域区分の選定、指標構造の決定を行い、検討の枠組みを設定した。統計調査の総覧と主な指標の一覧を通して、地域指標候補の選定を行い、検討対象を設定した。指標の検討としては、基本的・統計的・実際的の3側面から行った。指標の総合化と表示方法の検討を経て、地域指標の案を作成した。
地域指標案について、算定上の問題、指標間の関連性、地域の指標妥当性調査を行った。とくに、地域の指標妥当性調査としては、全保健所を対象に、各管轄地域の指標値を提示した上で有用性などを調べた(回収率82%)。個別指標の検討を経て、地域指標を具体的に提案した。
2.基礎資料
厚生統計の調査概要や班内での議論の結果に基づいて、最終的に10統計調査の50余りの指標を選び、WISH、刊行された報告書、および、統計の目的外使用により、都道府県・保健所・市町村別のデータベースを構築した。
結果と考察
1.検討の枠組みと対象の設定
地域指標とは、地域に対して統計情報を提供するものと概念規定し、地域の保健医療福祉に関わる対策立案の直接的支援などの促進を図ることにねらいがあるとした。地域区分は都道府県、保健所と市町村を基本と定めた。地域指標の構造は母子保健、健康増進、成人保健、老人保健、老人福祉、その他の6分野ごとに、少数個の指標と総合指標から成るものとし、個々の指標には高低評価を付けることとした。地域指標の候補を、情報の存在と専門家の判断に基づいて定めた。
2.指標の基本的・統計的・実際的側面
基本的側面として、指標一般の性質、指標の型とその性格、指標系と総合指標の留意点を明確にした。統計的側面として、指標の精度、地域間差と判定基準を検討した。実際的側面として、地域の指標ニーズ調査結果に基づいて、地域の判断による各指標の重要性を把握した。
3.指標の総合化と案の作成
上記の検討成績を総括し、5視点(情報の存在、専門家の判断、指標の精度、地域間差、地域の重要性の判断)の判定により指標を絞り込むとともに、表示方法を検討して、地域指標の案を作成した。
4.案の吟味と妥当性の検討
地域指標案の算定上の問題として、基礎資料、算定方法、表示・評価方法を検討した。指標間の関連性を都道府県・保健所・市町村ごとに検討するとともに、実態と対策を表す指標により地域の分類を試みた。地域の指標妥当性調査により、指標の有用性、利用目的、理解度や変更点などを把握し、地域からみた指標の妥当性を検討した。
5.個別指標の検討と指標の提案
喫煙率などの生活習慣に関する指標について、指標の算定可能性を検討した。老人福祉対策の指標について、市町村別の算定可能性とともに都道府県内の市町村間差を検討した。要介護者割合と平均自立期間について、算定可能性を確認するとともに定義の問題などを検討した。
以上の検討結果に基づいて、標準的な地域指標として、6分野47指標を提案した。
地域指標の概念規定からはじめ、様々な検討過程を経て具体的な提案まで至った。その検討過程の特徴としては、検討手順自体の正当性の確保、指標の実用性の重視、および、地域の意見の把握である。検討手順自体の正当性は指標提案の基礎であり、吟味なども手順に含めたことから、ある程度確保できたものと考える。実用性の重視は具体的な提案に結びつけるためである。地域の意見の把握は、地域指標が地域への情報提供方法であることから必須なものといえる。地域の意見からは、おおむね地域指標が有用性を有すると示された。一部に、情報内容の少なさなどが指摘されたが、これは、地域指標が現在の統計調査に基づくことによるためと考えられる。とくに、老人福祉対策の指標には市町村別算定可能なものが少ないが、今後、統計調査の内容追加などにより、指標をより充実させることが重要と考える。以上、現在の統計調査の枠組みの中では、本地域指標はある程度妥当性があるものと考えられる。今後、地域指標の活用によって、地域への情報提供の一層の進展を期待したい。
結論
地域への情報提供方法の1つである地域指標について、妥当性などを検討した上で、6分野47指標を提案した。

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