本邦関節リウマチ患者の疾患活動性・身体障害度・有害事象・医療費用の推移を明らかにするための多施設共同疫学研究

文献情報

文献番号
201229014A
報告書区分
総括
研究課題名
本邦関節リウマチ患者の疾患活動性・身体障害度・有害事象・医療費用の推移を明らかにするための多施設共同疫学研究
課題番号
H23-免疫-一般-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
當間 重人(独立行政法人国立病院機構相模原病院 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 末永康夫(独立行政法人国立病院機構別府医療センター・リウマチ科)
  • 松井利浩(独立行政法人国立病院機構相模原病院リウマチ科)
  • 金子敦史(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター・整形外科)
  • 佐伯行彦(独立行政法人国立病院機構大阪南病院臨床研究部)
  • 税所幸一郎(独立行政法人国立病院機構都城病院・整形外科)
  • 吉永泰彦(財団法人倉敷成人病センターリウマチ膠原病センター)
  • 森 俊仁(独立行政法人国立病院機構相模原病院整形外科)
  • 杉井章二(東京都立府中病院リウマチ膠原病科)
  • 西野仁樹(西野整形外科リウマチ科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本邦における関節リウマチ(RA)患者に関する種々の情報を多施設共同で収集解析し、現状や問題点を明らかにする。
研究方法
2002年度以降、年1回患者情報を収集し解析。収集項目は基本的患者背景、年度内の任意の評価日における治療薬・疾患活動性・ADL、年度内の事象(入院、手術・新規悪性疾患・結核発病など)。
結果と考察
1)2012年度は38施設が参加し10367人のデータを収集。2)疾患活動性や身体機能は経年的にさらに改善。3)NSAIDやステロイド薬は経年的に投与頻度が減少、抗リウマチ薬の投与頻度は91.0%、生物学的製剤(Bio)の投与頻度は22.1%とさらに増加。4)実地医療ではBio投与量の減量が観察された。中和抗体出現や骨破壊進行の危険性の解析も必要。5)RA関連手術件数率は8.11%(2003)から3.76%(2011)まで減少。特に初回人工関節置換術と滑膜切除が減少。6)TKA予測因子としてmHAQ・DAS28・Bioを抽出。7)Bio例の手術頻度が他抗リウマチ薬例より高い。Bio例では手術適応が変化・軽症化した可能性。8)mHAQが高くとも比較的若く炎症が抑えられた状態ならTKAによるmHAQの改善効果が持続。9)足趾手術群で、mHAQ項目2(就寝・起床動作)と7(蛇口の開閉)が術後有意に改善。10)疾患活動性コントロールの観点から手術に適切な時期を解析。特に罹患10-15年までが“Surgical Window of Opportunity”。11)DAS28-ESRとDAS28-CRPの差に影響を及ぼす因子を検討。ESR・女性・年齢・mHAQ・BMIを抽出。12)BMI別で比較、under-weight群は有意に疾患活動性が高く治療抵抗性。13)単変量解析では、秋期の患者全般評価は他の時期に比して有意に低値。14)全般評価における医師と患者間の不一致を検討。疼痛VASおよびmHAQを乖離の要因として同定。15)HAQを疾患活動性由来のactHAQと不可逆的な関節破壊に伴うdamHAQの2成分に分離可能として、ΔactHAQ, ΔdamHAQのモデル式を作成。16)mHAQを解析。罹病当初は更衣・起居・入浴・蛇口開閉動作が突出して悪化、罹病期間が長くなると全般的に機能低下。17)大規模病院では罹病期間が長く、関節破壊が進行し機能障害が強い症例が多い。18)進行期RAの寛解率は経年的に増加しているが、維持は困難。19)寛解症例をNSAIDやステロイドを要するIncomplete Remission (IR)、抗リウマチ薬のみのComplete Remission (CR)に分けて解析。IRが50%以上存在、CRの比率は経年的に増加。20)1年後の寛解維持予測モデルを作成。21)2005→2011年度、RA治療入院の頻度は減少、感染症・間質性肺炎・骨粗鬆症関連・悪性疾患関連入院は不変あるいは増加。22)NinJa2003~2011おけるRA患者の結核標準化罹患比(SIR)は3.99で、過去に報告したBio非投与患者のSIR 3.98と比較し有意な増加はなし。23)NinJa2003~2011おける新規悪性疾患全体のSIRは0.96であるが、悪性リンパ腫は4.01、女性の膀胱癌は2.80と高い。24)手術を要する四肢骨折は、罹病期間が長く手指の関節破壊は強いが身体障害の軽い高齢の女性に多く発生。25)NinJa2011では91例が死亡。平均死亡時年齢73.3歳。最多の死因は感染症。26)2011年度、患者1人当たりの年間抗リウマチ薬費用は平均約43万円、Bioが74.2%を占める。27)2008年度より罹病期間2年以内の患者の抗リウマチ薬費用の伸びが鈍化、2011年度には他の罹病期間の患者の約半分。28)高齢発症RA患者は、より早期から骨破壊が進行。29)HLA-DRB1*04, shared epitope (SE), DQB1*04は間質性肺病変(ILD)合併のリスクと負の関連を示し、DRB1*16, DR2血清型 (DRB1*15, *16), DQB1*06はILD合併と正の関連。MTX単独投与またはBioとの併用中に発症した薬剤誘発性ILDは、HLA-A*31:01と関連。
結論
2002年度に開始された全国規模の多施設共同RAデータベース(NinJa)が途切れることなく構築されてきたことは大きな成果である。NinJaは本邦におけるRAの現状を全国レベルで把握することができる唯一のデータベースである。2012年度現在、47のうち26都道府県から患者データを収集している。2013年度以降は47都道府県全ての医療施設からRA関連情報を収集したいと考えている。収集項目を常に再検討しつつ、国の規模で推進すべき疫学研究である。

公開日・更新日

公開日
2013-06-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201229014Z