関節リウマチの関節破壊機序の解明と関節破壊「ゼロ」を目指す治療法確立に関する研究

文献情報

文献番号
201229013A
報告書区分
総括
研究課題名
関節リウマチの関節破壊機序の解明と関節破壊「ゼロ」を目指す治療法確立に関する研究
課題番号
H23-免疫-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
田中 良哉(産業医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 川上 純(長崎大学 医学部)
  • 小池 隆夫(北海道大学 医学部)
  • 住田 孝之(筑波大学 医学部)
  • 竹内 勤(慶應義塾大学 医学部)
  • 三森 経世(京都大学 医学部)
  • 宮坂 信之(東京医科歯科大学 医学部)
  • 山中 寿(東京女子医科大学 医学部)
  • 山本 一彦(東京大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
17,480,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
関節リウマチ(RA)患者は約70万人を数え、特に日本人は関節破壊進行が急速・高度とされ、変形すると不可逆的で、身体機能の低下は必至である。機能不良に伴う社会的損失や関節置換術などによる多大なる医療費負担を生じている。生物学的製剤による治療が進歩した現在、関節破壊を生じない治療の標準化が急務である。また、一旦破壊された関節の再生、修復を目指した治療の開発も最重要課題である。そこで、本研究ではRAの関節破壊「ゼロ」を目指し、1)RAの関節破壊「ゼロ」を目指す治療法確立研究、2) 難治性RAの関節破壊の機序の解明、修復研究をメインテーマとして、基礎的・臨床的の重層的研究をオールジャパンで実施することを主目的とした。
研究方法
1) RA患者に対して保険診療内で実施できる関節破壊ゼロを目標とした治療ガイドラインを作成し、早期RA患者に対するZERO-J試験としてUMIN登録し、1年後の関節X線で総Sharp値(mTSS)変化を検証する試験を開始した。
2) RAの関節破壊関連因子を同定し、モデル動物を用いて関節破壊における役割を解明した。また、間葉系幹細胞を用いて関節破壊の再生・修復に関する研究を行った。
結果と考察
1)RAの関節破壊「ゼロ」を目指す治療法確立研究:平成23年度には、発症早期から保険診療内の強化療法により関節破壊を『ゼロ』にする治療の標準化を目指して治療ガイドラインを策定した。また、本治療指針を検証するために症例登録を開始した。平成24年度末まで約150名の症例が登録され、継続的な患者データベースの構築が進行中である。MTX開始3か月後のガイドライン基準判定時点へ到達した症例は91例で、MTXはこの間に14.2±5.7mg/週まで増量され、DAS28: 3.8±3.4、SDAI: 13.8±31.6、HAQ: 0.5±1.5まで改善した。51例はTNF阻害療法施行ガイドライン基準を満たさず高反応群に、その他はTNF阻害薬治療群20例、MTX群20例に振り分けられた。平成25年度には、ガイドラインに準拠して治療した患者の治療前、1年後に手足の関節X線から総Sharpスコアを算出し、関節破壊を評価して、関節破壊を『ゼロ』にできることを検証する。さらに、関節破壊制御や治療反応性に影響する因子を統計解析し、治療効率・経済的効率の高い治療指針を策定する。また、関節X線に加えて高精度画像検査による評価も実施する。さらに、IORRA, SAKURA, 長崎コホートにより関節破壊の危険因子を同定し、効率的に関節破壊ゼロを達成できる治療法を確立する。斯様な医療の標準化・効率化を徹底すれば、関節破壊制御・長期機能予後改善を可能とし、社会的損失や医療費高騰の抑制に資するはずである。 
2) 難治性RAの関節破壊の機序の解明、修復研究:平成24年度まで、関節破壊機序に関与する遺伝子多型の解析などにより、新規標的分子としてPADI4、TREM-1、RORγt等を同定し、動物モデルで解析を開始した。PADI4遺伝子除去マウスではヘルパーT細胞分化、濾胞性B細胞分化、形質細胞分化に障害があり、関節炎症・骨破壊が軽減した。Th17転写に必須のRORγt過剰発現マウスでは、自己免疫性関節炎の発症を抑制した。CIAマウスでは抗TREM-1L抗体がTNF産生抑制を介して治療効果を示した。平成25年度は、これらの分子を介する関節破壊機序を分子細胞学的、免疫学的観点から解明する。さらに、抗PADI4抗体、抗TREM-1/TREM-1L抗体等を用いて関節破壊を抑止する治療を目指した前臨床に繋がる研究を行う。一方、平成24年度までヒト間葉系幹細胞(MSC)から骨芽細胞への分化誘導系を確立した。また、CIAラットの関節近傍にナノファイバー播種MSCを移植すると関節炎と関節破壊が抑制され、さらに、ナノファイバー播種MSCはTGFβ産生誘導等を介して、骨芽細胞、軟骨細胞の分化誘導能、免疫抑制効果を有する事が示された。いずれも関節破壊に対する新規治療開発を最終目標とし、オールジャパンで取り組めば、世界に先駆けて関節破壊という難治性病態の制御に資するはずである。
結論
1)発症早期から保険診療内の強化療法により関節破壊を『ゼロ』にすることを目指した治療指針を策定し、治療指針の検証を目的として150症例を登録した(ZERO-J試験)。今後、1年後に手足の関節X線から総Sharpスコアを算出し、関節破壊を『ゼロ』にできることを検証する。2) 関節破壊に関与する遺伝子多型解析により、新規標的分子としてPADI4、TREM-1、RORγt等を同定し、動物モデルで解析を開始し、抗PADI4抗体、抗TREM-1/TREM-1L抗体等を用いて関節炎や関節破壊が阻止の前臨床試験を目指す。

公開日・更新日

公開日
2013-05-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201229013Z