文献情報
文献番号
201229005A
報告書区分
総括
研究課題名
アレルギー疾患感受性遺伝子であるヒスタミンH1受容体遺伝子の発現抑制作用を持つ天然物を用いる治療戦略
課題番号
H22-免疫-一般-005
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
福井 裕行(国立大学法人徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
研究分担者(所属機関)
- 武田 憲昭(国立大学法人徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
- 荻野 敏(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
- 水口 博之(国立大学法人徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
- 柏田 良樹(国立大学法人徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
- 根本 尚夫(国立大学法人徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
- 斎藤 博久(独立行政法人国立成育医療研究センター研究所)
- 中山 勝文(国立大学法人東北大学 加齢医学研究所)
- 有信 洋二郎(国立大学法人九州大学病院 遺伝子細胞療法部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
20,354,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
苦参に含まれるヒスタミンH1受容体(H1R)遺伝子発現抑制物質、(-)Maackiain((-)MKN)の分子薬理機構解明のために、H1R刺激によるH1R遺伝子発現亢進分子機構を解明する。
((-)MKN)の喘息病態抑制、感作成立過程抑制作用を明らかにするために、自然免疫駆動アレルギー炎症モデルを作成する。
カビアレルギーの発症メカニズムにおけるPKCδ/HSP90シグナルの関与を明らかにするために、(-)MKN、Quercetin(QCN)、及び、Apigenin(AGN)のβ-glucan刺激マクロファージ炎症応答に対する抑制効果について解析する。
喘息におけるHSP90の関与を明らかにするために、Celastrolの効果を喘息モデルマウスにて検証する。更に、皮膚炎の改善効果を期待する薬剤の評価を正確に行うためのin vitro皮膚炎モデルを構築する。
((-)MKN)の喘息病態抑制、感作成立過程抑制作用を明らかにするために、自然免疫駆動アレルギー炎症モデルを作成する。
カビアレルギーの発症メカニズムにおけるPKCδ/HSP90シグナルの関与を明らかにするために、(-)MKN、Quercetin(QCN)、及び、Apigenin(AGN)のβ-glucan刺激マクロファージ炎症応答に対する抑制効果について解析する。
喘息におけるHSP90の関与を明らかにするために、Celastrolの効果を喘息モデルマウスにて検証する。更に、皮膚炎の改善効果を期待する薬剤の評価を正確に行うためのin vitro皮膚炎モデルを構築する。
研究方法
1.PKC-δシグナルを、PKC-δのリン酸化と細胞内移行により測定した。H1R遺伝子転写調節因子の同定を行った。(-)MKNの標的分子同定を行った。鼻過敏症モデルラットによる症状とH1R遺伝子発現を調べた。
2.自然免疫型のアレルギー気道炎症モデルを用いて解析した。
3.マウス骨髄細胞より分化誘導したマクロファージをβ-1,3-glucanで刺激し、IL-6、TNF-αの上昇、PKC-δ、NF-κB、MAPK経路の活性化に対する(-)MKN、AGN、QCN、Celastrolの抑制効果を調べた。
4.喘息モデルマウスの気管支肺胞洗浄液中の好酸球、骨髄中の骨髄球系共通前駆細胞、顆粒球・単球系前駆細胞、好酸球前駆細胞の増加、及び、末梢血の白血球分画に対するCelastrolの抑制作用を調べた。
5.In vitroでの皮膚炎評価系として、3次元air-liquid interface共培養系を構築した。
2.自然免疫型のアレルギー気道炎症モデルを用いて解析した。
3.マウス骨髄細胞より分化誘導したマクロファージをβ-1,3-glucanで刺激し、IL-6、TNF-αの上昇、PKC-δ、NF-κB、MAPK経路の活性化に対する(-)MKN、AGN、QCN、Celastrolの抑制効果を調べた。
4.喘息モデルマウスの気管支肺胞洗浄液中の好酸球、骨髄中の骨髄球系共通前駆細胞、顆粒球・単球系前駆細胞、好酸球前駆細胞の増加、及び、末梢血の白血球分画に対するCelastrolの抑制作用を調べた。
5.In vitroでの皮膚炎評価系として、3次元air-liquid interface共培養系を構築した。
結果と考察
1.H1R遺伝子プロモーターは、領域A(2ヶ所のAP-1、1ヶ所のEts-1)、及び、領域B(PARP-1の活性化によるKu86/Ku70複合体の領域Bからの解離)によることが明らかとなった。
2.(-)MKNはHSP90に結合し、PKC-δのGolgi体移行を抑制することにより、H1R刺激によるH1R mRNAレベル上昇を抑制した。Celastrol(HSP90抑制薬)は、鼻過敏症モデルラットの症状改善、及び、H1R mRNAレベル上昇の抑制作用を示した。
3.鼻過敏症モデルラットの症状は、PKC-δシグナル、及び、新規シグナル抑制により高度に改善することを明らかにした(特許申請準備中)。
4.C57BL/6Nマウスにpapainを吸入させることによって、7日後を最大とするBALF中への好酸球優位の炎症細胞の増加が認められた。
5.カビ細胞壁成分、Curdlan刺激マクロファージにおけるIL-6、TNF-α産生は(-)MKN、AGN、QCNによって抑制された。Curdlan刺激マクロファージにおいて、AGNおよび(-)MKNはPKC-δ、ERKのリン酸化を抑制し、QCNはPKC-δのリン酸化、NF-κBの活性化を抑制した。HSP90阻害剤、CLSはCurdlanによるIL-6、TNF-α産生を抑制し、NF-κB、ERKの活性化を抑制した。
6.Celastrolの腹腔内投与により、気管支肺胞洗浄液中への好酸球浸潤は著明に抑制された。
2.(-)MKNはHSP90に結合し、PKC-δのGolgi体移行を抑制することにより、H1R刺激によるH1R mRNAレベル上昇を抑制した。Celastrol(HSP90抑制薬)は、鼻過敏症モデルラットの症状改善、及び、H1R mRNAレベル上昇の抑制作用を示した。
3.鼻過敏症モデルラットの症状は、PKC-δシグナル、及び、新規シグナル抑制により高度に改善することを明らかにした(特許申請準備中)。
4.C57BL/6Nマウスにpapainを吸入させることによって、7日後を最大とするBALF中への好酸球優位の炎症細胞の増加が認められた。
5.カビ細胞壁成分、Curdlan刺激マクロファージにおけるIL-6、TNF-α産生は(-)MKN、AGN、QCNによって抑制された。Curdlan刺激マクロファージにおいて、AGNおよび(-)MKNはPKC-δ、ERKのリン酸化を抑制し、QCNはPKC-δのリン酸化、NF-κBの活性化を抑制した。HSP90阻害剤、CLSはCurdlanによるIL-6、TNF-α産生を抑制し、NF-κB、ERKの活性化を抑制した。
6.Celastrolの腹腔内投与により、気管支肺胞洗浄液中への好酸球浸潤は著明に抑制された。
結論
鼻過敏症症状の主要シグナルはH1R/PKC-δ・HSP90/ERK/PARP-1/転写調節因子(AP-1, Ets-1, Ku86/Ku70複合体/H1R遺伝子発現亢進に至るシグナルであり、H1R遺伝子プロモーターは、領域A(AP-1、Ets-1)、及び、領域B(Ku70/Ku86複合体の解離)により調節される。(-)MKN、AGNはHSP90を標的分子とし、H1R遺伝子発現亢進を抑制する。抗ヒスタミン薬の薬効発現機構は、H1R遺伝子発現亢進に対する抑制作用であると考えられる。
鼻過敏症症状の高度改善のために、PKC-δシグナルに続く第二のシグナルの同定、それを抑制する天然物とその有効成分を同定した。
(-)MKNは苦参抽出物の作用と同様に、マウス喘息モデルにおいて、IL-4などのアレルギー性炎症関連サイトカインやKC/CXCL1などのケモカインの産生を抑制し、急性喘息の病態を軽減する可能性が考えられた。
苦参由来生理活性物質マーキアインはLPS刺激のマクロファージによる炎症性サイトカイン産生を抑制するが、そのメカニズムの一部はH1R経路の阻害による。
苦参は、分化過程における好酸球上へのCCR3発現を抑制した。また、ダニ抽出物誘導性皮膚炎の炎症も改善する可能性が示唆された。
鼻過敏症症状の高度改善のために、PKC-δシグナルに続く第二のシグナルの同定、それを抑制する天然物とその有効成分を同定した。
(-)MKNは苦参抽出物の作用と同様に、マウス喘息モデルにおいて、IL-4などのアレルギー性炎症関連サイトカインやKC/CXCL1などのケモカインの産生を抑制し、急性喘息の病態を軽減する可能性が考えられた。
苦参由来生理活性物質マーキアインはLPS刺激のマクロファージによる炎症性サイトカイン産生を抑制するが、そのメカニズムの一部はH1R経路の阻害による。
苦参は、分化過程における好酸球上へのCCR3発現を抑制した。また、ダニ抽出物誘導性皮膚炎の炎症も改善する可能性が示唆された。
公開日・更新日
公開日
2013-06-17
更新日
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