文献情報
文献番号
201229001A
報告書区分
総括
研究課題名
関節リウマチに対する生物学的製剤の作用機序、投与方法、治療効果等に関する研究
課題番号
H22-免疫-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
竹内 勤(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 小池 隆夫(北海道大学 医学部)
- 山本 一彦(東京大学 医学部)
- 山中 寿(東京女子医科大学)
- 西本 憲弘(和歌山県立医科大学/東京医科大学)
- 田中 良哉(産業医科大学 )
- 石黒 直樹(名古屋大学 医学部)
- 針谷 正祥(東京医科歯科大学)
- 津谷 喜一郎(東京大学 医学部 )
- 井田 弘明(久留米大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
28,980,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
高齢者に多い関節リウマチの治療は、メトトレキサートを初めとする強力な抗リウマチ薬に加えて2003年以降承認された生物学的製剤の導入によって、疾患活動性のコントロールは全体として改善傾向にある。先の厚生労働省研究班によって作成された寛解導入療法の体系化に関する研究によって治療目標は大きく引き上げられ、我が国においても臨床的寛解導入が現実的な治療目標となるなど、治療環境は劇的な変貌を遂げている。しかし、関節リウマチ治療の真の目標は、不可逆的な関節破壊による日常生活動作(Activity of Daily Living: ADL)の低下を防ぎ、これを正常の状態に保つ事にある。この点、我が国の生物学的製剤の導入は、発症8~10年とすでに関節破壊が進行した時点で導入されてきたため、関節炎を臨床的寛解に導入しても、関節破壊によるADL低下が残存するという課題があった。本研究では、生物学的製剤の導入時期とその適応症例の同定、標的の異なる製剤の選択とその予測などのテーマに関して、多面的に関節リウマチに対する生物学的製剤の使用に関するエビデンスを構築する事を目的とした。
研究方法
臨床統計学的アプローチ(コホート研究、臨床研究)
分子遺伝学的アプローチ(異なる分子標的の探索と製剤選択の個別化、炎症病態の新たな分子機序解析、網羅的遺伝子発現解析)
臨床免疫、生化学的アプローチ
医療経済学的アプローチ
分子遺伝学的アプローチ(異なる分子標的の探索と製剤選択の個別化、炎症病態の新たな分子機序解析、網羅的遺伝子発現解析)
臨床免疫、生化学的アプローチ
医療経済学的アプローチ
結果と考察
関節リウマチに対する生物学的製剤の最適な使用法を提示するため、多面的アプローチによって、それを構築するためのエビデンスが集積された。投与1年目の臨床的寛解は、TNF標的製剤で30-45%に、IL-6受容体標的、ならびにT細胞標的でそれぞれ40%を超える症例で達成可能であり、日本人RAにおいて臨床的寛解は、現実的な治療目標である事が示された。一方、これらエビデンスは、主として平均罹病期間5~10年の進行期RAに対すて構築されたエビデンスであり、今回、初めて罹病期間2~3年以内の早期RAに対する成績が明らかとなった。その関節破壊進行は進行期の5倍にも及び、それに対する対策が求められる。臨床的画像的、バイオマーカーによる評価法、ならびに効果予測に関するエビデンスも集積され、今回新たにアバタセプト寛解導入後の中止の可能性に関する新たな成績が明らかとなった。これらの情報を基に、個々の症例に適した生物学的製剤の使用法を構築する必要がある。
結論
生物学的製剤の有効性に関する日本人エビデンスが多く蓄積され、治療方針の決定に役立つ情報となった。MTXは、主としてIL-6産生を抑制する事、TNF標的製剤では、MTX併用で最大の有効性が発揮され、その効果は血中IL-6濃度低下と関連している事が明らかとなった。RAにおける主要な標的であるTNAαとIL-6は、それぞれ上下流は異なるものの共通の炎症カスケードに位置すると考えられ、両者を標的とする製剤の有効症例は、多くは重複している可能性が示唆される。一方、TNF標的製剤の有効性を規定する要因は血中トラフ値で、それは標的分子である血中TNFα濃度、投与製剤量、そして製剤クリアランスによっている事が明らかにされた。製剤クリアランスは、製剤の免疫療法や、Fc受容体機能と関連しており、クリアランスが高いFcガンマⅢb受容体機能的多型を有する症例で、注射時反応が多く、継続率が低い事が世界で初めて明らかにされた。この多型には人種差があり、遺伝的背景が、生物学的製剤の有効性や継続率に影響を及ぼす可能性が示唆される。
公開日・更新日
公開日
2013-05-17
更新日
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