文献情報
文献番号
201228015A
報告書区分
総括
研究課題名
革新的な動物モデルや培養技術の開発を通じたHBV排除への創薬研究
課題番号
H24-B創-肝炎-一般-016
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
茶山 一彰(広島大学 大学院医歯薬保健学研究院)
研究分担者(所属機関)
- 瀬谷司(北海道大学大学院)
- 加藤博己(京都大学ウイルス研究所)
- 立野知世((株)フェニックスバイオ)
- 山本卓(広島大学大学院)
- 田原栄俊(広島大学大学院)
- 丸澤宏之(京都大学大学院)
- Aly Hussein Hassan(国立感染症研究所)
- 阿部弘美(広島大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 B型肝炎創薬実用化等研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
95,239,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我々はヒトの免疫細胞とヒト肝細胞によるB型肝炎のマウスモデルの構築に成功した。この系ではB型肝炎ウイルス(HBV)感染肝細胞が樹状細胞とNK細胞により広範に除去される。さらに、ヒト肝細胞によるHBVの完全な継代培養系も構築した。本研究は,これら感染モデルあるいは細胞培養系を用いて、肝炎モデルの改良と感染肝細胞の排除に関する研究、HBV感染マウスと新規HBV培養系を用いた創薬研究、cccDNAの排除、転写制御に関する研究を中心に行う.
研究方法
肝炎モデルの改良と感染肝細胞の排除に関する研究:B型肝炎のマウスモデルを用い感染細胞が細胞性免疫により除去されるのに重要な役割を果たす因子を解明する。またT-cell, B-cellも含めたヒトのB型肝炎を再現するマウスモデルを作製する。さらに野生型HBV産生transgenic mouse、Transpozonを利用したHBV産生系、Cre-loxPを利用したHBV産生系を作製する。
HBV感染マウスと新規HBV培養系を用いた創薬研究:HBV感染キメラマウスと新規HBV感染・培養系を用い、レセプターを含めたHBVの肝細胞への接着から放出までの全ての段階で必要とされる宿主因子を次世代シーケンサーによる発現解析、microRNAの網羅的解析により同定する。感染増殖抑制とウイルス変異との関連を次世代シーケンサーで解析し、関連する因子を同定する。
cccNAの排除、転写制御に関する研究:cccDNAに結合可能なTALEを作製し、結合性、転写抑制性を検討する。増殖期と非増殖期にHBVと会合している宿主因子をCHIP法により解析し、ゲノム構造に違いがあるか否かを明らかにする。
HBV感染マウスと新規HBV培養系を用いた創薬研究:HBV感染キメラマウスと新規HBV感染・培養系を用い、レセプターを含めたHBVの肝細胞への接着から放出までの全ての段階で必要とされる宿主因子を次世代シーケンサーによる発現解析、microRNAの網羅的解析により同定する。感染増殖抑制とウイルス変異との関連を次世代シーケンサーで解析し、関連する因子を同定する。
cccNAの排除、転写制御に関する研究:cccDNAに結合可能なTALEを作製し、結合性、転写抑制性を検討する。増殖期と非増殖期にHBVと会合している宿主因子をCHIP法により解析し、ゲノム構造に違いがあるか否かを明らかにする。
結果と考察
肝炎モデルの改良と感染肝細胞の排除に関する研究:HBV plasmid のマウス肝細胞株への transfection、マウス個体を用いたhydrodynamics の両方でtype I interferon receptor (IFNAR) がHBVの複製阻害に働くことを証明した。一方、IPS-1, TICAM-1の感染阻害作用は僅かであった。DNA transfection の際 type I IFNが誘導されるが、大部分はSTING-TBK1 の経路に依存した。HBVが肝細胞で複製すればDNA依存性にIFNが誘導され、それがIFNAR経路の活性化を導いて感染防御に働くことが示唆された。NOD-scid マウスを用いた肝炎モデルではuPA-scidマウスを用いた劇症肝炎モデルでは生着しなかったT細胞の生着が認められた。miR-122, miR-22がHBs抗原の量と相関していること、さらにmiRNAの成熟に関係するArgonaute2 (Ago2)はHBV感染細胞内でHBc抗原、HBs抗原と共局在していることを明らかにした。uPA遺伝子欠失の見られないcDNA-uPA/SCIDマウスをホストマウスとしたキメラマウス(cDNA-uPA/SCIDキメラマウス)を作製、肝臓における薬物代謝酵素の遺伝子発現および活性を測定した。その結果、これらの発現及び活性は従来のuPA/SCIDキメラマウスと同等であることを確認した。薬剤誘導性に肝細胞特異的にCreタンパクを発現する遺伝子改変マウスと、CreによるLoxPの組換え作用によりHBV抗原を発現する遺伝子改変マウスを作製している。
HBV感染マウスと新規HBV培養系を用いた創薬研究:次世代シークエンサーを用いたB型肝炎患者の血液中マイクロRNAの網羅的解析を行うことによりHBVに特異的なmiRNAの発現変動を明らかにする目的で、健常人、低HBV患者、高HBV患者における血漿中エクソソームのマイクロRNAの発現を次世代シークエンサーで解析し、HBVのウイルス量にともない増加するmiRNAおよびHBVの感染の有無により変化するmiRNAを見いだした。
cccDNAの排除、転写制御に関する研究:HBVの増殖を抑制するシステムを確立するために、HBVのコアプロモーターに結合する人工タンパク質のTALEを設計・合成し、in vitroでの結合活性を調べた。その結果、転写因子の結合する配列に強く結合する4種類のTALEタンパク質について強い結合活性が確認された。
HBV感染マウスと新規HBV培養系を用いた創薬研究:次世代シークエンサーを用いたB型肝炎患者の血液中マイクロRNAの網羅的解析を行うことによりHBVに特異的なmiRNAの発現変動を明らかにする目的で、健常人、低HBV患者、高HBV患者における血漿中エクソソームのマイクロRNAの発現を次世代シークエンサーで解析し、HBVのウイルス量にともない増加するmiRNAおよびHBVの感染の有無により変化するmiRNAを見いだした。
cccDNAの排除、転写制御に関する研究:HBVの増殖を抑制するシステムを確立するために、HBVのコアプロモーターに結合する人工タンパク質のTALEを設計・合成し、in vitroでの結合活性を調べた。その結果、転写因子の結合する配列に強く結合する4種類のTALEタンパク質について強い結合活性が確認された。
結論
HBV培養系およびヒト肝細胞キメラマウスを用いて,肝炎モデルの改良と感染肝細胞の排除に関する研究、HBV感染マウスと新規HBV培養系を用いた創薬研究、cccDNAの排除、転写制御に関する研究の検討が可能となった。
公開日・更新日
公開日
2015-06-03
更新日
-