文献情報
文献番号
201228010A
報告書区分
総括
研究課題名
人工キメラ遺伝子と肝臓特異的な輸送担体の開発を基盤とした肝臓内HBV DNA不活化を目指した新規治療法の開発
課題番号
H24-B創-肝炎-一般-011
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
溝上 雅史(国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 片岡 一則(東京大学大学院医学研究科臨床以降学部門・工学系研究科マテリアル工学専攻)
- 中西 真(名古屋市立大学大学院医学研究科)
- 武冨 紹信(北海道大学大学院医学研究科外科学講座消化器外科学分野I)
- 田中 榮司(信州大学医学部)
- 星野 真一(名古屋市立大学大学院薬学研究科)
- 杉山 真也(国立国際医療センター 肝炎・免疫研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 B型肝炎創薬実用化等研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
166,667,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
B型肝炎ウイルス(HBV)は,その複製の鋳型となるHBVDNAをcovalently closed circular DNA(cccDNA)の形でミニゲノムとして肝細胞核内に留めることに加えて,ヒトゲノムにインテグレーションされるためHBVの完全排除は困難と考えられてきた.医薬品として使われる低分子化合物,抗体医薬品,最新のRNA干渉でも細胞核内のHBVDNAへはアプローチできない.
本研究では,その問題点を克服すべく新規遺伝子工学技術を応用することで,細胞核内のHBV DNAを不活化し,病態の進行のみならず,再活性化リスクの克服を目的とする.HBV複製の鋳型となるcccDNAとインテグレーションされたHBVDNAに対して,HBVDNA配列特異的に作用する人工キメラ遺伝子(Zinc Finger Nucelase,ZFNもしくはTAL Effector Nucleases,TALENs)を設計することでHBVDNAの切断と不活化することを目的とする.それにより,これまで困難とされていた細胞核内のHBVDNAを不活化し,HBVの持続感染を根本的な手段により解決へ導く.
本研究では,その問題点を克服すべく新規遺伝子工学技術を応用することで,細胞核内のHBV DNAを不活化し,病態の進行のみならず,再活性化リスクの克服を目的とする.HBV複製の鋳型となるcccDNAとインテグレーションされたHBVDNAに対して,HBVDNA配列特異的に作用する人工キメラ遺伝子(Zinc Finger Nucelase,ZFNもしくはTAL Effector Nucleases,TALENs)を設計することでHBVDNAの切断と不活化することを目的とする.それにより,これまで困難とされていた細胞核内のHBVDNAを不活化し,HBVの持続感染を根本的な手段により解決へ導く.
研究方法
HBVDNAに特異的な人工遺伝子の構築を行った.個人や遺伝子型に合わせた効果的なものを選択できるように選択を行った.人工遺伝子のin vitro実験系でHBV特異性を検証した.薬剤輸送システムとしては,ブロック共重合体を利用した高分子ナノデバイスによる肝臓特異的なDDSの開発を進めた.ZFN製造や輸送形態に関わるmRNAの安定化と効率的な発現機構を検討した.人工遺伝子由来のDSBと,一般的な紫外線由来のDSBを比較してZFNがHBVDNA切断に与える影響を細胞レベルで評価する実験系を構築した.B型肝炎由来の肝組織を手術材料等から収集,保存した.
結果と考察
HBVゲノム内に保存されている保存領域を抽出し,HBV遺伝子型に依存せずにZFN/TALENの結合が得られる領域を選び出した.その設計した領域に対して,人工遺伝子の合成を行い,その切断活性を酵母と哺乳細胞の実験系で検討したところ,十分な切断活性を確認した.このことから,人工遺伝子のHBV切断活性が認められた.
DDSについては,ポリエチレングリコールを応用した自己会合型の分子を合成した.その分子とDNA,RNAを共存させることでDNA等を内包したナノ粒子が形成されることを確認した.ナノ粒子をマウスに投与することで,肝臓で輸送遺伝子が発現していることを確認した.このことから,核酸の内包かが可能な分子の合成に成功したと考えられた.
ZFN/TALENの細胞への影響を評価するために,1細胞単位で細胞分裂を評価する実験系を確立した.DNAが切断された箇所に集積する蛋白(53BP1,γ-H2AX)を蛍光染色することで,切断箇所を定量的に観察する手法を確立した.DNA切断後に老化へ向かう細胞を定量的に観察するための染色手法を確立した.
外科手術後の切除肝臓を細胞レベルに分離し,細胞種ごとに保存するシステムを確立した.年間約50例の検体を保存する作業フローを確立した.取得した肝臓細胞から初代培養までのシステムを確立した.
ZFN/TALENの効果を評価する基準としてのHBコア関連抗原の有用性を明らかとした.HBVDNAとHBVRNAを併せて検出する方法を確立し,ZFN/TALENの評価方法として運用可能とした.
mRNAの安定化には,ポリA鎖が30塩基以上必要であることを明らかとした.5末端構造にアンチリバースキャップを用いることでその分解を抑制することが示された.mRNAを環状化することで通常のmRNA分解経路から回避させるために,プローブとリガーゼの処理により,分子内環状化を成功させた.
既に構築したZFNでのHBVDNA切断活性を哺乳細胞株を用いて,その中のcccDNAに対する切断活性を検証し,70%前後の切断活性を確認した.臨床検体中のcccDNA量を検証するために,手術切除片を用いて定量を実施したところ,0.04コピー/cellであることを明らかとした.ZFN蛋白質を大腸菌で発現条件の検討を進め,可溶性画分への目的蛋白の移行を進めるタグを選定した.
DDSについては,ポリエチレングリコールを応用した自己会合型の分子を合成した.その分子とDNA,RNAを共存させることでDNA等を内包したナノ粒子が形成されることを確認した.ナノ粒子をマウスに投与することで,肝臓で輸送遺伝子が発現していることを確認した.このことから,核酸の内包かが可能な分子の合成に成功したと考えられた.
ZFN/TALENの細胞への影響を評価するために,1細胞単位で細胞分裂を評価する実験系を確立した.DNAが切断された箇所に集積する蛋白(53BP1,γ-H2AX)を蛍光染色することで,切断箇所を定量的に観察する手法を確立した.DNA切断後に老化へ向かう細胞を定量的に観察するための染色手法を確立した.
外科手術後の切除肝臓を細胞レベルに分離し,細胞種ごとに保存するシステムを確立した.年間約50例の検体を保存する作業フローを確立した.取得した肝臓細胞から初代培養までのシステムを確立した.
ZFN/TALENの効果を評価する基準としてのHBコア関連抗原の有用性を明らかとした.HBVDNAとHBVRNAを併せて検出する方法を確立し,ZFN/TALENの評価方法として運用可能とした.
mRNAの安定化には,ポリA鎖が30塩基以上必要であることを明らかとした.5末端構造にアンチリバースキャップを用いることでその分解を抑制することが示された.mRNAを環状化することで通常のmRNA分解経路から回避させるために,プローブとリガーゼの処理により,分子内環状化を成功させた.
既に構築したZFNでのHBVDNA切断活性を哺乳細胞株を用いて,その中のcccDNAに対する切断活性を検証し,70%前後の切断活性を確認した.臨床検体中のcccDNA量を検証するために,手術切除片を用いて定量を実施したところ,0.04コピー/cellであることを明らかとした.ZFN蛋白質を大腸菌で発現条件の検討を進め,可溶性画分への目的蛋白の移行を進めるタグを選定した.
結論
HBVDNAをターゲットとした人工遺伝子の合成とそのアッセイ系,さらには副作用の評価システムを準備した.次年度以降で,人工遺伝子の機能と副作用の検証を哺乳細胞と動物実験により検証していく.
公開日・更新日
公開日
2015-06-03
更新日
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