文献情報
文献番号
201228007A
報告書区分
総括
研究課題名
B型肝癌における自然免疫の機能解明とその制御による発癌抑止法開発
課題番号
H24-B創-肝炎-一般-008
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 直也(東京大学 医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
- 横須賀 收(千葉大学 大学院医学研究院)
- 小池 和彦(東京大学医学部附属病院)
- 松田 浩一(東京大学 医科学研究所)
- 地主 将久(北海道大学 遺伝子病制御研究所)
- 室山 良介(東京大学 医科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 B型肝炎創薬実用化等研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
100,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
肝炎ウイルスによる肝発癌の抑止は肝臓病学の最重要課題である。我々はゲノムワイド関連解析(GWAS)を行い、C型肝癌においてMICAの遺伝子多型が肝発癌と関連していることを明らかにした。MICA遺伝子多型はB型肝癌とも関連していることを突き止めた。HBV感染によりMICA発現が誘導されるが、MICA遺伝子多型によりMICA発現量が異なり、その差が肝発癌リスクのみならず予後までも規定している。このことはすなわち、ウイルス感染肝細胞とNK細胞を中心とした自然免疫系との攻防がB型肝炎における肝発癌に深く関わっていることを示している。そこで、本研究ではB型肝炎ウイルス(HBV)による発癌における自然免疫系の役割を明らかにし、自然免疫系の制御、特にMICAの発現調節による肝発癌抑止法を開発することを目的とする。
研究方法
1. HBV感染の宿主因子の解析 2. HBVによる肝発癌に関与するMICAの発現調節機構の解明 3. HBV肝発癌に関与するMICAの発現調節薬剤探索 4. 肝癌関連遺伝子MICAのmicroRNAによる発現制御 5. 自然免疫応答制御に着目したB型肝炎感染を契機とした発癌機構の解明6. 肝発癌における自然免疫関与の解析
結果と考察
1. MICA遺伝子多型、sMICA値がB型肝癌の発症リスクと関連した。またsMICA高値肝癌は予後不良であった。2. MICA類似ncRNAが転写されていた。上清MICA濃度はmRNA発現量と正の相関を示した。3. 肝癌細胞の酪酸ナトリウム処理によりMICA mRNA上昇が観察された。小規模スクリーニングを行いMICAの発現を制御し得る薬剤候補を見出した。4. MICAの3’UTR内にmicroRNA-93および -106bが標的としうる配列を同定し、実際にmicroRNAの標的になることを確認した。5. NKG2Dは腫瘍内マクロファージでも特にある種のサブタイプに限局して認められた。NKG2D陽性マクロファージは、NK細胞と異なりリガンド陽性腫瘍細胞への細胞障害活性を認めなかった。6. HBe抗原はNF-κB上流に位置するRIPK2と相互作用し、NOD1-RIPK2-NF-κBシグナル伝達経路を介したNF-κBの活性化を抑制し、IL6産生を抑制した。
MICA遺伝子多型がMICAの発現制御に重要であった。一方、発癌リスクの関連においては、HCV陽性肝癌とHBV陽性肝癌とではリスクアレルが逆転していた。この原因として、MICAの切断の有無が関与すると推測された。酪酸ナトリウムにより、肝癌細胞株におけるMICA mRNA発現量上昇を観察した。そのHDAC阻害活性からヒストンのアセチル化を標的とした薬剤の利用可能性が示唆された。MICAの発現調節にはプロモーター活性だけではなく転写後調節、とくにmicroRNAによるmRNAの安定性調節もしくは蛋白翻訳効率の調節が重要であることが示唆された。MICAの発現量に応じてそのレセプターであるNKG2Dの結合量が変化することも証明されたため、実際にMICAの発現量を制御することが その後の免疫応答性をも制御することになるということが示され、感染細胞の排除・癌化細胞の排除にむけた細胞性免疫を駆動するのに有効な分子標的となりうることが示唆された。肝、腫瘍マクロファージにおいて、M2サブセットマクロファージに限局してNKG2Dは発現していた。またNKG2D陽性マクロファージはNK細胞と異なり、抗腫瘍細胞障害活性を認めず、他の免疫修飾機能が疑われた。HBe抗原がRIPK2と相互作用し、肝細胞インターフェロン、サイトカイン産生を抑制することを見出した。また、HBe抗原がRIPK2-NF-κB活性化シグナル伝達経路と相互作用することをから、この経路がHBV持続感染における創薬ターゲットになりうる可能性が示唆された。
MICA遺伝子多型がMICAの発現制御に重要であった。一方、発癌リスクの関連においては、HCV陽性肝癌とHBV陽性肝癌とではリスクアレルが逆転していた。この原因として、MICAの切断の有無が関与すると推測された。酪酸ナトリウムにより、肝癌細胞株におけるMICA mRNA発現量上昇を観察した。そのHDAC阻害活性からヒストンのアセチル化を標的とした薬剤の利用可能性が示唆された。MICAの発現調節にはプロモーター活性だけではなく転写後調節、とくにmicroRNAによるmRNAの安定性調節もしくは蛋白翻訳効率の調節が重要であることが示唆された。MICAの発現量に応じてそのレセプターであるNKG2Dの結合量が変化することも証明されたため、実際にMICAの発現量を制御することが その後の免疫応答性をも制御することになるということが示され、感染細胞の排除・癌化細胞の排除にむけた細胞性免疫を駆動するのに有効な分子標的となりうることが示唆された。肝、腫瘍マクロファージにおいて、M2サブセットマクロファージに限局してNKG2Dは発現していた。またNKG2D陽性マクロファージはNK細胞と異なり、抗腫瘍細胞障害活性を認めず、他の免疫修飾機能が疑われた。HBe抗原がRIPK2と相互作用し、肝細胞インターフェロン、サイトカイン産生を抑制することを見出した。また、HBe抗原がRIPK2-NF-κB活性化シグナル伝達経路と相互作用することをから、この経路がHBV持続感染における創薬ターゲットになりうる可能性が示唆された。
結論
MICA多型及び分泌型MICAが慢性B型肝炎及びHBV陽性肝癌患者の予後因子として有用である。薬剤探索システムの構築を完了し、プライマリー・スクリーニングを実施した。見出される薬剤は、MICA発現調節を介した抗肝癌剤開発に直結するものと期待される。MICA蛋白の発現量はmicroRNAおよびそのanti-senseの発現によって、一定の調節が可能であった。MICA蛋白量の調節は細胞性免疫調節を利用した肝発癌の予防・治療に応用しうる有望な方策と考えられた。NKG2D陽性マクロファージの存在を明らかにしたとともに、その機能が従来の抗腫瘍免疫活性能とは異なる可能性が示唆された。HBe抗原はNF-kBとIFNβプロモーターの上流に存在するRIPK2の発現を抑制し、RIPK2と相互作用した。
公開日・更新日
公開日
2015-06-03
更新日
-