文献情報
文献番号
199800116A
報告書区分
総括
研究課題名
社会生活の時間・空間的分析とその技法の開発
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
馬場 康維(統計数理研究所)
研究分担者(所属機関)
- 土屋隆裕(統計数理研究所)
- 岩永琢磨(一橋大学経済研究所)
- 大瀧慈(広島大学原爆放射能医学研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 統計情報高度利用総合研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
平成10(1998)年度
研究費
2,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
厚生省によって実施されている国民生活基礎調査を主たる分析の対象として社会生活の時間・空間的な分析を行い、あわせて時間・空間的分析の技法を開発することを目的として計画したものである。分析の対象としている国民生活基礎調査は保険、医療、年金、福祉、所得等、国民生活の基礎的事項を調査するもので、約25万世帯を調査客体としており、量的には十分なものである。この調査が時間・空間的な分析に必要な精度を確保するための標本設計、推定方式についても検討課題の一つに加えた。
研究の目標は下記に大別される。
1)健康指標に関わる研究
2)国民生活基礎調査の推計方法の検討
研究の目標は下記に大別される。
1)健康指標に関わる研究
2)国民生活基礎調査の推計方法の検討
研究方法
1) 健康指標に関わる研究
・ 国民生活基礎調査(平成4年、平成7年)を用いた。
・ 自覚症状についての質問項目について自覚症状ありと答えた調査客体を無作為に抽出し数量化III類を適用し、尺度構成を試みた
・ ストレスの原因に該当ありと答えた調査客体のデータを用い、地域、家族構成とストレスの関係の分析を行う。
・ 児童期(7~12歳)、青春期(16~18歳)、親の世代(40歳台)、祖父母の世代(70歳台)毎に自覚症状を集計し「うつ傾向の有無」、「呼吸器系症状の有無」を目的変数、世帯及び個人に関する因子を説明変数として、多重ロジスティック回帰分析を行った。
2) 国民生活調査の推計方法の検討
・ 地域別世帯業態別に、単純推定の標準誤差と現行の比推定の標準誤差を算出した。
・ 回収不能世帯の効果について検討した。
・ 国民生活基礎調査(平成4年、平成7年)を用いた。
・ 自覚症状についての質問項目について自覚症状ありと答えた調査客体を無作為に抽出し数量化III類を適用し、尺度構成を試みた
・ ストレスの原因に該当ありと答えた調査客体のデータを用い、地域、家族構成とストレスの関係の分析を行う。
・ 児童期(7~12歳)、青春期(16~18歳)、親の世代(40歳台)、祖父母の世代(70歳台)毎に自覚症状を集計し「うつ傾向の有無」、「呼吸器系症状の有無」を目的変数、世帯及び個人に関する因子を説明変数として、多重ロジスティック回帰分析を行った。
2) 国民生活調査の推計方法の検討
・ 地域別世帯業態別に、単純推定の標準誤差と現行の比推定の標準誤差を算出した。
・ 回収不能世帯の効果について検討した。
結果と考察
1)健康指標に関わる研究
a) 健康関連指標の構成
・ ストレス関連項目,疾病関連項目からなる一次元尺度の構成が可能であることが分かった。
b) 地域、家族構成とストレスの関係の分析
・ ストレスの原因として多いのは,市郡規模・世帯人員数にかかわらず,「自分の健康・病気」「仕事上のこと」「収入・家計・借金」であった。
・ ストレスの原因は大都市部と郡部では異なる。市町村規模別に見ると,「将来・老後の不安」は都市部ほどストレスの原因としてあげる人が多いのに対し,「自分や家族の健康・病気」は郡部ほど多い。
・ 一人世帯ほど「将来・老後の不安」「自分の老後の介護」「自分の健康・病気」といった項目がストレスの原因として挙げられている。
・ UNISCAL適用の結果,25項目のストレス原因項目から一次元尺度を構成できる4つの項目群が抽出された。例えば,「将来の老後の不安」「自分の老後の介護」「自分の健康・病気」が老後の健康の不安の尺度を与える一つのグループを形成する。
・ 祖父母,世帯主の父母,配偶者の父母は上記の老後の健康をストレスの原因としている。
c) 自覚症状に基づく世代別健康度の把握
・ 「うつ傾向の有無」については,「3世代世帯」において40歳台の男性を除く全ての世代で「うつ傾向有り」の危険度が低くなっており,特に,女性の場合顕著である。子供の世代に着目すると,児童期,青春期の何れにおいても母子家庭では危険度ありの傾向があるが,父子家庭ではこの傾向は検出できない。
・ 「呼吸器系症状の有無」については,児童期では,年齢が上がるとともにその危険度が低減する傾向がある。老年期では,居住地の人口が多いほどその危険度が高くなる傾向が見られる。「3世代世帯」は,ほぼ全世代にわたり危険度が低い。
2)国民生活基楚調査の推計方法の検討
・ 標準誤差については概ね単純推定の方が小さい。
・ 結果数値は,回収不能世帯の影響で過小推定になっている。
・ 600の項目について調べた結果,調査区単位で世帯数と相関が低いか負の相関がある項目(単独世帯に関する項目,高齢者世帯に関する項目等)で比推定の効果がないか、結果を歪めているものがある。逆に,正の相関がある項目(2人以上の世帯人員別世帯数等)では比推定が推定精度の向上に有効に働いている。
・ 単純推定では,回収不能世帯分の補正が可能である。
a) 健康関連指標の構成
・ ストレス関連項目,疾病関連項目からなる一次元尺度の構成が可能であることが分かった。
b) 地域、家族構成とストレスの関係の分析
・ ストレスの原因として多いのは,市郡規模・世帯人員数にかかわらず,「自分の健康・病気」「仕事上のこと」「収入・家計・借金」であった。
・ ストレスの原因は大都市部と郡部では異なる。市町村規模別に見ると,「将来・老後の不安」は都市部ほどストレスの原因としてあげる人が多いのに対し,「自分や家族の健康・病気」は郡部ほど多い。
・ 一人世帯ほど「将来・老後の不安」「自分の老後の介護」「自分の健康・病気」といった項目がストレスの原因として挙げられている。
・ UNISCAL適用の結果,25項目のストレス原因項目から一次元尺度を構成できる4つの項目群が抽出された。例えば,「将来の老後の不安」「自分の老後の介護」「自分の健康・病気」が老後の健康の不安の尺度を与える一つのグループを形成する。
・ 祖父母,世帯主の父母,配偶者の父母は上記の老後の健康をストレスの原因としている。
c) 自覚症状に基づく世代別健康度の把握
・ 「うつ傾向の有無」については,「3世代世帯」において40歳台の男性を除く全ての世代で「うつ傾向有り」の危険度が低くなっており,特に,女性の場合顕著である。子供の世代に着目すると,児童期,青春期の何れにおいても母子家庭では危険度ありの傾向があるが,父子家庭ではこの傾向は検出できない。
・ 「呼吸器系症状の有無」については,児童期では,年齢が上がるとともにその危険度が低減する傾向がある。老年期では,居住地の人口が多いほどその危険度が高くなる傾向が見られる。「3世代世帯」は,ほぼ全世代にわたり危険度が低い。
2)国民生活基楚調査の推計方法の検討
・ 標準誤差については概ね単純推定の方が小さい。
・ 結果数値は,回収不能世帯の影響で過小推定になっている。
・ 600の項目について調べた結果,調査区単位で世帯数と相関が低いか負の相関がある項目(単独世帯に関する項目,高齢者世帯に関する項目等)で比推定の効果がないか、結果を歪めているものがある。逆に,正の相関がある項目(2人以上の世帯人員別世帯数等)では比推定が推定精度の向上に有効に働いている。
・ 単純推定では,回収不能世帯分の補正が可能である。
結論
国民生活基礎調査の推計方式について分析した結果,概ね精度が保たれている。しかし,調査区単位で世帯数と相関がないか負の相関がある項目の精度の向上,回収不能の影響の補正等が必要であれば,今後検討の必要があろう。これらの精度の向上は母集団についての推計においては重要である。しかし,項目間の関係を分析し,健康指標を構成するという目的には現行でも特に問題はない。
国民生活基礎調査の再分析を行うことにより,ストレス関連尺度,健康関連尺度等の構成が可能であることが示された。これらの尺度を用いて,世帯構造,地域とストレスとの関係,世代,居住地と健康度との関係が見出された。これらの関連については,加齢効果,社会情勢の変化,生活環境の変化等,時間とともに変化するいくつかの要因を考慮した分析も必要である。詳細な分析は今後の課題としたい。
国民生活基礎調査の再分析を行うことにより,ストレス関連尺度,健康関連尺度等の構成が可能であることが示された。これらの尺度を用いて,世帯構造,地域とストレスとの関係,世代,居住地と健康度との関係が見出された。これらの関連については,加齢効果,社会情勢の変化,生活環境の変化等,時間とともに変化するいくつかの要因を考慮した分析も必要である。詳細な分析は今後の課題としたい。
公開日・更新日
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