健康危機関連統計の高度処理に関する研究

文献情報

文献番号
199800115A
報告書区分
総括
研究課題名
健康危機関連統計の高度処理に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
金藤 浩司(統計数理研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 越智義道(大分大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 統計情報高度利用総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
1,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
従来の厚生省における統計情報の公開方法とは別に、近年社会では緊急時の国民・地方自治体からの即時的な質の高い統計情報の提供の要望がある。本研究では、腸管出血性大腸菌O157等を原因とする食中毒の発生状況の健康危機管理に関して国民・地方自治体に厚生省が保有する情報をより迅速に伝達し、的確に状況を把握するための高度処理システム構築に向けた基礎的研究を目的とする。
研究方法
O157を原因とする食中毒の発生パターンは、データが完全に収集された時点では、それを寿命分布で記述することが可能である。本研究では、逆ガウス型分布を寿命分布として用いる。逆ガウス型分布は、食中毒の発生パターンを記述する寿命分布としては、対数正規分布やワイブル分布等よりも、分布の起源および推定量の性質において適切である。次に、厚生省のホームページから入手可能なO157情報を基に、その中に含まれる情報の種類と形態に関する調査を行い、基礎データの整理を行った。この情報では基本的には各保健所単位でのO157の発生情報が時間情報とともに記録されているが、数件の情報がまとめられた形で報告されていたり、保健所情報や時間情報の欠落などの欠測の問題がある。このため、当面の基礎試験では、保健所情報(その緯度、経度)が得られないデータについては各市町村役場の情報を用いて表示を行い、時間情報で欠測がある場合には前後情報からの補間を行い動的表示を試みた。同時に、その発生の国内での位置関係を把握するため日本の海岸線の緯度、経度情報を求め、この情報の表示についても検討した。さらに、当該動的グラフィカル表示システム(開発環境:Unix)で得られる情報を、アクセスする側の環境に依存しない形で交換するために、インターネット、特にWEBを利用する形態での通信試験を行った。
結果と考察
O157による食中毒の患者の発生パターンが逆ガウス型分布で記述可能であるかどうかの事前解析として、逆ガウス型分布確率紙の利用の有効性が確かめられた。また、平成8年度の比較的規模の大きいデータに基づき、発生した腸管出血性大腸菌O157による食中毒患者の発病日のデータを、原点が未知の逆ガウス型分布にあてはめ、食中毒の発生パターンの立ち上がり日(事象の発生日の推定値)の推定を行い、寿命分布の原点推定問題の適用の可能性を検討した。また、疾患の終息時点の予測問題についての検討と新たな解析手法構築の準備作業を行った。次に、統計情報の視覚化に関しては、動的なグラフィカルデータ解析システムについてO157関連情報を表示するために位置情報と時間情報の表示に関する設計を行い、インターネットを介して利用を行うための環境整備と基礎的な通信試験を行った。最後に、整理されたO157情報(その部分情報)を3次元表現することにより、その位置や時間における集積性を同定することの可能性と動的表示システムの拡張、データ数への対応、情報の表示形態等の拡張に関する設計方針を確認した。また、研究を発展させるためには、基礎情報として、より詳細なデータが必要である。そこで、使用可能なデータの確認等を行っている。
結論
本研究を遂行するため、厚生省が保有する腸管出血性大腸菌O157等の食中毒に関する統計情報、その他の関連する調査から得られる情報、および統計手法や可視化システム等を利用し、経年性・地域性を考慮した事象の発生パターン解析を試みその有効性が確認できた。次に、これらの統計情報の高度処理に適した新たな統計手法の開発に関する研究と同時に、統計情報の利用者が得られた解析結果を、視覚的に分かりやすく活用するための高度処理システムについての基礎的研究を行い、その実用の可能性が認められた。最後に、厚生省の
ホームページから入手可能なO157情報を基に、動的なグラフィカル表示に関する情報の収集・整理と基礎的な試験を行い、情報の表示形態と表示システムの基本設計およびその拡張に関する検討を行った。また、インターネットを用いた情報の交換に関する基礎試験を行い、通信速度の確保が可能であれば当該設計下での利用が可能であることが確かめられた。

公開日・更新日

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研究報告書(紙媒体)

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