移植肝へのC型肝炎ウイルス再感染阻害法の確立

文献情報

文献番号
201227026A
報告書区分
総括
研究課題名
移植肝へのC型肝炎ウイルス再感染阻害法の確立
課題番号
H23-肝炎-若手-010
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
渡利 彰浩(国立大学法人大阪大学 大学院薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 角田 慎一((独)医薬基盤研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝移植は肝細胞癌に対する根治療法として臨床的意義が極めて高いものの、本邦における肝細胞癌の90%はC型肝炎由来であることから、移植片に対するC型肝炎ウイルス(HCV)の再感染阻害が本邦の肝細胞癌治療における最重要課題の一つとなっている。最近、claudin (CL)-1がHCVの感染受容体であること、CL-1を標的としたHCVの感染阻害が報告され、CL-1を標的としたHCV 感染阻害戦略が提唱された。これらの背景を踏まえ、本研究は、当研究グループが所有するCL binderを用いた粘膜ワクチン、粘膜吸収促進法などの創薬研究技術、およびCL提示出芽バキュロウイルス (CL-BV)と遺伝子改変マウス等を融合したCL binder創製技術を有効活用し、現在唯一HCV感染阻害効果が実証されているCL-1 binderを創製することで、肝移植片に対するHCV再感染阻害法の開発を目的とする。平成23年度は、CL-2欠損マウス(CL-2提示BVを免疫)から回収した脾臓を用いscFvライブラリを構築したが、CL-1特異的に結合性を示すbinderの取得には至らなかった。そこで平成24年度は、前年度において明らかとなった問題点を克服するため、バキュロウイルスのエンベローブタンパク質であるgp64を発現させたgp64トランスジェニックマウスを利用することにより、新たなscFvライブラリを構築し、本ライブラリからCL-1 binderを取得することにした。
研究方法
gp64トランスジェニックマウスおよびCL1-BVを利用した一本鎖抗体 (scFv)ライブラリの作製を試みた。まず、抗原として出芽バキュロウイルスの膜蛋白質発現系を活用することでCL1-BVを作製し、gp64トランスジェニックマウスに免疫することにより、CLに対する抗体産生を誘導した。CL1-BV免疫マウスの脾臓をもとにscFvライブラリを構築し、CL-1 binderのスクリーニングを行った。
結果と考察
gp64トランスジェニックマウスにCL1-BVを免疫することにより、CL-1に対する抗体産生を誘導した。CL-1抗体産生誘導を行ったマウスの脾臓から新規ファージディスプレイscFvライブラリを構築し、CL-1 binderのスクリーニングを行ったところ、gp64には結合せずCL-1に結合性を示すファージを複数単離することに成功した。得られたCL-1結合性ファージのCL結合特異性を調べたところ、CL-1のみならず様々なCLに結合性を示すもの、CL-1特異的に結合性を示すものが存在することが明らかとなった。また、それぞれ異なった可変領域をもつクローンであることが確認された。
結論
本研究では、抗体に比して組織浸透性に優れ、製造コストの低いscFvに着目し、CL-1結合性scFv取得のため、gp64トランスジェニックマウスおよびCL1―BVを利用したCL1免疫scFvライブラリを作製し、本ライブラリからCL-1結合性scFv提示ファージを取得することに成功した。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201227026Z