免疫機能を保持したヒト肝細胞キメラマウスによる慢性肝炎モデル作出

文献情報

文献番号
201227024A
報告書区分
総括
研究課題名
免疫機能を保持したヒト肝細胞キメラマウスによる慢性肝炎モデル作出
研究課題名(英字)
-
課題番号
H23-肝炎-若手-007
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
紙谷 聡英(東海大学 創造科学技術研究機構)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
B型、C型肝炎ウイルス(HBV,HCV)の感染は免疫・炎症反応を介して慢性肝炎を発症し、肝硬変・肝癌の原因となる。HBV, HCVは種特異性から、マウス等の実験動物を用いた感染実験が困難である。近年開発された免疫不全ヒト肝キメラマウスでは、HBV, HCVのin vivoでの感染・増殖が可能だが、免疫細胞が欠損しており感染後に生じる慢性肝炎が再現されない。そこで本研究では、免疫系の完成していない胎生期や新生児期のマウス肝臓にヒト肝幹・前駆細胞を移植し、ヒト細胞をレシピエントの免疫系に自己と認識させることで免疫寛容を促す。これにより、免疫不全動物を使用せず免疫系を保持した状態でのヒト細胞の生着を可能としたキメラマウスを作成し、in vivoにおける肝炎ウイルスの感染・増殖に伴う炎症反応の再現系を構築する。患者由来のヒト繊維芽細胞を用いて、肝細胞誘導因子の遺伝子導入によりヒト肝前駆細胞を誘導しキメラマウス作成に使用する。
研究方法
1. ヒト繊維芽細胞からの肝前駆細胞の分化誘導および純化系の構築
 マウス細胞をモデルとして決定した肝細胞Direct Reprograming因子群を用いて、ヒト線維芽細胞からの肝前駆細胞誘導を行う。我々は既に、ヒトiPS細胞からの肝前駆細胞の純化・培養系を構築しており、同様の方法でDirectにReprogramingしたヒト線維芽細胞由来肝前駆細胞を培養する。
2. 肝障害誘導マウス胎児を用いた、ヒト肝前駆細胞の移植系の構築
マウスの胎児または新生児期肝臓に肝前駆細胞を移植し、ドナー肝細胞への置換を可能とする移植時期や肝障害の誘導時期を検討する。
 最終年度は、ヒト繊維芽細胞由来の肝前駆細胞を、マウス胎児肝臓へと移植した後に肝障害を誘導し、免疫系を保持した状態でドナーヒト肝細胞を生着・増殖可能な動物モデルの開発を行う。
結果と考察
肝前駆細胞への分化誘導を行う因子群の探索を行い、新規分化誘導因子の同定などを行った。特に平成24年度はマウス肝臓由来肝前駆細胞の初代培養系を用いた網羅的なスクリーニング系によって、肝機能を上昇させる複数の候補遺伝子を同定した。現在、これらの因子が線維芽細胞からのダイレクトリプログラミングの効率を上昇させるか検討を行っている。またヒトiPS細胞由来細胞をソースとして、ヒト肝前駆細胞の増殖に必要な培養系の効率化を行っている。
結論
1.既知因子であるHNF4alpha、FoxA3に加えて新たな肝細胞分化誘導因子を同定した。
 2.ヒトiPS細胞由来の肝幹・前駆細胞の純化・培養系を構築し、特異的表面抗原マーカーとしてCD13およびCD133を同定するとともに、培養条件の検討(シグナル伝達阻害剤の必要性など)を行った。
 3.マウス胎児・新生児への移植系構築のために、マウス生体由来の肝幹・前駆細胞の肝臓直接および眼底静脈経由の移植を行った。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201227024Z