B型肝炎ウイルス感染の病態別における宿主因子等について、網羅的な遺伝子解析を用い、新規診断法及び治療法の開発を行う研究

文献情報

文献番号
201227021A
報告書区分
総括
研究課題名
B型肝炎ウイルス感染の病態別における宿主因子等について、網羅的な遺伝子解析を用い、新規診断法及び治療法の開発を行う研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H23-肝炎-一般-005
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
徳永 勝士(国立大学法人東京大学 大学院医学系研究科人類遺伝学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 溝上 雅史(国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター・肝臓病学)
  • 五條堀 孝(国立遺伝学研究所生命情報・DDBJ研究センター・情報生物学、集団遺伝学)
  • 脇田 隆字(国立感染症研究所ウイルス第二部・ウイルス学・肝臓病学)
  • 八橋  弘(国立病院機構長崎医療センター、臨床研究センター/内科、肝臓病学)
  • 松本 晶博(信州大学医学部付属病院 消化器内科・肝臓病学)
  • 横須賀 收(千葉大学大学院医学研究院・腫瘍内科学)
  • 持田 智(埼玉医科大学 消化器内科・肝臓内科・肝臓病学)
  • 小池 和彦(東京大学大学院医学系研究科消化器内科・肝臓病学)
  • 坂元 亨宇(慶應義塾大学医学部・腫瘍病理学)
  • 武冨 紹信(北海道大学大学院医学研究科・消化器外科学分野)
  • 松田 浩一(東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター・人類遺伝学)
  • 西田 奈央(国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター・ゲノム科学)
  • 宮寺 浩子(東京大学大学院医学系研究科人類遺伝学)
  • 本多 政夫(金沢大学医薬保健研究域保健学系・肝臓病学)
  • 間野 修平(統計数理研究所・数理・推論研究系・統計学)
  • 鈴木 哲朗(浜松医科大学医学部感染症学講座・ウイルス学)
  • 田中 靖人(名古屋市立大学大学院医学研究科・肝臓病学)
  • 黒崎 雅之(武蔵野赤十字病院・ 消化器科・肝臓病)
  • 日野 啓輔(川崎医科大学・肝胆膵内科学・肝臓病学)
  • 坂本 直哉(北海道大学大学院医学研究科・消化器内科分野1)
  • 楠本 茂(名古屋市立大学大学院医学研究科・腫瘍・免疫内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
51,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HBV持続感染、HBV関連肝癌、HBV再活性化、HBV重症化・劇症化、薬剤への応答性に関連する宿主遺伝因子を網羅的に探索する。

研究方法
1. 試料および臨床情報収集: 全国的な試料収集を実現し、詳細な臨床情報と共にデータベース化して管理するシステムを構築する。
2. ゲノム解析・機能解析: (1) AXIOM Genome-Wide ASI ArrayおよびGenome-Wide Human SNP Array6.0を用いて、病態別にゲノムワイド関連解析(GWAS)を実施する。 (2) 慢性肝炎・肝癌発症に関わる遺伝子群のネットワーク解析を実施し検証する。 (3) B型肝炎慢性化に感受性・抵抗性および中立性アリルの組換えHLA-DPタンパク質の発現系を構築する。
3. 統計解析・情報: 得られたゲノム多型・臨床データを活用し、バイオインフォマティクス・統計解析を実施すると共に、交互作用解析に用いるアルゴリズムを検討する。
4. ウイルス因子: HBs抗原陽性の肝がん患者検体、および年齢一致非肝がん患者検体について、ウイルス遺伝子配列を決定し、肝がん特異的変異を検索した。
結果と考察
1: サンプル収集から解析までを効率的に行うシステムを構築し、日本人・韓国人・香港人・タイ人について検体収集を実施した。
2-1: 420人の健常者試料を対象として、3種のゲノムワイドSNP解析プラットフォームによるタイピングを実施し、精度の高いimputationシステムを構築した。
2-2: B型慢性肝炎、HBV排除群および健常対照群のGWASによりHLA-DPA1/HLA-DPB1遺伝子がB型肝炎の慢性化に加えてB型肝炎ウイルスの排除にも関与する事を報告した。
2-3: MICA遺伝子多型及び分泌型MICA分子とHBV陽性肝癌(HBV-HCC)の発症リスクや予後との関連を検討した。MICA多型がHBV-HCCの発症リスク、および可溶化sMICA値と関連し、またsMICA高値の肝癌では予後が不良であることを報告した。
2-4: 中国のグループが報告したKIF1Bと癌化の関連について、日本人、韓国人および香港人で検証したが、いずれの集団でも再現されなかったことを報告した。
2-5: HLA-DPアリルの安定発現株を作成し、HLA-DPタンパク質の細胞表面発現を確認し、さらにHLA-ペプチド結合測定系の種々の条件検討を行い、反応条件を最適化した。
2-6: 日本人、韓国人、香港人、タイ人の健常者群、HBV患者群、ウイルス排除群について検体収集を実施し、HLA-DPA1/DPB1のタイピングを行なった。関連解析の結果、先行研究で報告されたHLA-DBP1*05:01, *04:02に加えて2個のアリルでも関連を確認した。
2-7: ネットワーク解析により、HBV陽性肝癌の遺伝子発現は細胞増殖群が多く、免疫応答群が少ない傾向が認められた。またB型慢性肝炎に関連する遺伝子発現クラスターは、炎症に関わる遺伝子群のほか、DNA修飾に関わる遺伝子群であった。
3:臨床データとSNPタイピングデータを用いて交互作用の解析手法を検討し、その有用性を評価した。
4: HBeAg陽性およびHBsAg陽性キャリアや、ラミブジン投与B型肝炎患者のHBVゲノム配列を解析した。また、HBs抗原陽性の肝がん患者と、年齢を一致させた非肝がん患者を対象として、ウイルス遺伝子の配列解析を行った。
結論
 収集されたサンプルは2013年3月時点で、日本、韓国、香港、タイを合わせて約3,400検体にのぼる。これらについてGWASやGWAS結果の検証を行なうと共に、HLA多型解析も実施し、詳細に検討する。HLA-DPについては組換えタンパク発現系の構築も進んでおり、抗原ペプチドとの結合性解析を予定している。高精度imputationシステムの構築により、これまで別々のプラットフォームで取得したデータを全て用いた高精度な解析が可能になる。既にB型肝炎の慢性化・ウイルス排除や肝癌について新規遺伝要因を報告しているが、このシステムを用いた再解析により、新規の遺伝要因を同定する可能性も期待される。さらに、遺伝子ネットワーク解析により同定された遺伝子群、ウイルスゲノム配列中の変異データをGWASデータと組み合わせた新たな解析も計画している。これらの成果により病態機序の理解が進み、治療法の開発に役立つことが期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201227021Z