文献情報
文献番号
201227020A
報告書区分
総括
研究課題名
ウイルス性肝疾患患者の食事・運動療法とアウトカム評価に関する研究
課題番号
H23-肝炎-一般-004
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
森脇 久隆(岐阜大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 西口 修平(兵庫医科大学)
- 村上 啓雄(岐阜大学 大学院医学系研究科 )
- 加藤 昌彦(椙山女学園大学 生活科学部 )
- 福澤 嘉孝(愛知医科大学 大学院医学研究科 )
- 水田 敏彦(佐賀大学 医学部)
- 海堀 昌樹(関西医科大学)
- 清水 雅仁(岐阜大学 医学部附属病院 )
- 白木 亮(岐阜大学 医学部附属病院 )
- 永田 知里(岐阜大学 大学院医学系研究科 )
- 岡本 康子(浜松医療セ ンター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
25,650,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
慢性ウイルス性肝疾患とくに肝硬変は高い頻度で蛋白・エネルギー栄養障害を合併し、生命予後や生活の質(QOL)を悪化させる。これに対応して最近の肝硬変診療ガイドライン(日本消化器病学会2010年、他)は蛋白・エネルギー栄養障害に対する具体的な推奨を記載した。しかしこれらのガイドラインに用いられたエビデンスの刊行は2005-7年、患者リクルートは1995-2000年であり、既に10年以上が経過した。この間に患者栄養状態の変化が示唆され、現行ガイドラインの再検討が求められている。本研究は先ず現在の肝硬変患者における栄養状態を再評価し、新たな推奨の根拠とすることを目的とした。
研究方法
共同研究:班員各施設において肝硬変患者の栄養状態を評価し、計300例を目標症例数とした。蛋白栄養状態は血清アルブミン、上腕筋周囲、エネルギー栄養状態は間接熱量測定、体格指数(BMI)、上腕周囲径、上腕三頭筋部皮下脂肪厚を指標とした。
結果と考察
共同研究:欠損データのない294例を集積し、以下の解析結果得、刊行した。
1. 蛋白栄養状態は1995年の調査と比較し有意の変動が無い。
2. エネルギー栄養状態は、protein-energy malnutrition, energy malnutritionのいずれも1995年に比べ有意に減少した。逆に肥満を有する肝硬変患者は1995年の18%から、今回33%まで増加していることが明らかとなった。
3. 1,2を合わせ現在の肝硬変患者では蛋白・エネルギー低栄養状態(30%)とともに、サルコペニア肥満も25~31%存在することが明らかとなった。従って従来、蛋白に重点が置かれていた栄養評価に加えエネルギー栄養評価の重要性が重みを増した。またエネルギー栄養過剰を有する患者には、栄養指導に加え、安全性に配慮した運動療法の必要性があることを提言する。
個別研究:
西口研究分担者は慢性肝疾患患者の詳細な栄養評価により、近年の患者はメタボリック症候群の影響を強く受けていることを明らかにした。また従来より用いられてきた血清アルブミン濃度のカットオフ3.5g/dlは3.9g/dlに、非蛋白呼吸商のカットオフも0.85から0.88にシフトしている可能性を指摘した。
加藤研究分担者は慢性肝疾患患者における各種身体計測指標とQOLとの関連を検討し、患者QOLは骨格筋栄養指標とくに握力と最も高い相関を示すことを見出した。筋肉量のみでなく筋肉の質にも留意すべきことを示す重要な知見である。
水田研究分担者は肝硬変患者の運動処方安全域をステップ台昇降運動負荷と血清乳酸濃度を利用して実測し、2.89‐4.00Metsの値を得た。運動処方の安全性を担保する極めて重要なデータである。
海堀研究分担者は慢性肝疾患患者に対する運動処方の実践的効果を肝硬変患者(肝がん手術例)52例で検討し、6か月の期間における有効性を実証した。
清水研究分担者は肥満モデル動物が肝発癌に高い感受性を示し、分岐鎖アミノ酸やレチノイドなど栄養関連介入が特異的な抑制効果を発揮することを解明した。
白木研究分担者はライフコーダを用いて慢性肝疾患患者の日常運動量を計測し、肥満症例では非肥満症例に比し有意にエネルギー摂取量が多く、運動量が低いことを証明し、栄養指導・運動処方両者の重要性を確認した。またエネルギー栄養指標として血清遊離脂肪酸濃度(660μEq/L)が間接熱量測定を代替し得ることを見出した。
岡本研究分担者は食事とBCAA製剤を組み合わせたメニュー資料の試案を作成し、テスト運用に入った。
考察:肝硬変患者の栄養は、低蛋白栄養状態に著変が無い一方、エネルギー栄養が充足、一部は過剰(肥満)にシフトした。特に後者についてはサルコペニア肥満の合併という新たな問題点を明示することができた(全体の25~31%)。
肥満が肝硬変の病態進展と、発癌リスクに寄与することは良く知られている。従って従来の蛋白・エネルギー栄養サポートから、少なくとも30%の症例ではエネルギー過剰対策を考慮する必要がある。具体的には推奨メニューの改変と運動処方の導入である。これらのうち少なくとも運動処方については、安全域と6か月の中期効果を確認できた。食事メニューについても順調に準備が進行している。
1. 蛋白栄養状態は1995年の調査と比較し有意の変動が無い。
2. エネルギー栄養状態は、protein-energy malnutrition, energy malnutritionのいずれも1995年に比べ有意に減少した。逆に肥満を有する肝硬変患者は1995年の18%から、今回33%まで増加していることが明らかとなった。
3. 1,2を合わせ現在の肝硬変患者では蛋白・エネルギー低栄養状態(30%)とともに、サルコペニア肥満も25~31%存在することが明らかとなった。従って従来、蛋白に重点が置かれていた栄養評価に加えエネルギー栄養評価の重要性が重みを増した。またエネルギー栄養過剰を有する患者には、栄養指導に加え、安全性に配慮した運動療法の必要性があることを提言する。
個別研究:
西口研究分担者は慢性肝疾患患者の詳細な栄養評価により、近年の患者はメタボリック症候群の影響を強く受けていることを明らかにした。また従来より用いられてきた血清アルブミン濃度のカットオフ3.5g/dlは3.9g/dlに、非蛋白呼吸商のカットオフも0.85から0.88にシフトしている可能性を指摘した。
加藤研究分担者は慢性肝疾患患者における各種身体計測指標とQOLとの関連を検討し、患者QOLは骨格筋栄養指標とくに握力と最も高い相関を示すことを見出した。筋肉量のみでなく筋肉の質にも留意すべきことを示す重要な知見である。
水田研究分担者は肝硬変患者の運動処方安全域をステップ台昇降運動負荷と血清乳酸濃度を利用して実測し、2.89‐4.00Metsの値を得た。運動処方の安全性を担保する極めて重要なデータである。
海堀研究分担者は慢性肝疾患患者に対する運動処方の実践的効果を肝硬変患者(肝がん手術例)52例で検討し、6か月の期間における有効性を実証した。
清水研究分担者は肥満モデル動物が肝発癌に高い感受性を示し、分岐鎖アミノ酸やレチノイドなど栄養関連介入が特異的な抑制効果を発揮することを解明した。
白木研究分担者はライフコーダを用いて慢性肝疾患患者の日常運動量を計測し、肥満症例では非肥満症例に比し有意にエネルギー摂取量が多く、運動量が低いことを証明し、栄養指導・運動処方両者の重要性を確認した。またエネルギー栄養指標として血清遊離脂肪酸濃度(660μEq/L)が間接熱量測定を代替し得ることを見出した。
岡本研究分担者は食事とBCAA製剤を組み合わせたメニュー資料の試案を作成し、テスト運用に入った。
考察:肝硬変患者の栄養は、低蛋白栄養状態に著変が無い一方、エネルギー栄養が充足、一部は過剰(肥満)にシフトした。特に後者についてはサルコペニア肥満の合併という新たな問題点を明示することができた(全体の25~31%)。
肥満が肝硬変の病態進展と、発癌リスクに寄与することは良く知られている。従って従来の蛋白・エネルギー栄養サポートから、少なくとも30%の症例ではエネルギー過剰対策を考慮する必要がある。具体的には推奨メニューの改変と運動処方の導入である。これらのうち少なくとも運動処方については、安全域と6か月の中期効果を確認できた。食事メニューについても順調に準備が進行している。
結論
最近10-15年間における肝硬変患者の栄養状態変化を解明した。蛋白栄養状態に有意の変化は無い一方、エネルギー栄養状態は明らかに不足から充足・過剰側にシフトし、新たにサルコペニア肥満の問題が浮上した。また患者個々におけるエネルギー栄養評価の重要性が高まり、血清遊離脂肪酸濃度が有力なツールであることを証明した。さらに適切な運動指導確立が緊急の課題であり、4エクササイズ/週の有効性・安全性を確認した。
公開日・更新日
公開日
2015-06-03
更新日
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