文献情報
文献番号
201227019A
報告書区分
総括
研究課題名
ゲノムワイド関連解析を用いた革新的な肝移植後肝炎ウイルス再感染予防・治療法の確立
課題番号
H23-肝炎-一般-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
前原 喜彦(九州大学 医学研究院)
研究分担者(所属機関)
- 溝上 雅史(独立行政法人国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
- 江口 晋(長崎大学 大学院医歯学総合研究科)
- 川岸 直樹(東北大学 病院)
- 具 英成(神戸大学 医学研究科)
- 猪股 裕紀洋(熊本大学 大学院生命科学研究部)
- 古川 博之(旭川医科大学 医学部)
- 矢永 勝彦(東京慈恵会医科大学 医学部)
- 國土 典宏(東京大学 医学系研究科)
- 島田 光生(徳島大学 ヘルスバイオサイエンス研究部)
- 北川 雄光(慶應義塾大学 医学部)
- 藤原 俊義(岡山大学 医歯薬学総合研究科)
- 永野 浩昭(大阪大学 医学系研究科)
- 調 憲(九州大学 医学研究院)
- 大段 秀樹(広島大学 医歯薬学総合研究科)
- 竹内 正弘(北里大学 薬学部)
- 赤澤 宏平(新潟大学 医歯学総合病院)
- 森田 智視(横浜市立大学 附属市民総合医療センター)
- 山中 竹春(独立行政法人国立がん研究センター東病院)
- 武冨 紹信(北海道大学 医学研究科)
- 副島 雄二(九州大学大学院 医学研究院)
- 池上 徹(九州大学 病院)
- 池田 哲夫(九州大学 医学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
18,456,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
肝移植後C型肝炎再発に対する予防・治療方法は非常に多様である。多施設から数百例の臨床データを集積することで、C型肝炎に対する生体肝移植成績、摘脾術を加えるか否か、免疫抑制剤の投与方法、インターフェロン治療のタイミングと使用する製剤、抗ウイルス治療の成績等を明らかにできる。多施設から提供された組織からIL28Bの遺伝子多型を解析することで、我が国における肝移植患者のIL28Bの遺伝子多型の分布割合と、インターフェロン治療の効果の関係を解明することができる。これによりC型肝炎に対する生体肝移植後インターフェロン治療の効果を予測し、その適応を判断することができる。肝移植後の治療(インターフェロン)を含む、新たな肝炎克服治療指針の確立が期待できる。肝移植の最大の課題は肝炎ウイルスの再感染予防・治療である。ゲノムワイド関連解析を用いた革新的な肝移植後肝炎ウイルス再感染予防・治療法を確立することにより、難治性肝炎再発に対して新たな治療法の開発へと繋がる可能性がある。
研究方法
我々はこれまでに肝移植症例において、Donor、RecipientのSNPが移植後のIFN治療効果に有意に相関することを示してきた。この結果を臨床応用していくには、多施設共同研究を行い、IL28B遺伝子変異解析が肝移植後IFN治療の効果予測において有用であることを確実に証明する必要があり、エビデンスの高い日本発の臨床研究結果を得るために多施設共同研究を行う。
研究代表者及び分担者所属施設から、C型肝炎に対する肝移植症例の臨床データは九州大学に、DNA含有組織、血液は第三者DNA抽出施設で回収、DNAを抽出し九州大学及び国際医療センターへと送付し、シークエンスを行うことよりDonor、RecipientのIL28BのSNPがMajorあるいはMinorであることが判定可能となる。各施設より回収したインターフェロン治療効果のデータベースを参照し、IL28BのSNPが治療効果とどのように相関するかを多数症例にて判定する。
研究代表者及び分担者所属施設から、C型肝炎に対する肝移植症例の臨床データは九州大学に、DNA含有組織、血液は第三者DNA抽出施設で回収、DNAを抽出し九州大学及び国際医療センターへと送付し、シークエンスを行うことよりDonor、RecipientのIL28BのSNPがMajorあるいはMinorであることが判定可能となる。各施設より回収したインターフェロン治療効果のデータベースを参照し、IL28BのSNPが治療効果とどのように相関するかを多数症例にて判定する。
結果と考察
臨床データベースの解析から、506例のC型肝炎に対する生体肝移植の後、376例にIFN治療が導入され、341例がVRに、144例がSVRに至ったことが判明した。VR率、SVR率はそれぞれ64.1%、38.3%であった。またIFN製剤は60.4%の症例でPeg-IFNα2b、28.9%の症例で通常型IFN、10.7%の症例でPeg-IFNα2aが使用されていた。治療開始時期及び治療量の設定は施設によりそれぞれであった。C型肝炎に対する移植後生存率は、5年、10年後でSVR例ではそれぞれ92.4%、82.3%、非SVR例でそれぞれ70.0%、62.2%(p<0.001)であり、SVRが患者生存率に大きく関わっていることが判明した。対象患者に於いては73.7%の症例がTT型のIL28B遺伝子多型をもち、それ以外のTGあるいはGG型はそれぞれ25.5%、0.8%であった。Donor、RecipientのIL28B遺伝子多型がTTのものでは有意にSVR率が高率であったが、TGあるいはGGのものではSVR率は非常に低値にとどまった。
現在までに得られた成果の重要なポイントは、C型肝炎に対して生体肝移植を行った後のインターフェロンの治療効果予測にはDonor、Recipient両者のIL28Bのタイプがメジャー/メジャー(TT)である必要があるということである。これは肝移植の適応を判断する上で非常に重要となる。すなわち、肝移植後の生存率は、非代償性肝硬変のRecipientの状態が、比較的良好状態で肝移植術を施行した方が明らかに高い(生存率)ことが分かっているが、この場合Donorのリスク等を考えると、肝移植後の肝炎制御率が大きく肝移植の適応判断に関わってくる。IL-28Bがメジャー/メジャーであれば、より積極的に肝移植を行い、インターフェロン治療を行うことが、患者QOLの向上、医療費の抑制に繋がることが予想される。逆に、IL28Bにマイナー要素が含まれていた場合は、肝移植後インターフェロン治療が困難になることが予想され、そのため例え肝硬変により非常に悪い状態であったとしても、Donorのリスクやその後のグラフト機能を考慮すると肝移植を適応としないという判断も行える可能性がある。多施設からの検体を用いた検討によりこの観察結果がuniversalなものであるかは検証中だが、本研究により得られる結果から、肝移植適応の大きな判断材料となる指針が得られる可能性が高い。
現在までに得られた成果の重要なポイントは、C型肝炎に対して生体肝移植を行った後のインターフェロンの治療効果予測にはDonor、Recipient両者のIL28Bのタイプがメジャー/メジャー(TT)である必要があるということである。これは肝移植の適応を判断する上で非常に重要となる。すなわち、肝移植後の生存率は、非代償性肝硬変のRecipientの状態が、比較的良好状態で肝移植術を施行した方が明らかに高い(生存率)ことが分かっているが、この場合Donorのリスク等を考えると、肝移植後の肝炎制御率が大きく肝移植の適応判断に関わってくる。IL-28Bがメジャー/メジャーであれば、より積極的に肝移植を行い、インターフェロン治療を行うことが、患者QOLの向上、医療費の抑制に繋がることが予想される。逆に、IL28Bにマイナー要素が含まれていた場合は、肝移植後インターフェロン治療が困難になることが予想され、そのため例え肝硬変により非常に悪い状態であったとしても、Donorのリスクやその後のグラフト機能を考慮すると肝移植を適応としないという判断も行える可能性がある。多施設からの検体を用いた検討によりこの観察結果がuniversalなものであるかは検証中だが、本研究により得られる結果から、肝移植適応の大きな判断材料となる指針が得られる可能性が高い。
結論
現状に於いて、Donor、RecipientのIL-28BのSNPを測定することにより、C型肝炎に対する肝移植後のインターフェロン感受性を概ね予測することが可能である。
公開日・更新日
公開日
2015-06-03
更新日
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