肝移植後C型肝炎に対する治療法の標準化を目指した臨床的ならびに基礎的研究

文献情報

文献番号
201227018A
報告書区分
総括
研究課題名
肝移植後C型肝炎に対する治療法の標準化を目指した臨床的ならびに基礎的研究
課題番号
H23-肝炎-一般-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
上本 伸二(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 千葉 勉(京都大学 医学研究科)
  • 下遠野 邦忠(独立行政法人国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
  • 森 正樹(大阪大学 医学系研究科)
  • 大段 秀樹(広島大学 医歯薬学総合研究科)
  • 太田 哲生(金沢大学 医薬保健研究域医学系)
  • 朝長 毅(独立行政法人医薬基盤研究所 創薬基盤研究所)
  • 上田 佳秀(京都大学 医学部附属病院)
  • 丸澤 宏之(京都大学 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
23,940,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝移植後C型肝炎症例の臨床像、治療成績を詳細に解析し、その予後、治療効果に関与するウイルス側、宿主側の因子を、それぞれ次世代ゲノムアナライザー、プロテオミクスを用いて解析することにより、移植後C型肝炎に対する、効果的で副作用の少ない治療法を確立し、標準化することを目的とした。さらに肝移植後B型肝炎ウイルス活性化の現状を解析し、予防策の標準化を行う。
研究方法
1. 肝移植後C型肝炎についての臨床研究:肝移植後C型肝炎に対する抗ウイルス治療の効果ならびに有害事象の現状と危険因子の同定を行った。また、テラプレビルを含む3剤併用療法の導入を行った。
2. 肝移植後B型肝炎についての臨床研究:肝移植後B型肝炎予防のためのB型肝炎ワクチンの効果について解析を行った。
3. 肝移植後C型肝炎についての基礎研究:肝移植症例について、C型肝炎ウイルスの次世代ゲノムアナライザー解析ならびに肝組織のプロテオーム解析、ならびにHCV感染細胞と星細胞とのクロストークの基礎研究を行った。
結果と考察
1. 肝移植後C型肝炎治療の効果に関与する因子としてのIL28B遺伝子多型の意義を確認した、肝内のInterferon stimulated genesの発現状態の関与を明らかにした。一方、慢性拒絶ならびにde novo自己免疫性肝炎といった移植後特有の有害事象の現状が明らかとなった。また、また、テラプレビル+ペグインターフェロン+リバビリン療法、肝移植術中二重濾過血漿交換療法とドナー肝臓内リンパ球を用いた術後抗C型肝炎ウイルス補助免疫療法の併用療法、ステロイドフリー免疫抑制法+低用量のインターフェロン+リバビリンを使用した移植後早期治療の新規治療法の試みを行い、効果と安全性を確認した。これらの結果を元に、より効果的で有害事象の少ない治療法のプロトコール作成が可能であると考えられた。
2. 肝移植後B型肝炎対策として、B型肝炎ワクチンの有効性を明らかにした。肝移植後のHBV活性化予防のために使用されている高力価HBs抗体含有免疫グロブリン製剤(HBIG)を中止する方法として、B型肝炎ワクチンを投与することによる能動的HBs抗体獲得を試みた。その結果、HBc抗体陽性ドナーから肝移植を受けたレシピエントでは74%、HBVによる急性肝不全レシピエントでは83%、HBVによる肝硬変レシピエントでは42%でHBs抗体が獲得され、HBIGの中止が可能であった。B型肝炎ワクチンを含めた新たな予防法が確立できると考えられた。
3. 肝移植後C型肝炎についての基礎研究として、次世代ゲノムアナライザーによる肝移植症例のC型肝炎ウイルス解析、肝組織におけるプロテオーム解析、ならびにHCV感染細胞と星細胞とのクロストークの基礎研究を行い、肝移植後C型肝炎治療効果との関連や新規治療法開発への手がかりを得た。
結論
肝移植後C型肝炎治療ならびに肝移植後B型肝炎対策の現状が明らかとなり、テラプレビルの併用やB型肝炎ワクチンといった新規治療法の導入も可能となった。また、臨床研究と基礎研究の両面から効果予測、有害事象予測が可能となってきた。以上の解析結果から、今後、より有効で有害事象の少ない対策法のプロトコール作成へ進めることが可能となった。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201227018Z