画期的C型肝炎ウイルス阻害療法の確立を目指した核酸医薬送達ナノシステムの開発

文献情報

文献番号
201227016A
報告書区分
総括
研究課題名
画期的C型肝炎ウイルス阻害療法の確立を目指した核酸医薬送達ナノシステムの開発
課題番号
H22-肝炎-若手-017
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
吉岡 靖雄(大阪大学 薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
C型肝炎ウイルス(HCV)に対する核酸医薬が、既存の治療法の問題点を克服し得る可能性を秘めていることから、次世代型画期的医薬品として注目されている。しかし核酸医薬は一般に、体内安定性・組織特異性・細胞内移行能の乏しさといった致命的欠点から十分な治療効果を発揮できず、これらを克服し得る方法の開発が待望されている。当該研究では、ナノマテリアルによる「siRNA・アンチセンスなど核酸医薬の肝臓送達システムの新規開発」を図り、HCVに対する次世代治療戦略を提示する。
研究方法
直径70 nmの非晶質ナノシリカ(nSP70)および、nSP70の表面をカルボキシル基(nSP70-C)やアミノ基(nSP70-N)で修飾したナノシリカを用いた。
結果と考察
昨年度までの結果を鑑み、平成24年度には、表面修飾の異なる非晶質ナノシリカを用い、遺伝子導入キャリアーとしての有用性をin vitro、in vivoで評価した。本検討では、レポーター遺伝子を発現するプラスミドを用いた。まずin vitroにおいて、ナノシリカとプラスミド複合体を細胞株に添加し、遺伝子発現を評価した。その結果、プラスミド単独では、全く遺伝子発現が確認されなかったが、ナノシリカとプラスミド複合体についても有意な遺伝子発現の上昇は観察されなかった。一方で、市販の遺伝子導入では、顕著な遺伝子発現量の増加が認められた。次に、in vivoにおいて、静脈内投与後の肝臓における遺伝子発現量を比較検討した。その結果、プラスミド単独では、ほとんど遺伝子発現が観察されなかった一方で、ナノシリカとプラスミド複合体投与群においては、プラスミド単独群と比較して有意な遺伝子発現量の増大が認められた。さらに、肝臓での遺伝子発現に汎用されるハイドロダイナミック法を適用した場合には、肝臓で非常に高い遺伝子発現が観察された。以上の結果から、詳細なメカニズム解明が必要ではあるものの、非晶質ナノシリカはin vivoにおいて、肝臓での高い遺伝子発現を可能とする遺伝子導入キャリアーになり得ることが判明した。
結論
今後、本研究成果を発展させることで、HCVに対する核酸医薬開発の一助になり得ると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-30
更新日
-

文献情報

文献番号
201227016B
報告書区分
総合
研究課題名
画期的C型肝炎ウイルス阻害療法の確立を目指した核酸医薬送達ナノシステムの開発
課題番号
H22-肝炎-若手-017
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
吉岡 靖雄(大阪大学 薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
C型肝炎ウイルス(HCV)に対する核酸医薬が、既存の治療法の問題点を克服し得る可能性を秘めていることから、次世代型画期的医薬品として注目されている。しかし核酸医薬は一般に、体内安定性・組織特異性・細胞内移行能の乏しさといった致命的欠点から十分な治療効果を発揮できず、これらを克服し得る方法の開発が待望されている。当該研究では、ナノマテリアルによる「siRNAやプラスミドなどの核酸医薬の肝臓送達システムの新規開発」を図り、HCVに対する次世代治療戦略を提示する。
研究方法
直径70 nmの非晶質ナノシリカ(nSP70)の表面をカルボキシル基やアミノ基で修飾したものや、4種類のQドットなどを用いて検討した。
結果と考察
4種類のQドットを用い、in vitroでの細胞内移行能とマウスでの体内動態を評価した。その結果、in vitroでは、表面が細胞内移行ペプチドで修飾されたQドットが最も細胞内移行に優れていた。一方で、マウスに静脈内投与後の体内動態を検討した結果、PEG修飾Qドットが肝臓に選択的に移行することが明らかとなり、優れた肝臓デリバリーキャリアーになり得る可能性が示された。そこで、siRNA導入キャリアーとしての有用性をin vitroで評価した。その結果、表面が細胞内移行ペプチドやアミノ基で修飾されたQドットは、未だ不十分ではあるものの、siRNAによる遺伝子発現抑制効果が認められ、siRNAの細胞内導入キャリアーになり得る可能性が示された。次に、粒子径・表面修飾の異なる非晶質ナノシリカを用い、siRNA導入キャリアーとしての有用性をin vitroで評価した。その結果、いずれの非晶質ナノシリカについても、siRNAによる遺伝子発現抑制効果を確認することはできなかった。また、プラスミドを用いて遺伝子導入キャリアーとしての有用性をin vitro、in vivoで評価した。まずin vitroにおいて、ナノシリカとプラスミド複合体を細胞株に添加し、遺伝子発現を評価した結果、プラスミド単独では、全く遺伝子発現が確認されなかったが、ナノシリカとプラスミド複合体についても有意な遺伝子発現の上昇が観察されなかった。次に、in vivoにおいて、静脈内投与後の肝臓における遺伝子発現量を比較検討した。その結果、プラスミド単独では、ほとんど遺伝子発現が観察されなかった一方で、ナノシリカとプラスミド複合体投与群においては、プラスミド単独群と比較して有意な遺伝子発現量の増大が認められた。さらに、肝臓での遺伝子発現に汎用されるハイドロダイナミック法を適用した場合には、肝臓で非常に高い遺伝子発現が観察された。以上の結果から、詳細なメカニズム解明が必要ではあるものの、非晶質ナノシリカはin vivoにおいて、肝臓での高い遺伝子発現を可能とする遺伝子導入キャリアーになり得ることが判明した。また、T細胞受容体蛋白質を簡便に創製する方法を確立すると共に、蛋白質特性を評価することで、HCV感染肝細胞を特異的に認識するT細胞受容体の創製に向け有用な情報を得た。
結論
今後、本研究成果を発展させることで、HCVに対する核酸医薬開発の最大の問題点を克服可能であり、HCV治療に多大に貢献し得ると期待される。本成果は、新たな方法論・基盤技術・医療体系を提供することで、国民の健康と福祉に貢献可能と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201227016C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究成果は、C型肝炎に対する核酸医薬開発に資する基盤情報を提供するものであり、今後の研究開発に多大に貢献するものである。また、C型肝炎のみならず、他の新興・再興感染症など致死的感染症に対する新たな方法論・基盤技術・医療体系を提供することで、国民の健康と福祉に貢献可能と考えられる。
臨床的観点からの成果
C型肝炎は“致死的な病”から“制御可能な慢性感染症”へと変化した一方で、重篤な副作用によるIFN療法の中断、薬剤耐性ウイルスの頻発、高額費用などの解決すべき問題が多数残されており、新たな観点からの治療薬開発が世界的に望まれている。従って、本研究成果を基盤として近未来的に開発されるであろうC型肝炎に対する核酸医薬は、最適な医療体系の構築に大きく寄与すると期待される。
ガイドライン等の開発
該当無し。
その他行政的観点からの成果
該当無し。
その他のインパクト
該当無し。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Higashisaka K, Yoshioka Y, Yamashita K, et al.
Acute phase proteins as biomarkers for predicting the exposure and toxicity of nanomaterials
Biomaterials , 32 (1) , 3-9  (2011)
原著論文2
Narimatsu S, Yoshioka Y, Morishige T, et al.
Structure-activity relationship of T-cell receptors based on alanine scanning
Biochem Biophys Res Commun , 415 (4) , 558-562  (2011)

公開日・更新日

公開日
2016-05-23
更新日
2018-03-20

収支報告書

文献番号
201227016Z