小胞輸送ESCRT経路を利用したC型肝炎ウイルス排除

文献情報

文献番号
201227014A
報告書区分
総括
研究課題名
小胞輸送ESCRT経路を利用したC型肝炎ウイルス排除
課題番号
H22-肝炎-若手-015
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
玉井 恵一(地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所) がん先進治療開発研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 菅村和夫(地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所) 発がん制御研究部)
  • 田中伸幸(地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所) がん先進治療開発研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
4,876,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(1)C型肝炎ウイルスのライフサイクルを明らかにすることで、新たな治療ターゲットを模索する
(2)HCVは小胞輸送経路をもって輸送されることが明らかとなったため、この経路とHCVの結合を阻害することでHCV感染の抑制を図る。
研究方法
供試した細胞と調整
Huh7 細胞は10%仔ウシ血清を含むDulbecco’s Modfied Eagle培地で培養した。Huh7をHrs特異的にノックダウンするために、Hrs特異的なshRNAを発現するレトロウイルスベクターをトランスフェクションしたあと、2 ug/mL のピューロマイシンを用いて選択した。VPS4B野生型・ドミナントネガティブ(E235Q)(Dr. Sundquist より供与)は、1 日目にFuGene6 (Roche) を用いてトランスフェクションし、2 日目にJFH1 を感染させて使用した(MOI =0.01)。
Real-time PCR
HCV-RNA の定量は、以前に報告されているプライマーを用いてreal-time PCRを用いて行った[8]。
エクソゾームの分離精製
培養上清中のエクソゾームを定量するために、10 cmシャーレに培養した細胞に1 mM のA23187 (Ca ionophore, Sigma) を用いて刺激し、48時間後に上清を回収した。培養上清に含まれるエクソゾームは、既報の手技を用いて精製した[6]。
ショ糖密度勾配
ショ糖密度勾配はショ糖をHepes緩衝液に溶解し(10%および60%)、遠心管に2相に重層し、3時間水平に倒した後に使用した。精製したエクソゾームを加え、100,000 gで20時間遠心して分画を作成した[7]。
結果と考察
(1)HCVはESCRT経路依存性のエクソゾーム経路を利用して放出されていることを明らかにした。(Virology, 2012)
・研究分担者(菅村和夫)
(1)ヒト化肝臓マウスにおいて、ヒト肝細胞のHrs遺伝子をノックダウンすることに成功し、さらに、このマウスにおいて血清中のJFH-1-RNA量が減少することが明らかになった。
・研究分担者(田中伸幸)
(1) ヒト化肝臓マウスにヒト肝細胞が生着することを確認し、さらにHCV コア遺伝子をヒト肝細胞
内に発現させることに成功した。
結論
ESCRT経路は、HCVの放出に必須の経路であることが判明した。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201227014B
報告書区分
総合
研究課題名
小胞輸送ESCRT経路を利用したC型肝炎ウイルス排除
課題番号
H22-肝炎-若手-015
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
玉井 恵一(地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所) がん先進治療開発研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 菅村和夫(地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所) 発がん制御研究部)
  • 田中伸幸( 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所) がん先進治療開発研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(1)C型肝炎ウイルスのライフサイクルを明らかにすることで、新たな治療ターゲットを模索する
(2)HCVは小胞輸送経路をもって輸送されることが明らかとなったため、この経路とHCVの結合を阻害することでHCV感染の抑制を図る。
研究方法
In vitroの系では、Huh7-JFH1感染系をもちいた。In vitroでは、TK-NOGマウスにヒト正常肝細胞を移植し、ヒト肝細胞に置換したマウスを作成した後、JFH1を感染させた。
結果と考察
ESCRT分子のHCVにおける役割を検討するために、まずHCVが含まれるとされるエクソゾームとESCRT最上流に位置するHrsの関連性を検討した。Hrsノックアウト樹状細胞においては、エクソゾームの放出量が抑制されており、エクソゾームのT細胞に対する抗原提示能も減少していた。以上のことからHrsはエクソゾーム放出に必須の分子であり、エクソゾームを介した抗原提示能にも関わっている可能性が示唆された。(BBRC, 2010)
 次に、我々はHrsとHCV放出の関連を検討した。HrsノックダウンHuh7細胞にHCV株JFH1を感染させると、放出されるHCV-RNAは減少した。細胞内HCV-RNAやコアタンパク発現量には変化がなかったが、細胞内の感染性HCV粒子はHrsノックダウン細胞において減少していた。以上のことから、HrsはHCVアセンブリに関与している可能性が示唆された。更に我々は、HCVとエクソゾームの関連性を検討した。エクソゾーム放出に必須なタンパクとして知られるRab27aをノックダウンしたところ、Hrsと同様に感染性HCV粒子の放出量は著明に減少した。HCV感染細胞の上清を精製し、ショ糖密度勾配遠心にて分画すると、HCVコアタンパクとエクソゾームはほぼ同じ分画に存在した。免疫電顕をおこなうと、HCVコアタンパクとmultivesicular body内のintraluminal vesicleは共局在していた。以上のことからHCVはHrs依存性エクソゾーム経路を利用していることが明らかになった。(Virology, 2012)
 Hrsの肝における生理的意義を探索するために、肝特異的Hrsノックアウトマウスを作成した。その結果、意外なことにノックアウトマウスは、少なくとも通常の飼育状態では明らかな表現型を表さなかった(unpublished data)。このことは、Hrsを含むESCRT経路が、肝においてはHCV感染状態のような病的な状態でのみ機能することを示唆しており、実際のヒト肝臓においてESCRT経路をターゲットとすることは、副作用の少ない治療となることも期待でき、更なる検討が必要と考えられた。
 In vivoにおける解析を行うために、ヒト化肝臓マウスにJFH-1を感染させ、アデノウイルスベクターを用いてHrsノックダウンを行い、血清中のJFH-1-RNAを測定した。アデノウイルスでノックダウンした個体では、コントロールと比べてJFH-1-RNAが減少した。現在個体数を増やして検討中である。
結論
HCVの放出には、ESCRTが必須であることが判明した。In vitroの系でもそれを示唆する結果を得ており、今後解析を進めることで、抗HCV薬開発へつなげる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201227014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
HCVの放出過程は、これまで多くの点が不明であった。私たちは、この過程にESCRT経路が必要であることを明らかにした。
臨床的観点からの成果
ESCRT経路を機能不全に誘導すると、HCVの細胞外への放出が抑制された。このことは、ESCRT経路をターゲットとした抗HCV薬の開発が可能であることを示唆する。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
特になし。
その他のインパクト
特になし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
10件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Keiichi Tamai, Masaaki Shiina, Nobuyuki Tanaka et al.
Regulation of hepatitis C virus secretion by the Hrs-dependent exosomal pathway
Virology , 422 , 377-385  (2012)
原著論文2
Keiichi Tamai, Nobuyuki Tanaka, Takashi Nakano, et al.
Exosome secretion of dendritic cells is regulated by Hrs, an ESCRT-0 protein
Biochemical and Biophysical Research Communications , 399 , 384-390  (2010)
原著論文3
Takayuki Imai, Keiichi Tamai, Sayuri Oizumi, et al
CD271 defines a stem cell-like population in hypopharyngeal cancer
PLOS ONE , e62002-  (2013)

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
2018-03-20

収支報告書

文献番号
201227014Z