アデノウイルスベクターを利用したC型肝炎治療薬創製基盤技術の開発

文献情報

文献番号
201227013A
報告書区分
総括
研究課題名
アデノウイルスベクターを利用したC型肝炎治療薬創製基盤技術の開発
課題番号
H22-肝炎-若手-013
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
櫻井 文教(大阪大学大学院薬学研究科 分子生物学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 渡利 彰浩(大阪大学大学院薬学研究科 生体機能分子化学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
4,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在、抗HCV活性評価系としてヒト肝臓キメラマウスが汎用されているが、HCV長鎖RNAゲノム(9.6 kb)を肝臓で発現可能なベクターは開発されておらず、抗HCV活性評価系には患者血清が使用されているのが現状である。そこで本研究は、長鎖RNA発現系RNA pol Iを搭載したAdベクターを用いて、HCVゲノムを肝臓で発現可能なベクターを開発し、新たな抗HCV活性評価系を構築するとともに、本系を用いてmiRNAおよびHCV受容体の発現制御に基づくC型肝炎新規治療法を開発することを目的とする。
研究方法
HCV感染受容体を高効率にノックダウンすることを目的に、RNA干渉を高効率に誘導可能なアデノウイルス(Ad)ベクターの開発を試みた。具体的には、ArgonauteをはじめとするRNA干渉関連因子発現カセットとshort-hairpin RNA (shRNA)発現カセットの両者を搭載したAdベクターを作製し、そのノックダウン効率を検討した。また、HCVフルゲノムを発現可能なAdベクターを作製するため、polIプロモーターの下流にHCVフルゲノムを挿入した遺伝子発現カセットを作製し、HCVフルゲノムを発現可能か検討した。
結果と考察
各種RNA干渉関連因子のうち、Ago2を共発現させることでノックダウン効率を大きく向上させることに成功した。現在、各種HCV感染受容体に対するshRNA発現カセットを搭載したAdベクターの開発を試みている。HCVフルゲノム発現系に関しては、HCVフルゲノム発現プラスミドをHuh-7細胞に導入することにより、HCVフルゲノムを発現可能であることを確認した。現在、HCVフルゲノム発現カセットを搭載したHelper-dependent Adベクターの開発を試みている。
結論
本研究では、HCV感染受容体の高効率ノックダウンに向けて、RNA干渉を高効率に誘導可能なAdベクターの開発に成功した。本Adベクターは、HCV感染受容体の高効率ノックダウンに向けて有用な基盤ベクターになるものと期待される。またHCVフルゲノム発現プラスミドの開発にも成功した。これを搭載したAdベクターが開発されれば、簡便にHCVフルゲノムを発現可能になり、HCV創薬評価系に極めて有用と期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-30
更新日
-

文献情報

文献番号
201227013B
報告書区分
総合
研究課題名
アデノウイルスベクターを利用したC型肝炎治療薬創製基盤技術の開発
課題番号
H22-肝炎-若手-013
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
櫻井 文教(大阪大学大学院薬学研究科 分子生物学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 渡利 彰浩(大阪大学大学院薬学研究科 生体機能分子化学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
インターフェロン療法の進歩によりC型肝炎の根治率は向上しているものの、依然として奏効率は50%に過ぎない。現在、抗C型肝炎ウイルス(HCV)活性評価系としてヒト肝臓キメラマウスが汎用されているが、HCV長鎖RNAゲノムを肝臓で発現可能なベクターは開発されていないのが現状である。
そこで本研究は、長鎖RNA発現系RNA pol Iを搭載したAdベクターを用いて、HCVゲノムを肝臓で発現可能なベクターを開発し、新たな抗HCV活性評価系を構築するとともに、本系を用いてmiRNAおよびHCV受容体の発現制御に基づくC型肝炎新規治療法を開発することを目的とする。
研究方法
HCVゲノムを発現させることを目的に、薬物で発現制御可能なpolI系プロモーターの開発を試みた。具体的にはテトラサイクリン制御エレメントをpolIプロモーターに連結させ、機能評価を行った。さらにHCVレプリコンゲノムをpolIプロモーター下流に挿入した発現カセットをアデノウイルスベクターゲノムに挿入し、HCVレプリコン発現Adベクターの開発を試みた。また、HCVの増殖に必須のmiR-122aを阻害可能なタフデコイRNA発現Adベクターを開発した。さらに、HCV感染受容体を高効率にノックダウンする目的に、RNA干渉を高効率に誘導可能なAdベクターの開発を試みた。
結果と考察
テトラサイクリン制御エレメントを種々の長さのpolIプロモーターに連結させることで、薬物で発現制御可能なpolIプロモーターを開発した。さらにこのプロモーター下にHCVレプリコンゲノムを挿入するとともに、Adベクターゲノムに挿入することで、HCVレプリコン発現Adベクターを開発した。またHCVフルゲノム発現プラスミドの作製にも成功した。また、miR-122aを阻害可能なタフデコイRNA発現Adベクターを開発し、HCVレプリコン発現細胞に作用させたところ、HCVレプリコンを高効率に抑制した。HCV感染受容体の高効率ノックダウンに向けては、Short-hairpin RNAとともにAgo2を共発現させることで、ノックダウン効率を大きく向上させることに成功した。
結論
本研究にて開発した上記のAdベクターは、極めて有用なHCV創薬基盤技術になるものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201227013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
アデノウイルス(Ad)ベクターは優れた遺伝子導入効率を有すること、肝臓に高い親和性を有することからHCV創薬評価系構築に向けて優れた基盤ツールをなりうるが、これまでHCV研究に応用された例は少なかった。本研究グループはHCVレプリコン発現Adベクターを世界に先駆けて開発するなど、その特長を生かし、AdベクターをHCV創薬評価系に応用することに成功した。またHCVの感染に必須であるmiR-122aを阻害可能なタフデコイRNA発現Adベクターを開発した。
臨床的観点からの成果
これまでにHCVレプリコンを細胞内に導入・発現させるには利便性等に大きな問題を有しており、抗HCV薬創製に向けて大きな障壁となっていた。本研究で開発したHCVレプリコン発現Adベクターは、培養細胞に作用させるだけでHCVレプリコンを発現可能であることから、有用な実験ツールとなりうる。また同様にタフデコイRNA発現Adベクターも、細胞に作用させるだけでmiR-122aを阻害可能であることから、創薬応用に向けて有用と期待される。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
該当なし
その他のインパクト
該当なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
8件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sakurai F, Furukawa N, Higuchi M, et al.
Suppression of hepatitis C virus replicon by adenovirus vector-mediated expression of tough decoy RNA against miR-122a
Virus Research , 165 (2) , 214-218  (2012)
10.1016/j.virusres.2012.02.003.
原著論文2
Yoshida T, Takayama K, Kondoh M, et al.
Use of human hepatocyte-like cells derived from induced pluripotent stem cells as a model for hepatocytes in hepatitis C virus infection.
Biochem Biophys Res Commun , 416 (2) , 119-124  (2011)
10.1016/j.bbrc.2011.11.007.

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
201227013Z