肝炎ウイルス感染における自然免疫応答の解析と新たな治療標的の探索に関する研究

文献情報

文献番号
201227010A
報告書区分
総括
研究課題名
肝炎ウイルス感染における自然免疫応答の解析と新たな治療標的の探索に関する研究
課題番号
H22-肝炎-一般-010
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
松浦 善治(大阪大学 微生物病研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 考藤 達哉(大阪大学 医学研究科)
  • 竹内  理(京都大学 ウイルス研究所)
  • 藤田 尚志(京都大学 ウイルス研究所)
  • 池田 正徳(岡山大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 土方  誠(京都大学 ウイルス研究所)
  • 小原 道法(東京都臨床研)
  • 瀬谷  司(北海道大学 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
39,630,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
C型肝炎ウイルス(HCV)による自然免疫や獲得免疫の回避機構を解析し、これらの成果を新しい治療法の開発に資することを目的とする。
研究方法
1) ATGのノックアウトHuh7細胞を樹立した。2) Airin2のウイルス感染制御機能を解析した。3)末梢血のDCを刺激しIFNを定量した。4) IPS-1のシグナルを伝達に必須な領域を解析した。5)不死化肝細胞の自然免疫関連遺伝子群の発現パターンを解析した。6) 制限酵素BsrDIの切断パターンによる IL28B SNP判定法を検討した。7)polyI:Cとカチオニックリポソームの複合体のIFN誘導能を解析した。8) RipletやDDX60とRIG-Iの結合を酵母で解析した。
結果と考察
1)HCVの増殖におけるオートファジーの関与を解析できる細胞株を樹立した。2) RIG-IやTLR3シグナルに関与する新規調節分子群の機能を明らかにした。3) BDCA3+DCはHCVを感知して多量のIFN-λを産生することが明らかになった。4) HCVゲノムの5'UTRはストレス顆粒を形成してRIG-Iの活性化を促進し、3'UTRはIFNを誘導することが明らかとなった。5) ヒト肝細胞では感染初期からRIG-I依存的にIFNλの発現が高く誘導されていた。6)制限酵素の切断パターンによる IL28BのSNP判定法が可能となった。7) HCV感染によってキメラマウスの肝臓にIFNλが強く誘導されることを見出した。8) RIG-Iの活性化にはN末がTRIM25に、またC末がRiplet によってユビキチン化されることが重要である。
結論
ATG13はHCV感染によるオートファゴソームの形成には関与しない。RIG-IによるI型IFNやIL6の産生を調節する新規分子を同定した。HCV感染によるストレス顆粒形成は自然免疫応答に重要である。RIG-I の活性化因子としてRiplet を同定した。新規のIL28B SNPの簡便な判定法をの治療効果予測への有用性を明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201227010B
報告書区分
総合
研究課題名
肝炎ウイルス感染における自然免疫応答の解析と新たな治療標的の探索に関する研究
課題番号
H22-肝炎-一般-010
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
松浦 善治(大阪大学 微生物病研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 考藤 達哉(大阪大学 医学研究科)
  • 竹内  理(京都大学 ウイルス研究所)
  • 藤田 尚志(京都大学 ウイルス研究所)
  • 池田 正徳(岡山大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 土方  誠(京都大学 ウイルス研究所)
  • 小原 道法(東京都臨床研)
  • 瀬谷  司(北海道大学 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
C型肝炎ウイルス(HCV)による自然免疫や獲得免疫の回避機構を解析し、これらの成果を新しい治療法の開発に資することを目的とする。
研究方法
1)HCV複製細胞で優位に発現している分子を解析した。2)miR-122を種々の細胞株に導入しHCVの感受性を検討した。3)IDOの活性をC型慢性肝炎患者の血清で定量した。4)RIG-IのATPase活性を欠失させたノックインマウスを作製しその性状を解析した。5) IPS-1のシグナル伝達に必須な領域を解析した。6)不死化肝細胞の自然免疫関連遺伝子群の発現パターンを解析した。7)制限酵素の切断パターンによる IL28BのSNP判定法を検討した。8) polyI:Cとカチオニックリポソームの複合体をキメラマウスに投与してIFNの誘導を解析した。
結果と考察
1)慢性C型肝炎の発症にヒアルロン酸とCD44の相互作用が示唆された。2)miR-122を発現させたHep3B細胞はHCVに対して高い感受性を示した。3)HCVの増殖におけるオートファジーの関与を解析できる細胞株を樹立した。4) RIG-Iの活性化にはATPase活性は必要なく、N末がTRIM25に、C末がRiplet によってユビキチン化されることが重要であることが示された。5)HCVの5'UTRはストレス顆粒を形成してRIG-Iの活性化を促進し、3'UTRはIFNを誘導することが明らかとなった。6) BDCA3+DCはHCVを感知して多量のIFN-λを産生することが明らかになった。7)制限酵素の切断パターンによる IL28BのSNP判定法が可能となった8) HCV感染によってキメラマウスの肝臓にIFNλが強く誘導されることを見出した。
結論
C型慢性肝炎患者ではヒアルロン酸とCD44の相互作用がIP-10の発現に関与し、また、肝細胞やDCにIDOが発現して免疫が制御されることが示された。miR-122を発現させることによりHCVの新規感受性細胞株を樹立した。ATG13はHCV感染によるオートファゴソームの形成には関与しないことが示された。HCV感染によるストレス顆粒形成は自然免疫応答に重要であり、RIG-I の活性化因子としてRiplet を同定した。新規のIL28B SNPの簡便な判定法をの治療効果予測への有用性を明らかにした。polyI:Cとカチオニックリポソームの複合体がヒト肝細胞でIFNβでなくIFNλを誘導することを見いだした。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201227010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
miR-122を発現させることによりHCVの新規感受性細胞株を樹立した。ATG13はHCV感染によるオートファゴソームの形成には関与しないことが示された。HCV感染によるストレス顆粒形成は自然免疫応答に重要であり、RIG-I の活性化因子としてRiplet を同定した。polyI:Cとカチオニックリポソームの複合体がヒト肝細胞でIFNβでなくIFNλを誘導することを見いだした。
臨床的観点からの成果
C型慢性肝炎患者ではヒアルロン酸とCD44の相互作用がIP-10の発現に関与し、また、肝細胞やDCにIDOが発現して免疫が制御されることが示された。新規のIL28B SNPの簡便な判定法をの治療効果予測への有用性を明らかにした。
ガイドライン等の開発
該当無し
その他行政的観点からの成果
HCVの免疫回避機構が解明され、その責任分子を標的とした免疫制御療法は、従来の治療効果を改善することが期待される。また、これらの成果は、保健、医療、福祉の向上に直結するとともに、高齢者医療費の低減に貢献するものと思われる。
その他のインパクト
該当無し

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
72件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
8件
学会発表(国内学会)
99件
学会発表(国際学会等)
90件
その他成果(特許の出願)
2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
プロスタグランジン12のアゴニストを含む、C型肝炎ウイルスの感染抑制剤
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2010-222045
発明者名: 土方誠、阿部雄一、脇田隆字
権利者名: 土方誠、阿部雄一、脇田隆字
出願年月日: 20100930
国内外の別: 国内
特許の名称
難治性ウイルス感染症の治療剤
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2010-202355
発明者名: 小原道法、中川慎一郎
権利者名: 小原道法、中川慎一郎
出願年月日: 20100909
国内外の別: 国内

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Fukuhara T. et al.
Expression of miR-122 facilitates an efficient replication in nonhepatic cells upon infection with HCV.
J.Virol. , 86 , 7918-7933  (2012)
原著論文2
Kambara H. et al.
Establishment of a novel permissive cell line for propagation of hepatitis C virus by the expression of microRNA122.
J.Virol. , 86 , 1382-1393  (2012)
原著論文3
Abe T. et al.
CD44 participates in the IP-10 induction in cells replicating HCV RNA through an interaction with TLR2 and hyaluronan.
J.Virol. , 86 , 6159-6170  (2012)
原著論文4
Maruyama K. et al.
TRAF family member-associated NF-κB activator (TANK) is a negative regulator of osteoclastogenesis and bone formation.
J.B.C. , 287 , 29114-29124  (2012)
原著論文5
Kanto T. et al.
Dynamics of regulatory T cells and plasmacytoid dendritic cells as immune markers for virological response in pegylated interferon-alpha and ribavirin therapy for chronic hepatitis C patients.
J. Gastroenterol. , 47 , 169-178  (2012)
原著論文6
Takamatsu S. et al.
Functional Characterization of Domains of IPS-1 Using an Inducible Oligomerization System.
PLoS ONE , 8  (2012)
原著論文7
Takeda M. et al.
Development of hepatitis C virus production reporter assay systems using two different hepatoma cell lines.
J. Gen. Virol. , 93 , 1422-1431  (2012)
原著論文8
Hirata T. et al.
Self-enhancement of Hepatitis C Virus Replication by Promotion of Specific Sphingolipid Biosynthesis.
PLoS Pathog. , 8  (2012)
原著論文9
Shime H. et al.
Toll-like recepter 3 signaling converts tumor-supporting myeloid cells to tumoricidal effectors.
Proc Natl Acad Sci USA. , 109 , 2066-2071  (2012)
原著論文10
Taguwa S. et al.
Dysfunction of autophagy participates in vacuole formation and cell death in cells replicating hepatitis C virus.
J.Virol. , 85 , 13185-13194  (2011)
原著論文11
Wen X. et al.
Elimination of hepatitis C virus from hepatocytes by a selective activation of therapeutic molecules.
PLoS ONE , 6  (2011)
原著論文12
Iwasaki H. et al.
The IκB kinase complex regulates the stability of cytokine-encoding mRNA induced by TLR-IL-1R by controlling degradation of regnase-1.
Nat.Immunol. , 12 , 1167-1175  (2011)
原著論文13
Tatsumi T. et al.
Hepatitis C virus-specific CD8+ T cell frequencies are associated with the responses of pegylated interferon-alpha and ribavirin combination therapy in patients with chronic hepatitis C virus infection.
Hepatol. Res. , 41 , 30-38  (2011)
原著論文14
Ouda R. et al.
Retinoic Acid-inducible Gene I-inducible miR-23b Inhibits Infections by Minor Group Rhinoviruses through Downregulation of the Very Low Density Lipoprotein Receptor.
J.B.C. , 286 , 26210-26219  (2011)
原著論文15
Ariumi Y. et al.
Hepatitis C virus hijacks P-body and stress granule components around lipid droplets.
J.Virol. , 85 , 6882-6892  (2011)
原著論文16
Arai M. et al.
Establishment of infectious HCV virion-producing cells with newly designed full-genome replicon RNA.
Arch. Virol. , 156 , 295-304  (2011)
原著論文17
Miyashita M. et al.
DDX60 a DEXD/H Box Helicse, is a novel antiviral factor promoting RIG-I-like receptor-mediated signaling.
Mol. Cell Biol. , 31 , 3802-3819  (2011)
原著論文18
Moriishi K. et al.
Involvement of PA28g in the propagation of hepatitis C virus.
Hepatology , 52 , 411-420  (2010)
原著論文19
Miyake T. et al.
IκBζ is essential for natural killer cell activation in response to IL-12 and IL-18.
Proc. Natl. Acad. Sci. USA , 107 , 17680-17685  (2010)
原著論文20
Kushima Y. et al.
A disulfide-bonded dimer of the core protein of hepatitis C virus is important for virus-like particle production.
J.Virol. , 84 , 303-311  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
2018-03-20

収支報告書

文献番号
201227010Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
51,519,000円
(2)補助金確定額
51,519,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 35,254,362円
人件費・謝金 2,002,804円
旅費 1,924,120円
その他 448,714円
間接経費 11,889,000円
合計 51,519,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-