文献情報
文献番号
201226017A
報告書区分
総括
研究課題名
ART早期化と長期化に伴う日和見感染症への対処に関する研究
課題番号
H24-エイズ-一般-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
安岡 彰(長崎大学 病院)
研究分担者(所属機関)
- 照屋 勝治(国立国際医療研究センター エイズ治療研究開発センター)
- 片野 晴隆(国立感染症研究所 感染病理部)
- 山本 政弘(国立病院機構九州医療センター AIDS/HIV総合治療センター)
- 古西 満(奈良県立医科大学健康管理センター)
- 永井 英明(国立病院機構東京病院呼吸器科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
20,476,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
日和見合併症の動向、非指標悪性腫瘍などの疫学調査を行うとともに、HIV合併結核、ニューモシスチス肺炎、非結核抗酸菌症など主要な疾患の診断治療法、特に免疫再構築症候群との関連と対処法について発症早期からのART導入の是非や対処法との関連を含めて検討する。
研究方法
1.日和見合併症の動向調査
1) 日和見合併症疫学調査-日和見合併症感染症・指標以外の悪性腫瘍-(安岡)
2) 剖検例における日和見感染症及び腫瘍の頻度(片野)
2.日和見感染症の診断・治療法の開発
1) 唾液検体を用いた定量的RT-PCR法によるニューモシスチス肺炎とPneumocystis jirovecii定着の鑑別(照屋)
2) HIV感染者に対する赤痢アメーバ抗体測定の意義(照屋)
3) エイズ治療・研究開発センターにおける進行性多巣性白質脳症22例の予後についての後方視的検討(照屋)
4) HIV感染者のHelicobacter pylori新規感染について(照屋)
5)HIV感染者の潜在性結核・感染症の早期発見及び治療(永井)
6)抗GPL core IgA抗体によるM.avium complex症の早期発見(永井)
7) ART実施中のHIV感染者の甲状腺機能の検討(古西)
3.免疫再構築症候群の適切な対応
1) ニューモシスチス肺炎(PCP)発症後のART開始時期と免疫再構築症候群の開始時期に関する検討(照屋)
2)免疫再構築症候群の発症機序におけるTh1/Th2バランスの役割(古西)
4.重篤感染症を契機とした病院におけるHIV検査の推進
1) STDを端緒とする早期発見(山本)
2) 早期発見に寄与する検査および臨床所見-口腔内病変-(山本)
1) 日和見合併症疫学調査-日和見合併症感染症・指標以外の悪性腫瘍-(安岡)
2) 剖検例における日和見感染症及び腫瘍の頻度(片野)
2.日和見感染症の診断・治療法の開発
1) 唾液検体を用いた定量的RT-PCR法によるニューモシスチス肺炎とPneumocystis jirovecii定着の鑑別(照屋)
2) HIV感染者に対する赤痢アメーバ抗体測定の意義(照屋)
3) エイズ治療・研究開発センターにおける進行性多巣性白質脳症22例の予後についての後方視的検討(照屋)
4) HIV感染者のHelicobacter pylori新規感染について(照屋)
5)HIV感染者の潜在性結核・感染症の早期発見及び治療(永井)
6)抗GPL core IgA抗体によるM.avium complex症の早期発見(永井)
7) ART実施中のHIV感染者の甲状腺機能の検討(古西)
3.免疫再構築症候群の適切な対応
1) ニューモシスチス肺炎(PCP)発症後のART開始時期と免疫再構築症候群の開始時期に関する検討(照屋)
2)免疫再構築症候群の発症機序におけるTh1/Th2バランスの役割(古西)
4.重篤感染症を契機とした病院におけるHIV検査の推進
1) STDを端緒とする早期発見(山本)
2) 早期発見に寄与する検査および臨床所見-口腔内病変-(山本)
結果と考察
1.-1) 2010年から横ばいであった。PCPが最多で、サイトメガロウイルス感染症、カンジダ症、カポジ肉腫、活動性結核と続いた。ART導入時期は、感染症疾患では1ヶ月以上たってからARTを導入する傾向にあった。指標疾患以外の悪性腫瘍は増加傾向で、年齢調整罹患率は377.8/10万となり、一般人口の1.17倍であった。疾患では肺癌、胃癌、肝臓癌、大腸癌、白血病の順であった。
1.-2) 2009年までのエイズ剖検例は828例であり、感染症はサイトメガロウイルス感染症が最も頻度が高く、ニューモシスチス肺炎、カンジダ症、非定型抗酸菌症であった。腫瘍性疾患では悪性リンパ腫は17%、カポジ肉腫は9%に認められ、悪性リンパ腫は1998年以降に頻度の上昇が見られた。
2.-1) RT-PCRの陽性率は全体で17.5%であった。カットオフ値を2500コピー/mlとすると、感度、特異度ともに100%であり、PCP発症例と定着症例を鑑別可能であった。
2.-2) 抗体陽性率は21.3%(277/1303)であった。このうち194例が無症候性抗体陽性者であった。抗体価が400倍以上の症例では、侵襲性赤痢アメーバ症を発症するリスクが高かった。
2.-3) KM曲線により算出した診断1年以降の生存率は72.4%であった。死亡症例およびPS4の7症例で初発症状を脳幹や中小脳脚に認めた。
2.-4) 234例中2例が新規感染例が診断できた。新規感染率は0.22/100人・年と推定された。
2.-5) 結核の既往がなく初回IGRAs陽性の6例では、2~4年間の経過では結核の発症者は見られなかった。
2.-6) 49例で実施し、感度82.4%、特異度93.8%、陽性適中率87.5%、陰性適中率90.9%であった。
2.-7) ARTの経過中にみられた甲状腺機能異常は、甲状腺機能亢進が5.9%、甲状腺機能低下が25.0%であった。
3.-1) PCP発症からART開始までの期間とIRIS発症率は、21日以内(PCP治療中):28.6%、22-35日:15.4%、36-49日:1.9%、50-63日:1.3%、63日以後:0%であった。ARTの開始時期はPCP発症後36-49日が適切である可能性が考えられた。
3.-2) IRISを発症しなかった27例でTh1/Th2比の推移は有意な変化を認めなかった。一方、1ヵ月後に抗酸菌によるIRISを発症した2例では著明に上昇していた。
4.-1) 新規HIV感染者のうちSTDを契機に感染が判明した例数は22%で、梅毒、クラミジア尿道炎、B型肝炎、帯状疱疹、単純ヘルペスの順であった。
4.-2) 年間総受診者数は約135,000名であり、HIVを疑う疾患としては、免疫不全の疑い、口腔内カンジダ症、壊死性歯肉周囲炎、ヘルペス・梅毒であった。
1.-2) 2009年までのエイズ剖検例は828例であり、感染症はサイトメガロウイルス感染症が最も頻度が高く、ニューモシスチス肺炎、カンジダ症、非定型抗酸菌症であった。腫瘍性疾患では悪性リンパ腫は17%、カポジ肉腫は9%に認められ、悪性リンパ腫は1998年以降に頻度の上昇が見られた。
2.-1) RT-PCRの陽性率は全体で17.5%であった。カットオフ値を2500コピー/mlとすると、感度、特異度ともに100%であり、PCP発症例と定着症例を鑑別可能であった。
2.-2) 抗体陽性率は21.3%(277/1303)であった。このうち194例が無症候性抗体陽性者であった。抗体価が400倍以上の症例では、侵襲性赤痢アメーバ症を発症するリスクが高かった。
2.-3) KM曲線により算出した診断1年以降の生存率は72.4%であった。死亡症例およびPS4の7症例で初発症状を脳幹や中小脳脚に認めた。
2.-4) 234例中2例が新規感染例が診断できた。新規感染率は0.22/100人・年と推定された。
2.-5) 結核の既往がなく初回IGRAs陽性の6例では、2~4年間の経過では結核の発症者は見られなかった。
2.-6) 49例で実施し、感度82.4%、特異度93.8%、陽性適中率87.5%、陰性適中率90.9%であった。
2.-7) ARTの経過中にみられた甲状腺機能異常は、甲状腺機能亢進が5.9%、甲状腺機能低下が25.0%であった。
3.-1) PCP発症からART開始までの期間とIRIS発症率は、21日以内(PCP治療中):28.6%、22-35日:15.4%、36-49日:1.9%、50-63日:1.3%、63日以後:0%であった。ARTの開始時期はPCP発症後36-49日が適切である可能性が考えられた。
3.-2) IRISを発症しなかった27例でTh1/Th2比の推移は有意な変化を認めなかった。一方、1ヵ月後に抗酸菌によるIRISを発症した2例では著明に上昇していた。
4.-1) 新規HIV感染者のうちSTDを契機に感染が判明した例数は22%で、梅毒、クラミジア尿道炎、B型肝炎、帯状疱疹、単純ヘルペスの順であった。
4.-2) 年間総受診者数は約135,000名であり、HIVを疑う疾患としては、免疫不全の疑い、口腔内カンジダ症、壊死性歯肉周囲炎、ヘルペス・梅毒であった。
結論
日本におけるHIV関連日和見感染症と悪性腫瘍の動向及び新しい診断と治療、合併感染症を端緒とするHIV感染者の発見についてのデータを集積した。
公開日・更新日
公開日
2014-05-26
更新日
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