文献情報
文献番号
                      201226012A
                  報告書区分
                      総括
                  研究課題名
                      APOBEC3分子のタンパク質レベルの機能性多型を基礎としたHIV-1複製抑制機構の分子基盤の解明
                  研究課題名(英字)
                      -
                  課題番号
                      H23-エイズ-一般-004
                  研究年度
                      平成24(2012)年度
                  研究代表者(所属機関)
                      宮澤 正顯(近畿大学 医学部)
                  研究分担者(所属機関)
                      - 高折 晃史(京都大学大学院 医学研究科)
 - 伊藤 暢聡(東京医科歯科大学 難治疾患研究所)
 - 有吉 紅也(長崎大学 熱帯医学研究所)
 - 木村 彰方(東京医科歯科大学 難治疾患研究所)
 
研究区分
                      厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
                  研究開始年度
                      平成23(2011)年度
                  研究終了予定年度
                      平成25(2013)年度
                  研究費
                      14,560,000円
                  研究者交替、所属機関変更
                      -
                  研究報告書(概要版)
研究目的
             マウスAPOBEC3は、Vifの有無に関わらずHIV-1複製を阻害する。本研究は、ヒトAPOBEC3GのN-末端と相同なマウスAPOBEC3のZ2ドメインを大量発現させ、ウイルス及び細胞タンパク質との相互作用を解析、その結晶化を試みるとともに、構造・機能に対するexon 5の役割を明らかにして、ヒトAPOBEC3GにVifによる阻害を受けないHIV-1複製抑制能を付与する分子設計の基盤を築くことを目的とした。
      研究方法
             1)マウスAPOBEC3がデアミナーゼ活性に非依存的にレトロウイルス複製を阻害出来る機構を解明するため、ウイルスタンパク質との直接的相互作用を、試験管内転写翻訳系とpull-down法により生化学的に解析した。また、APOBEC3の存在がウイルスタンパク質のプロセシングや粒子成熟に与える影響を、Western blot法とネガティブ染色電子顕微鏡法で解析した。
2)APOBEC3遺伝子の多型がタンパク質立体構造とレトロウイルス複製に与える影響を、ヒトAPOBEC3Cの結晶構造解析データを基にしたモデリングと、site-directed mutagenesisにより解析した。
3)Z2ドメインの結晶化を目指し、マウスAPOBEC3各対立遺伝子cDNAクローンを大腸菌発現ベクターに移植、精製に用いるタグを除去する酵素反応系を検討した。
4)ヒトAPOBEC3の発現がゲノムDNAに与える影響を、cMYCやPAX5などがん遺伝子を中心に解析した。また、ヒトAPOBEC3遺伝子領域のメチル化と発現の関係を細胞株を用いて解析した。
      2)APOBEC3遺伝子の多型がタンパク質立体構造とレトロウイルス複製に与える影響を、ヒトAPOBEC3Cの結晶構造解析データを基にしたモデリングと、site-directed mutagenesisにより解析した。
3)Z2ドメインの結晶化を目指し、マウスAPOBEC3各対立遺伝子cDNAクローンを大腸菌発現ベクターに移植、精製に用いるタグを除去する酵素反応系を検討した。
4)ヒトAPOBEC3の発現がゲノムDNAに与える影響を、cMYCやPAX5などがん遺伝子を中心に解析した。また、ヒトAPOBEC3遺伝子領域のメチル化と発現の関係を細胞株を用いて解析した。
結果と考察
             1)マウスAPOBEC3分子は、レトロウイルスタンパク質と直接に結合し、構造タンパク質のプロセシングと粒子成熟を阻害することがわかった。
2)マウスAPOBEC3の機能的多型残基はデアミナーゼ活性中心から離れたN-末端側に位置し、それらの側鎖は分子表面の一定領域に近接して局在していた。
3)ヒトAPOBEC3Bの高発現は、ゲノムDNAの変異を誘発し、発がんと関係があることがわかった。また、ヒトAPOBEC3遺伝子領域にはメチル化があり、メチル化と発現量とは相関していた。
      2)マウスAPOBEC3の機能的多型残基はデアミナーゼ活性中心から離れたN-末端側に位置し、それらの側鎖は分子表面の一定領域に近接して局在していた。
3)ヒトAPOBEC3Bの高発現は、ゲノムDNAの変異を誘発し、発がんと関係があることがわかった。また、ヒトAPOBEC3遺伝子領域にはメチル化があり、メチル化と発現量とは相関していた。
結論
             マウスAPOBEC3は、ウイルスタンパク質と直接結合し、構造タンパク質のプロセシングと粒子成熟を阻害する。ヒトAPOBEC3BにはゲノムDNAの変異誘導能があり、高発現は発がんに結び付く。レトロウイルスによる感染の脅威が少ない時APOBEC3の発現低下が進化上有利になるのは、ゲノムDNA変異の抑制と関連があろう。
      公開日・更新日
公開日
          2014-05-26
        更新日
          -