HTLV-1感染モデルを用いた抗HTLV-1薬の探索および作用機序の解析

文献情報

文献番号
201225070A
報告書区分
総括
研究課題名
HTLV-1感染モデルを用いた抗HTLV-1薬の探索および作用機序の解析
課題番号
H24-新興-若手-018
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
上野 孝治(関西医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HTLV-1関連疾患であるATLやHAMは未だ根治的治療法がないため、治療法の開発と並んで発症予防法の開発が急務となっている。いずれの疾患も高プロウイルス量と発症頻度が相関しているため、プロウイルス量を抑えることが発症予防に繋がると考えられる。そこで本研究では個体内でのプロウイルス量を指標として抗HTLV-1薬の探索および作用機序の解析を行う。
このような抗HTLV-1薬の効果判定には感染者に類似した感染プロファイルを示す動物モデルが必要とされるものの、これまで適切なモデルは存在しなかったが、申請者の研究室では感染モデルの構築に成功した。本研究ではこの感染モデルにおけるプロウイルス量を指標として、抗HTLV-1効果を有すると推測される候補化合物の効果を測定を行い、さらに作用機序の解析を行う。本研究の推進により、HTLV-1関連疾患の発症予防が可能になり感染者のQOL向上に繋がると同時に、抗HTLV-1薬の効果判定を行う系が確立され、今後の系統的な抗HTLV-1薬のスクリーニングが可能になる事が期待される。
研究方法
【HTLV-1感染マウスモデル作製】
ヒト臍帯血から磁気ビーズ法によりCD133陽性造血幹細胞を単離し、NOG-SCIDマウスの骨髄内に移植した。移植後2~3ヶ月後に採血を行い、ヒト免疫細胞が生着し正常に分化したことを確認した。その後HTLV-1感染細胞を腹腔内投与することでHTLV-1感染を行った。
【プロウイルス量の測定】
モデルマウスから血液を採取し、ゲノムDNAを精製した後、HTLV-1 pX領域を増幅するプライマーセットを用いてRT-PCRを行い測定した。
【抗HTLV-1薬の投与】
AZT 125mg/匹/日 および IFN-α 3万単位/匹/日を感染2週後から4週後まで連日腹腔内投与を行った。17-DMAG 300 µg/匹/日を感染2週後から6週後まで週5日腹腔内投与を行った。その後、経時的に採血しRT-PCRによりプロウイルス量を、FACSにより各種血液細数を測定した。
結果と考察
海外でATLに対する治療効果が報告されているAZT・IFN-α併用療法について検討を行った結果、血中プロウイルス量が抑制が認められ、さらにAZT単独投与群で投与を中止した後に血中プロウイルス量・感染細胞数が高レベルで維持された個体に対するAZT・IFN-αを再投与によりプロウイルス量が減少した。この結果は慢性型ATLに対してAZT・IFN-α併用療法が有効であるとの報告を再現したものであると考えられ、AZT・IFN-α併用療法の有用性の再確認ならびに抗HTLV-1薬スクリーニング系の妥当性が示された。
新規候補化合物としてタンパクシャペロンHsp90の阻害剤である17-DMAGについて検討を行った。17-DMAGはin vitroにおいて、ウイルス性転写活性化因子Taxの不安定化の誘導およびHTLV-1感染細胞の増殖抑制効果が明らかになっている。Taxを介した抗HTLV-1が期待される17-DMAGについて検討を行った。17-DMAGは代表的なHsp90阻害剤であるGeldanamycin(GA)の類縁体で、GAの臨床応用で問題であった肝毒性と水溶性を改良した化合物である。このin vivoにおける効果を検討した結果、AZT・IFN-αと同様に血中プロウイルス量の増加を抑制し、期間生存率も対照群に比べ亢進していたことから、17-DMAGは抗HTLV-1薬として有用である可能性が示唆された。
結論
上記の研究結果より、in vivoでのプロウイルス量を指標とした抗HTLV-1薬のスクリーニングにおける本感染モデルの妥当性が確認された。AZT・IFN-α併用療法の有効性の再確認と同時に、投与中止後もプロウイルス量が低レベルで維持されるという興味深い知見が得られた。17-DMAGに関してもAZT・IFN-αと同様に抗HTLV-1薬としての有効性が示された。

公開日・更新日

公開日
2013-06-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201225070Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,500,000円
(2)補助金確定額
6,499,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,225,416円
人件費・謝金 711,098円
旅費 63,450円
その他 0円
間接経費 1,500,000円
合計 6,499,964円

備考

備考
補助金の返還1000円単位であるため。

公開日・更新日

公開日
2016-07-05
更新日
-