侵襲性真菌症例から分離された原因真菌の分子疫学解析と疫学データべース化を用いた院内感染対策の研究

文献情報

文献番号
201225067A
報告書区分
総括
研究課題名
侵襲性真菌症例から分離された原因真菌の分子疫学解析と疫学データべース化を用いた院内感染対策の研究
課題番号
H24-新興-若手-015
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
田辺 公一(国立感染症研究所 生物活性物質部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、国内の主要医療機関において侵襲性感染を引き起こしたCandida属、特に分離頻度の高いC. albicansを収集し、感染症発生動向と分離菌の薬剤感受性を検証することを目的とする。分離された菌の菌学的解析、分子疫学的解析を通じて、これらに共通する特定の遺伝学的パターンや因子の存在を検討する。さらに、特定分子系統の菌種において発病がより高頻度に認められるのかの検討を行い、最終的に分子疫学型と予後に関するデータベースを構築する。これにより、どのような症例により重大な関心を払うべきかや、発病リスクを低減する院内環境整備など内因性感染、院内感染対策に活用することで生命予後の改善を図るとともに、効果的な治療を通じた国民医療費軽減にも貢献することを目的とする。
研究方法
<菌株輸送のプロトコル・倫理審査>
 埼玉医科大付属病院・検査部より菌株を分与していただくために打ち合わせを行った。以下の項目について検討を行った。①どのような臓器から分離された菌を対象とするのか、②倫理審査に関して必要な手続き、患者への同意書の必要性、③菌株発送の期間と担当者。
<Candida株遺伝子解析>
 最も分離頻度の高いC. albicansについてMLST解析を行うことにした。7遺伝子の特定の領域をPCRで増幅し、塩基配列決定を行うが、多数の菌株を解析するためには再現性の高いコロニーPCR法の確立が必要不可欠であると考えた。コロニーPCRのための、サンプルの前処理、ポリメラーゼの選定、PCR産物の精製について条件検討を行った。
 埼玉医科大付属病院より菌株を分与いただく前に、千葉大学真菌医学研究センターより分与いただいていた臨床分離株を用いて、実験条件の検討を行った。
結果と考察
<菌株輸送のプロトコル・倫理審査>
 まず、どのような臓器・組織から分離された菌株を対象とするかを検討した。侵襲性感染を起こした、すなわち血液や閉鎖膿などの無菌的検体から分離された菌株の対照コントロールとして皮膚や口腔粘膜から分離された菌株についても検討することとした。
<Candida株遺伝子解析>
 コロニーPCRのサンプル前処理に関して、①PCR反応液に直接菌体、②煮沸(95℃、5分)、③細胞壁酵素処理(zymolyase)、④関東化学DNA抽出試薬の3つの条件を検討した。菌体直接法および煮沸法では、必要な7遺伝子のPCRがすべて成功する確率が著しく低かった。Zymolyase法の成績は比較的良好であったが、酵素液調製に手間がかかる点と、zymolyaseのロット間での活性に差が認められた。一方、関東化学のCica Geneus® DNA Extraction Reagent STを用いて実験を行ったところ、極めて再現性の高い結果が得られた。以降、DNA抽出試薬を用いた方法を採用した。DNAポリメラーゼについては複数検討したが顕著な差異が認められなかったため、価格と増幅効率の面で優れていたEx Taq (TAKARA) を用いることとした。また、非特異的増幅があると、塩基配列決定の際に、目的のPCR産物をゲル精製する必要が生じるために、PCR温度サイクルを調節し、電気泳動で完全に単一バンドになるような最適条件を決定した。
日本という比較的単一民族で構成された国における全国的調査が実現すれば、固有の遺伝子型をもつCandida株が存在する可能性も高く、日本国内でのカンジダ症治療における有用な疫学情報が得られるものと期待される。今後、薬剤感受性試験も並行して行い、院内感染症対策に有用な情報を得る予定である。
結論
埼玉医科大付属病院・検査部より菌株を分与していただくための準備を行った。多数のC. albicans株のMLST解析を効率よく行うための実験系を構築した。

公開日・更新日

公開日
2013-06-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201225067Z