結核の革新的な診断・治療及び対策の強化に関する研究

文献情報

文献番号
201225061A
報告書区分
総括
研究課題名
結核の革新的な診断・治療及び対策の強化に関する研究
課題番号
H24-新興-一般-011
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 誠也(公益財団法人結核予防会結核研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 岡田 全司(独立行政法人国立病院機構近畿中央胸部疾患センター臨床研究センター)
  • 慶長 直人(国立国際医療センター研究所 呼吸器疾患研究部)
  • 御手洗 聡(公益財団法人結核予防会結核研究所 抗酸菌レファレンス部)
  • 前田 伸司(公益財団法人結核予防会結核研究所 抗酸菌レファレンス部)
  • 岩本 朋忠(神戸市環境保健研究所)
  • 和田 崇之(長崎大学熱帯医学研究所 国際保健学教室)
  • 山田 博之(公益財団法人結核予防会結核研究所抗酸菌レファレンス部)
  • 原田 登之(公益財団法人結核予防会結核研究所抗酸菌レファレンス部)
  • 徳永 修(独立行政法人国立病院機構南京都病院小児科)
  • 小林 典子(公益財団法人結核予防会結核研究所対策支援部)
  • 山岸 文雄(独立行政法人国立病院機構千葉東病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
37,445,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班は,新抗結核薬を用いた画期的な治療法の開発,治療開始後の感染性の評価,結核菌の感染性・病原性の評価・解明,抗結核薬作用機序解明への貢献,結核の発病要因・宿主要因の評価・解明,小児結核医療・対策のエビデンス及び課題の明確化,地域連携の評価推進及びDOTS評価指標の検討,免疫状態による標準的医療、経過観察の評価を目的にしている。
研究方法
研究代表者と11人の研究分担者で次の課題について検討を行った。(1)新化学療法剤を含めた治療方法の開発と臨床応用,(2)結核の病態に関連する新規遺伝子及びタンパク発現制御マーカーの探索,(3)結核菌の感染性および病原性に関する細菌学的評価法の開発,(4)次世代シークエンサーを用いた感染性が高いと考えられる結核菌のゲノム解析,(5)結核菌株の遺伝背景と臨床・疫学・細菌学的特徴との関連性の解明,(6)結核菌臨床分離株ゲノム情報の集積と統合的解析,(7)結核菌の病原性と形態学的特徴との関連,(8)インターフェロン-γ遊離試験の予測価値の検討と偽陰性要因の遺伝的解析,(9)小児結核全般の実態調査,(10)DOTSの強化・向上に関する研究,薬剤耐性の実態調査,(11)薬剤耐性の実態調査,(12)再発患者の原因分析のための前向き調査,(13)慢性排菌患者に対する治療の研究,(14)院内感染対策に関する研究。
結果と考察
各課題の結果は次のとおりであった。(1) デラマニド及びカプラザマイシンの新規結核治療ワクチン併用の相乗的抗結核治療効果の検討が進行中である。リファブチン,リネゾリド,メロペネム-クラブラン酸,リファペンチン,モキシフロキサシンの使用に関して,調査票による臨床現場における評価は症例数に制限があったが,それぞれ84.8%,95.2%,100%,80%に有効であった。(2) 治療中の多剤耐性結核患者の全血由来のマイクロRNAとサイトカインの解析を行った結果,miR-31とインターロイキン12受容体β2鎖 (IL12RB2) のmRNA発現量が正の相関を示していた。このことより,miRNAによる蛋白発現制御と宿主免疫反応修飾の可能性が示唆された。 (3) 結核菌の生菌のみをPCR及び塗抹検査で検出する方法の開発を試みた。PCR で用いた試みたPMA, EMAは死菌のみならず性菌の遺伝子増幅も抑制したことから条件をさらに検討する必要がある。塗抹検査ではCTC生菌を検出することが確認できたが,蛍光輝度が低いことと特異度に問題があった。(4) 集団感染事例と確認された株のNGSを使ったゲノム解析によるSNP分析で,得られた遺伝系統と疫学調査結果を比較することで株間の関連を明らかにすることができると考えられた。(5) 結核菌の薬剤耐性化獲得能力を検討し,INH耐性獲得能力に優れている株を発見した。この株の全ゲノム解析によって63ヶ所の遺伝子変異が,この菌株個性の責任遺伝子候補として特定された。(6) 次世代シーケンサーを用いた全ゲノム解析によって,菌株個性解析や分子疫学領域において有用なデータ基盤が構築された。(7) 透過型電子顕微鏡による結核菌の超薄連続切片観察からの三次元構築を行った。結核菌とNTM菌のコード形成の比較検討を行った。正確な形態計測データにはCryo-TEM観察値が最適と考えられた。急速凍結標本作製方法の改良を行った。(8) 全国保健所を対象にしたQFT検査後の結核発病調査を開始した。 (9)①小児結核全例の把握を目指して実態調査を実施し,結果に基づき,今後の取り組みを提案した。②QFTとT-Spot TBの小児における診断特性は有意な差はないと推測された。③ BCG副反応に関するアンケート調査を実施した。(10) DOTSの質の向上を目的に,①治療継続や効果的な連携に関する検討,②外来DOTS実施状況調査,③服薬支援者育成DVD教材の評価,④喫煙と治療成績の分析を行った。(11) 薬剤耐性全国調査の実施の可否を検討した。(12) 標準治療を行えた人の再発要因を検討するために前向き研究を実施している。(13) 日本で近い将来入手可能となる薬以外の薬を必要とする慢性排菌患者の治療のためには,先進医療の制度にのっとった対応が必要であるが,経済的な問題を解決する必要がある。(14) 2000年に策定した「結核院内(施設内)感染予防の手引き」の改訂案を作成した。
結論
本研究班は新結核菌の感染性・病原性の解明,発病要因・宿主要因,抗結核薬を用いた治療,DOTSの強化・向上,小児医療の課題等について多角的なアプローチを取っており,初年度として概ね良好な成果が得られた。

公開日・更新日

公開日
2013-06-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201225061Z