病原体解析手法の高度化による効率的な食品由来感染症探知システムの構築に関する研究

文献情報

文献番号
201225055A
報告書区分
総括
研究課題名
病原体解析手法の高度化による効率的な食品由来感染症探知システムの構築に関する研究
課題番号
H24-新興-一般-005
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
寺嶋 淳(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 八柳 潤(秋田県健康環境センター 細菌班)
  • 甲斐明美(東京健康安全研究センター 微生物部)
  • 松本昌門(愛知県衛生研究所 微生物部)
  • 勢戸和子(大阪府立公衆衛生研究所 感染症部細菌課)
  • 中嶋 洋(岡山県環境保健センター 細菌科)
  • 堀川和美(福岡県保健環境研究所 病理細菌課)
  • 伊豫田 淳(国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 片山和彦(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 村上耕介(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 藤井克樹(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 朴英斌(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 三瀬敬治(札幌医科大学医学部 医療人育成センター)
  • 鈴木善幸(名古屋市立大学大学院 システム自然科学研究科)
  • 朴三用(公立大学法人 横浜市立大学大学院 生命ナノシステム科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
39,705,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品由来感染症の原因ウイルスや細菌の遺伝学的解析方法について検討し、高度な解析能を有する手法を標準化して利用した病原体解析を行う。また、原因解明のために解析結果を関連機関において共有して当該感染症の予防や制御に資する情報が提供可能なネットワークを構築することを目的とする。原因病原体の解析データと疫学情報を含むデータベース(DB)をオンラインで利用することにより、食品由来感染症の発生に即応できる情報を提供できる体制を構築する。
研究方法
1) BioNumerics(BN)とBN serverによるPFGE菌株解析情報DBの更新を継続する。サーバ利用による情報掲示板機能を充実させ、腸管出血性大腸菌(EHEC)O157については、IS-printing system(ISPS)のDB構築と改良を継続する。PFGE及びISPSの精度管理を継続し、EHEC O157, O26, O111等のMultilocus variable-number tandem repeat analysis(MLVA)による解析結果についてDB化を進める。
2) ノロウイルスにおいて、ORF1にコードされるVPg, ORF3にコードされるVP2は、構造タンパク質と非構造タンパク質の性質を併せ持つことが予測されているが分子構造が明らかにされていない。これら2種類のタンパク質のX線結晶構造解析を行うため、大腸菌で発現させ、結晶化することを試みる。ロタウイルスのサブタイピングを目的として、ロタウイルスのゲノムのポリアクリルアミドゲル電気泳動(RNA-PAGE)によるタイピングを試みる。CaliciWebの継続的な更新とロタウイルスの情報を収載したGutVirus Webとして拡大整備し、流行予測プログラムの開発等を行い更なる充実を図る。
結果と考察
パルスネットを有効に機能させるため継続的な精度管理を実施するとともに、BN serverを利用したPFGE及びMLVAのDB構築を継続した。感染研のPFGE DB入力結果がオンラインで6分担研究者に利用できる状況となった。さらに、EHEC O157の解析では、ISPSによる解析結果DBを構築し分担研究者からの直接入力も実施した。H24年に北海道で発生したEHEC O157の事例では、ISPSの簡便さと迅速さが広域発生の探知に有用であった。ウイルスでは、立体構造のデータ、タンパク質の機能も加味した分子疫学ツールである、GutVirusWebの構築を目指した。ノロウイルスの多機能タンパク質VPg, VP2の発現、結晶解析では、VPg, VP2タンパク質共に不要化画分へ移行しやすく、可溶化画分に回収されたタンパク質も、透析中に析出しやすい傾向があった。また、ロタウイルスの分子疫学基盤構築のため、RNA-PAGEによる簡便かつ網羅的スクリーニング手法の確立を開始した。GutVirus Webの構築に関して、英語でのフォーラム運用により、GutVirusWebを国際的情報交換の場とすることも考えられた。
結論
効率的な食品由来感染症探知システムを構築するために、病原体解析情報DBとしてウイルスではCaliciWeb、細菌ではパルスネットを継続的に稼働させている。これらのシステムではそれぞれのDBに正確な病原体解析情報が蓄積されることが必須であることから、解析手法の精度管理とともに、より解析能力が高く簡便迅速な手法を採用してゆくことが重要である。

公開日・更新日

公開日
2013-06-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201225055Z