ワクチンにより予防可能な疾患に対する予防接種の科学的根拠の確立及び対策の向上に関する研究 (24170201)

文献情報

文献番号
201225053A
報告書区分
総括
研究課題名
ワクチンにより予防可能な疾患に対する予防接種の科学的根拠の確立及び対策の向上に関する研究 (24170201)
課題番号
H24-新興-一般-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
大石 和徳(国立感染症研究所 感染症情報センター)
研究分担者(所属機関)
  • 石和田 稔彦(千葉大学 医学部付属病院)
  • 井上 直樹(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
  • 庵原 俊昭(国立病院機構三重病院)
  • 生方 公子(北里大学 北里生命科学研究所)
  • 大日 康史(国立感染症研究所 感染症情報センター)
  • 岡田 賢司(独立行政法人国立病院機構福岡病院)
  • 岡部 信彦(川崎市衛生研究所)
  • 蒲地 一成(国立感染症研究所 細菌第二部)
  • 砂川 富正(国立感染症研究所 感染症情報センター)
  • 齋藤 昭彦(新潟大学 大学院医学研究科)
  • 竹田 誠(国立感染症研究所 ウイルス第三部)
  • 多屋 馨子(国立感染症研究所 感染症情報センター)
  • 常 彬(国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 富樫 武弘(札幌市立大学 看護部)
  • 中山 哲夫(北里大学 北里生命科学研究所)
  • 平原 史樹(横浜市立大学 大学院医学研究科)
  • 細矢 光亮(公立大学法人福島県立医科大学)
  • 宮崎 千明(福岡市立西部療育センター)
  • 森 康子(神戸大学 大学院医学研究科)
  • 吉川 哲史(藤田保健衛生大学 )
  • 吉田 弘(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
56,940,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、 (1) 2012年の国内麻疹排除eliminationに向け、効果的な対策の立案ならびにその評価を行い、先天性風疹症候群の有効な発生予防策の考案、妊婦の風疹罹患時の相談体制の整備とその検証を可能にする、(2)水痘ワクチンの2回目接種時期を明らかにし、またムンプスワクチンの有効性を評価する、 (3) ムンプスウイルスの国内流行状況、流行の変遷を明らかにする、(4)ロタウイルスワクチン導入後の腸重積の罹患率の変化を明らかにする、(5) 環境中のポリオウイルスの侵入を早期探知する、(6) 乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンの市販後の安全性に関する調査と接種勧奨再開後の接種動向を明らかにする、(7)Hibワクチン、小児用肺炎球菌ワクチンの公費助成開始後の侵襲性感染症原因菌の動向を明らかにする、(8)成人百日咳の実態を明らかにすることである。
研究方法
本研究班は研究代表者1名と臨床および基礎から各9名の研究者および疫学研究者3名、合計22名の分担研究者から構成されており、「ワクチンにより予防可能な疾患に対する予防接種の科学的根拠の確立及び対策の向上に関する研究 」について広汎かつ多角的な研究を実施した。
結果と考察
2008-2011年度の市区町村における麻疹対策の現状を調査し、予防接種率と比較検討することで高い接種率の達成のための疫学解析が実施できた。妊婦の風疹罹患数が増加し,顕性風疹罹患妊婦の相談事例が増加した。罹患妊婦の羊水による胎児感染状況の検査が相談窓口経由事例で7例確認された。ワクチンの感染防御のマーカーとして、ORF61、ORF62、ORF63、ORF66の各蛋白に強い反応性があることを見出した。ムンプスワクチン接種後に急性耳下腺腫脹を認めEIA抗体価が16以上のときは、ムンプスウイルス感染である可能性が高いことが明らかになった。岡山県で流行したウイルス16株の遺伝子型を解析した結果、国内流行株の遺伝子型と同じG型であった。新潟県内において、過去5年間に15歳未満の小児の腸重積入院症例につき調査し、5年間で計300症例、罹患率は小児人口10万人当たり年間19.5であった。また、ベースライン調査では、腸重積1246例が報告され、うち症例定義を1199例が満たした。DTaP-sIPV接種児の3歳以降の抗体測定体制が整備された。OPV停止後のポリオ発生リスクシュミレーションを行い、疫学パラメーター依存性であることを示した。また、国内4か所の下水処理場では、2012年6月以降流入下水からワクチン株は検出されなかった。福岡市における日本脳炎ワクチンの接種状況を平成21年から追跡的に調査し、国の接種勧奨再開によって接種率が大きく増加したことが判明した。Hib菌による髄膜炎の発症数は,ワクチン導入後経年的に減少し,特に2012年にワクチン導入前の20%前後まで激減した。PCV7導入に伴い,本菌による小児の侵襲性感染症も2011年に比べ2012年は半減(47%)した。しかし、PCV7のカバー率は2010年の72.9%から2012年(10月時点):22.0%へと急速に低下していた。関節リウマチの治療薬であるIL-6リセプター単抗体は成人用肺炎球菌ワクチンおよびインフルエンザワクチン接種の免疫原性に影響を受けないことを明らかにした.また、γグロブリン製剤中の肺炎球菌特異抗体価を測定した。DPTワクチンに含まれない抗原(Fim3, catACT, cFHA)とワクチン抗原(PT, FHA, Fim2)を用いて蛍光EIA法を開発し、百日咳流行時期にはFim3抗体が上昇し、Fim2も交叉反応を示した。Fim2, Fim3は発症の1ヶ月で上昇し半年後には低下し、血清診断に有用と判断された。また、百日咳の国内流行株は2000年代後半から多様度が減少し、特定の流行株に集積していることが判明した。予防接種管理ソフトのIPV導入、および4種混合ワクチン導入への対応を行った。来年度以降自治体が維持、管理を行うのに必要な改良を行い、それをサポートするHPを開設した。行動科学の観点から、児に予防接種を受諾する際に鍵となる情報や意思決定プロセスを解明し、ワクチンに関する適切なリスクコミュニケーションのあり方につき検討を行った。
結論
2011年から2012年の風疹流行に対しては産婦人科診療,一般への情報提供,啓発に努めたが、6例のCRSが発生した。妊婦の夫および家族へのワクチン接種を勧奨しているが,流行そのものをなくさない限り全ての妊婦を守りきることはできない.今後、妊婦周辺以外にも予防接種を勧奨し接種率を向上する方策をとるべきである.水痘ワクチンの発症予防のためには2回のワクチン接種が必要であり、接種時期は初回接種1年後頃が適切と判断した。

公開日・更新日

公開日
2013-06-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201225053Z