重症のインフルエンザによる肺炎・脳症の病態解析・診断・治療に関する研究 

文献情報

文献番号
201225052A
報告書区分
総括
研究課題名
重症のインフルエンザによる肺炎・脳症の病態解析・診断・治療に関する研究 
課題番号
H24-新興-一般-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
森島 恒雄(国立大学法人岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 多屋馨子(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 河岡義裕(東京大学医科学研究所 ウイルス学)
  • 長谷川俊史(山口大学大学院医学系研究科)
  • 長谷川秀樹(国立感染症研究所 ウイルス学)
  • 奥村彰久(順天堂大学医学部 小児科学)
  • 伊藤嘉規(名古屋大学医学部附属病院 )
  • 河島尚志(東京医科大学 小児科学)
  • 新矢恭子(神戸大学大学院医学研究科)
  • 塚原宏一(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 莚田泰誠(理化学研究所 ゲノム医科学研究センター)
  • 竹田晋浩(日本医科大学付属病院集中治療室)
  • 中川聡(独立行政法人国立成育医療研究センター病院)
  • 池松秀之(九州大学 先端医療イノベーションセンター)
  • 松川昭博(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 岡部信彦(川崎市健康安全研究所)
  • 宮入烈(国立成育医療研究センター 生体防御系内科部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
40,036,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2009pdmでは、脳症に加えて小児の重症肺炎が大きな問題となった。今後H5N1など高病原性インフルエンザのpdmに備え、肺炎・脳症・多臓器不全など重症例の1.疫学2.臨床像3.病態などを迅速に解明し、予防法・治療法、重症例の診療体制整備などに直結する基礎的・臨床的研究を包括的に実施する。
以上の研究を基礎ウイルス学・病理学・疫学・小児(感染症、神経)・感染症内科・救命救急(小児、成人)による総合的な研究体制で実施していくことが本研究班の特徴である。
研究方法
(1)世界的な新型インフルエンザの動向を調査し、病原性の高いウイルスによるパンデミックの可能性について調査し、病態の把握を行った。
(2)2009pdmを含め重症インフルエンザ特に、脳症・重症肺炎・多臓器不全の病態を解析し、新たな治療法の確立を目指した。特に脳症・ARDSについては具体的な治療法のガイドラインまたは治療法のオプションの作成を目的とした。
(3)H5N1高病原性鳥インフルエンザやそれ以外の侵入の可能性が高い新型インフルエンザについて、上記の病態解析や治療法の確立と同時に、全国調査などを通じて重症例の診療体制整備を提案を予定している。
(4)本症の予後の改善には発症前診断が必須であり、宿主側の発症因子の解明とそれに基づく発症前診断・早期治療を目指している。
結果と考察
結果
(1)2009pdmにおけるインフルエンザ脳症および重症肺炎の臨床像の解析と病態の解明を実析した。重症インフルエンザとくにARDSなどの治療薬開発を目的として、マウスモデルにおいてRedox制御蛋白であるチオレドキシン(RTX)の有用性を明らかにした。 Boyden Chamber法を用いて、サイトカイン・ケモカインによる肺血管内皮透過性亢進を抑制する各種治療薬について検討した(森島、塚原)。
(2)H5N1、2009pdmを含む国外・国内におけるインフルエンザの動向を示した(岡部、池松)。
(3)ウイルス増殖の制御に関わるウイルス側および宿主(細胞)因子を示した(河岡)。
(4)「2009pdm」ウイルスのフェレット感染モデルを作った。ヒト「2009pdm」死亡例においてquasispeciesが認められることを示した(長谷川)。H5N1高病原性鳥インフルエンザ感染モデルとしてサルを用いてDNAマイクロアレイにより急性期宿主mRNAの発現を検討した(新矢)。
(5)「2009pdm」小児の詳細な調査を実施し、特に重症脳症・肺炎の病像を明らかにした。また、全国調査を実施し、2009pdm脳症における種々の治療法の効果を検討した(奥村、河島、市山、伊藤)。
(6)成人および小児における超重症インフルエンザ治療体制について全国調査を実施し、わが国におけるECMOを用いた呼吸不全の治療の実態を示した(竹田、中川、宮入)。
考察
(1) 従来の炎症性サイトカイン・ケモカインによる組織障害に加え、酸化ストレスマーカー、COX2、MMP9などによる血液脳関門(脳症)と空気脳関門(肺障害)の破壊のメカニズムを明らかにし、治療法に繋がる薬剤の可能性を示した。
(2)インフルエンザにおける「脳症」と「重症肺炎」の病態について解析し、両者の病態の違いについて明らかにできた。これは来る「新型」インフルエンザに対する予防・治療の上で極めて重要と思われる。
(3)インフルエンザ脳症宿主側発症因子については現在検討が続いている。
(4)重症インフルエンザの診療体制整備の上で、「重症の脳症」「ARDS」「多臓器不全」について各地域での拠点整備が今後重要な課題となる。
結論
(1)基礎ウイルス学・病理学・疫学・小児(感染症、神経)・感染症内科・救命救急(小児、成人)による総合的な研究体制が効率的に機能している。
(2)従来の炎症性サイトカインなどによる組織障害に加え酸化ストレスなどの障害機序とその治療法が明らかになりつつある。
(3)2009pdmにおける小児死亡例、重症例の全例調査や成人の重症例の調査により、その実態を明らかにし、次期のパンデミックに役立つ情報を得ることができた。
(4)インフルエンザによる重症ARDSに対しては、ECMOによる治療が必須であることが欧米などの海外調査で示された。一方、わが国においては肺機能補助としてのECMOの設置は必ずしも十分でない実態が示された。
(5) 以上から重症インフルエンザの治療ガイドラインあるいは治療法のオプションの設定と診療体制の整備を今後目指していく予定である。

公開日・更新日

公開日
2013-06-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
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研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2016-06-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
201225052Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
19,546,000円
(2)補助金確定額
19,546,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,478,790円
人件費・謝金 497,901円
旅費 406,800円
その他 1,152,509円
間接経費 12,010,000円
合計 19,546,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2016-07-05
更新日
-