医療機関における電気設備の安全管理に関する研究

文献情報

文献番号
199800106A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機関における電気設備の安全管理に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
筧 淳夫(国立医療・病院管理研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
-
研究費
2,404,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、我が国における病院の電気設備の安全管理の現状について情報を把握し、海外での事例を収集する等、今後の医療機関における電気設備の安全管理に必要な要件を定めるための、基礎的資料を収集することを目的として実施した。
研究方法
本研究を実施するために、電気設備の安全管理を行うために定められている基準・指針を把握する目的で、病院管理研究者、電気設備専門家、施設計画研究者などによる、研究班を組織した。 その研究班により、以下に関する研究を実施した。
1.停電時の安全確保に関する基準・指針を整理・分析 医療施設の電気設備に関する基準としては、下記に示すものがあげられる。
●電力設備系
1.電気事業法
電気事業法の施行期日を定める政令、電気事業法施行令、電気事業法施行規則、電気制限規則、電気関係報告規則、電気設備技術規則、電気事業法関係手数料令
2.電気用品取締法
電気用品取締法施行令、電気用品取締法手数料令、電気用品取締法の施行期日を定める政令
3.電気工事士法
電気工事士法施行令および電気工事士法施行規則
4.日本工業規格(JIS)
●情報系
1.電話法規
公衆電気通信法、公衆電気通信法施行規則、有線電気通信法、有線電気通信設備令、有線電気通信設備令施行規則
2.電波法
電波障害法規
●防災(安全)系
1.消防法
消防法施行令、消防法施行規則、火災予防条例(地方条例)、危険物の規則に関する政令、危険物の規則に関する規則
2.建築基準法
建築基準法施行令、建築基準法施行令規則
3.労働法
安全基準
4.航空法
航路障害
●その他
1.その他法規
特殊施設による諸法規
以上の中から、非常用発電装置に関連する部分を抜き出して、整理分析を行った。
2.現状の医療施設に備えられている停電対策設備の問題点の整理・分析
研究班において、病院設備管理実務者及び病院設備設計者に対してヒアリング調査を実施し、停電対策設備の問題点を整理・分析した。
3.米国NEC(National Erectrical Code)に定められている停電対策
National Erectrical Codeの1999年版を入手し、その中に記載されている非常電源装置に関する事項について翻訳を行い、整理・分析を行った。
結果と考察
昭和23年に医療法が施行されてから、医療施設の中で電気設備の基準に関しては整備がされてきていなかったといえる。現在、医療法の成立からすでに50年以上がすぎているが、当時と比較して電気設備の進歩にはめざましいものがあり、それは建築設備上の電気設備にとどまらず、当然のことながら医療機器においても同様である。それ故に、さまざまな基準・指針が医療施設に適したものとなっているのかどうかについては、疑問が生じるところであり、やはり今回の研究結果においてもいくつかのギャップが明らかとなった。
本研究では、停電時の非常用電源設備を主として研究の対象としているが、まずその中で停電については電力会社は免責していることが明らかとなった。すなわち、停電による被害についてはすべて各事業主すなわち各病院が責任を持たねばならない。つまり、停電への対策はひとえにそれぞれの病院が責任を持ってたてる必要があることになる。現実には、無停電電源装置と非常用電源により対応することになる。日本工業規格(JIS)の中には病院電気設備の安全基準(T1022)において非常用電源の規格が定められており、非常用電源はその用途から以下の3種類に分けられている。
(1)一般非常電源 商用電源が停止したとき、40秒以内に電力供給を回復しなければならない医用電気機器に電力を供給する場合。
(2)特別非常電源 商用電源が停止したとき、10秒以内に電力供給を回復しなければならない医用電気機器に電力を供給する場合。
(3)瞬時特別非常電源 商用電源が停止したとき、0.5秒以内に電力供給を回復しなければならない医用電気機器に電力を供給する場合。
この規格の中では、それぞれの回路に接続が想定される医用機器が具体的に示されている。
しかし、現実にはこのJIS規格に従っていない病院もあることがヒアリング調査から明らかとなった。すなわちJIS規格にある基準を厳守する義務が病院にないために、コスト負担を強いられる設備の強化の困難さが伺えた。
一方、設備の維持管理に関しては一般に用いられている「保安規定」を雛形としてそれぞれのケースにおいて自主作成しているのが現状であった。
米国においては病院内の電気配線の幹線をダブルにしており、日常のメンテナンスに対応できるようにしている。それに対して日本では、事故が起きた場合やメンテナンスの場合には、電気の送電を止めてメンテナンスや修理をするという一般建築物の方法が一般的に導入されている。しかし、24時間電力供給を止めることができない病院においては、このような一般建築物の維持管理方法がそぐわないことが明らかになった。
結論
本研究において、病院における非常時の電力確保のための基準・指針を整理分析することにより、現在使われている非常電源をはじめとする、非常用電源設備の問題点が明らかになった。とくに、確保すべき安全性のレベルとコスト負担との問題が、今後の基準や指針で指導する際の課題となると考えられる。

公開日・更新日

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