HTLV-1感染症予防ワクチンの開発に関する研究

文献情報

文献番号
201225044A
報告書区分
総括
研究課題名
HTLV-1感染症予防ワクチンの開発に関する研究
課題番号
H23-新興-一般-029
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 秀樹(国立感染症研究所 感染病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 俣野哲朗(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
  • 梁 明秀(横浜市立大学大学院 医学研究科)
  • 外丸詩野(北海道大学大学院 医学研究科)
  • 田中正和(関西医科大学 微生物学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
27,104,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では国内に100万人を超える感染者がおり過去20年間でその数は僅かに減ったのみであり感染者を減らす為に感染予防ワクチンの開発を目的とする。HTLV-1感染症は、低頻度ながらもATL等重篤な疾患を引き起こす感染症である。本研究は、このHTLV-1感染症の克服に向け、HTLV-1感染の予防、感染者の発症予防あるいはATL発症者の治療に結びつくワクチンの開発を目指すものである。

研究方法
ワクチン抗原候補としてHTLV-1がコードするすべての蛋白をコムギ無細胞タンパク質合成系を用いて全長蛋白を合成する。作成したコムギ無細胞タンパク質合成系により合成されたenv蛋白をマウスモデルを用いて経鼻免疫した。モデル抗原を用いて経鼻でワクチン接種した際に母乳中に抗原特異的IgA抗体とIgG抗体を解析し経母乳感染するHTLV-1の感染防御ワクチンのワクチンルートとして粘膜投与の可能性を調べた。マウスにおいて、HTLV-1 Tax特異的CTL反応を誘導し、Tax発現細胞増殖抑制効果を検討する。さらに、ATL細胞特異的に誘導されるCTL反応を解析した。
NOG マウス骨髄内にヒト臍帯血由来造血幹細胞を移植しHTLV-1を感染させ“HTLV-1感染ヒト化マウス”を構築した。上記タンパク質ライブラリーを活用し、HTLV-1タンパク質に対する微量抗体測定法を開発した。老齢で発症するHTLV-1関連疾患ワクチンの老齢でのワクチン効果を調べる為老化モデルマウスでの免疫応答を調べた。
結果と考察
コムギ無細胞タンパク質合成系を用いてHTLV-1がコードする全ての蛋白の全長蛋白を合成する事に成功した。モデル抗原の母マウスの経鼻接種により血清のみならず母乳中に抗原特異的IgG抗体、IgA抗体を誘導する事ができた。この事はキャリアの母親を免疫する事により母乳を介した子供への感染が防げる可能性を示唆している。HTLV-1感染モデル動物としてヒト造血幹細胞のNOGマウス骨髄内への移植により作製したヒト化マウス(IBMI-huNOG)にHTLV-1を感染させることで、抗HTLV-1抗体およびTax特異的CTLの誘導とともに、ATLに特徴的な感染ヒトCD4+CD25+Tリンパ球細胞のクローナル増殖と花弁様分葉核を持つTリンパ球の出現が再現された。抗HTLV-1ワクチン開発におけるモデル動物として利用できることが示された。今後、この感染モデルを用いることで、、ATL発症予防ワクチンの評価が可能であると考える。また、老化モデルマウスにおいては様々な免疫応答が低下している事が明らかとなり高齢者におけるATL発症予防ワクチンの開発に重要な知見が得られた。
結論
本研究により母親へのワクチン接種により母乳中にHTLV-1 gp46に対する抗体を誘導可能であることが明らかとなった。母乳中抗体によるHTLV-1感染阻止効果が認められれば、HTLV-1キャリアに対する新規ワクチンとなる可能性がある。コムギ無細胞タンパク質合成系を活用し、HTLV-1抗原タンパク質を作製した。HTLV-1 Taxトランスジェニックマウス由来ATL細胞を移植したマウスにおけるTax特異的CTL反応誘導を示す結果を得た。β5t-Tgマウスはプロテアソームの機能異常による免疫応答の変化を解析できる有用なモデルであると考えられる。HTLV-1感染細胞の経口投与によるヒト化マウス感染系において、ヒト未発症感染者(ウイルスキャリア)と同等な持続感染モデルを確立することに成功した。同マウスにおいては、感染細胞と宿主免疫との平衡関係が成立している可能性が強く示唆されることから、ATL発症予防ワクチン開発を進める上で重要な実験基盤を提供すると考える。

公開日・更新日

公開日
2013-06-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201225044Z