経鼻インフルエンザワクチン等粘膜ワクチンの有効性に関する研究

文献情報

文献番号
201225037A
報告書区分
総括
研究課題名
経鼻インフルエンザワクチン等粘膜ワクチンの有効性に関する研究
課題番号
H23-新興-一般-015
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 秀樹(国立感染症研究所 感染病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 奥野 良信(一般財団法人阪大微生物研究会)
  • 田代 眞人(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
  • 新井 洋由(東京大学大学院 薬学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
23,997,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新型インフルエンザにも対応可能なより予防効果の高い経鼻粘膜投与型ワクチンを実用化するための、ワクチンの有効性を高める基盤的研究とヒトでの有効性を評価する方法の確立を目的とする。同時にワクチン候補株の増殖効率、遺伝的安定性、抗原的安定性の解析、および粘膜ワクチンの有効性を高める為の自然免疫応答制御の解明を目的とする。
研究方法
成人ボランティア50名に季節性インフルエンザウイルス(A/Victoria/210/2009 (H3N2))の三倍濃縮全粒子不活化ワクチンを3週間間隔で計2回経鼻接種し継時的に採血と鼻腔洗浄液の回収を行い、ワクチン株に対する中和抗体価及びHI価を測定し評価した。(国立感染症研究ヒトを対象とする医学研究倫理審査委員会の承認済み。)更に高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N1に対する全粒子不活化ワクチンの臨床研究も進行中である。
2012-2013シーズン用季節性インフルエンザウイルスから免疫応答評価用のワクチン原液を作成した。またそのワクチン原液からヒトへの投与を想定した経鼻投与用試作ワクチン製剤を作製し、GLP試験(ラットを用いた毒性・生殖発生試験、及びサルを用いた安全性薬理試験)を開始した。
全粒子不活化インフルエンザワクチンの経鼻接種後に血中に作られる抗体産生細胞の解析を行った。自然免疫の解析としてマウスを用いてインフルエンザウイルス感染とPAFAH2の関連を調べた。
結果と考察
季節性インフルエンザウイルス(A/Victoria/210/2009 (H3N2))の三倍濃縮全粒子不活化ワクチンの2回経鼻接種後、血清のHI価において現行の有効性基準を満たす応答がみられ更に鼻腔洗浄液中に中和抗体価の上昇が認められた。従来、鼻腔洗浄液での中和抗体、HI抗体価の測定は困難であったが、濾過法と濃縮方法を工夫する事により血清と対比させて鼻腔洗浄液の中和抗体、HI抗体を測定する事が可能になった。本方法は今後粘膜ワクチンの評価の為に必須の手法となる事が期待される。全粒子不活化ワクチンの経鼻接種後の回数依存的に末梢血中の抗体産生形質細胞数が増加することが明らかになった。この時IgA抗体産生形質細胞の増加が顕著であった。
PAFAH2はマウスの鼻腔上皮に比較的高く発現していることが明らかとなりインフルエンザウイルス感染後PAFAH2ノックアウトマウスではインターフェロン応答に関わる遺伝子(IFNA4、IFNB、ISG54)の発現誘導が野生型マウスに比べ有意に増強していた。
結論
全粒子不活化ワクチンの経鼻接種により血清の中和抗体だけでなく鼻腔粘液中の中和抗体がヒトで誘導される事がしめされた。新規ワクチンである経鼻インフルエンザワクチンの実用化時に必要になる有効性の指標の為の科学的根拠を示す事ができる。また、経鼻ワクチン接種後にIgA優位の抗体産生細胞が血中に誘導される事が明らかとなり、ワクチン効果の指標になる可能性が示唆された。試作ワクチンのGLP試験によりワクチンの安全性が確認される。インフルエンザウイルス感染時に脂質代謝に関連した酵素であるPAFAH2とインターフェロン関連遺伝子の関係が有る事が示唆され、免疫応答増強の為の基礎的知見が得られた。

公開日・更新日

公開日
2013-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201225037Z