インフルエンザウイルス複製に関与する宿主因子とウイルス因子のインターフェースを標的とした新規抗ウイルス薬探索の基盤研究

文献情報

文献番号
201225035A
報告書区分
総括
研究課題名
インフルエンザウイルス複製に関与する宿主因子とウイルス因子のインターフェースを標的とした新規抗ウイルス薬探索の基盤研究
課題番号
H23-新興-一般-013
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
永田 恭介(筑波大学 医学医療系)
研究分担者(所属機関)
  • 朴 三用(横浜市立大学 大学院生命ナノシステム科学研究科)
  • 夏目 徹(産業技術総合研究所 バイオメディシナル情報研究センター)
  • 信澤 枝里(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
20,452,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
既存の抗インフルエンザウイルス薬は、変異率の高いウイルス遺伝子を標的としたものが主体であり、薬剤耐性株が出現しやすい。この問題を克服する一案とし て、高度に保存されたウイルス因子もしくはウイルス因子に作用する宿主因子とウイルス因子の相互作用を標的とした新規抗ウイルス薬を開発することがあげられる。それには、ウイルス因子と宿主因子の機能および構造を明らかにすることが必須である。
研究方法
我々が同定した宿主因子UAP56とウイルス因子であるNPの相互作用機構を、生化学的解析法により明らかにした。また、UAP56との相互作用に必須なアミノ酸残基に変異を導入したウイルス株をReverse Genetics法により作出し、その増殖能を検討した。また、in silicoスクリーニングを用いて化合物を探索し、バイオアッセイにより候補化合物の抗インフルエンザウイルス活性を評価した。
結果と考察
NPはRNA結合タンパク質であり、ウイルスゲノムが構成するribonucleoprotein(RNP)複合体の主要構成因子である。子孫RNP複合体形成では、ウイルスゲノム複製反応と協調して、UAP56が分子シャペロンとして機能することでNPが子孫ウイルスゲノムへとリクルートされることをこれまで明らかにしている。本年度では、NPおよびUAP56の各種欠損変異体を作製し、結合領域を決定した。その結果、NPのN末端から20アミノ酸の領域がUAP56のC末端部分と結合することが明らかになった。一方、細胞内でのUAP56の標的因子としてU2AF65が報告されており、U2AF65のUAP56との結合領域も明らかにされている。そこで、NPとU2AF65のUAP56結合部位のalphaへリックス上のアミノ酸配置を予測して比較したところ、共通して、同じ表面上に疎水性アミノ酸残基が露出していることが明らかになった。さらに、その疎水性アミノ酸の点変異株を作出したところ、どの変異株でも顕著にUAP56との結合が低下し、ウイルス増殖が低下した。
 また、昨年度では、in silicoスクリーニングを用いて、約300万の化合物データベースより約200の化合物を選定し、抗インフルエンザウイルス活性をもつ化合物としてNo.38を同定し、Molecular dynamicsシミュレーションによる相互作用占有率の予測と、ドッキングシミュレーションの精度を向上することができた。今年度は、昨年度に得られた化合物をもとに、スキャッフォールドホッピング法を構築することで、化合物の物性(細胞毒性やウイルス阻害効果)を改善する方策を構築できた。また、得られた化合物が相互作用するアミノ酸部位を予測し、そこに変異を導入することで、ウイルス産生量が顕著に低下したことから、ケミカルバイオロジーとしてのMolecular dynamicsシミュレーションの有用性も示すことができた。
結論
NPの結晶構造は、既に2006年に決定されている。しかし、本研究で明らかにしたUAP56との結合ドメインは、Unfoldingな領域であり、NP単独では特定の構造を形成できない。よって、UAP56と結合することで、誘導適合し、初めて安定した構造をとることが推測され、抗ウイルス薬の標的部位として非常に良い候補であると考えられる。現在、NP-UAP56複合体の構造解析を準備している最中である。
本年度、独自に構築したスキャッフォールドホッピング法により、非常に高い効率でウイルス阻害活性を維持しながら、母核の改変を行うことができ、その結果、細胞毒性を低下させることに成功した。今後は、SH-4およびSH-28をもとに、さらに誘導体展開を行う。また、これまでのスクリーニングでは、PB1を模倣した化合物を探索してきた。さらに今後は、ペプチドミミックでなくとも、PAの結晶構造上、化合物の標的となりやすい立体構造を探索する方法論を構築し、実際にスクリーニングを展開する予定である。

公開日・更新日

公開日
2013-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201225035Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
23,519,000円
(2)補助金確定額
23,519,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 12,352,029円
人件費・謝金 7,771,936円
旅費 220,620円
その他 107,415円
間接経費 3,067,000円
合計 23,519,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2016-07-05
更新日
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