我が国への侵入が危惧される蚊媒介性ウイルス感染症に対する総合的 対策の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201225032A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国への侵入が危惧される蚊媒介性ウイルス感染症に対する総合的 対策の確立に関する研究
課題番号
H23-新興-一般-010
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
高崎 智彦(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 小西英二(大阪大学微生物研究所)
  • 森田公一(長崎大学熱帯医学研究所)
  • 高橋和郎(大阪府公衆衛生研究所)
  • 永田典代(国立感染症研究所 感染病理部)
  • 沢辺京子(国立感染症研究所 昆虫医科学部)
  • 濱田篤郎(東京医科大学病院 渡航者医療センター)
  • 鈴木隆二((独)相模原病院臨床研究センター)
  • 江下優樹(大分大学医学部 感染分子病態制御講座)
  • 梅 敏苓(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
  • 倉根一郎(国立感染症研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
22,178,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
デングウイルス(DV)、チクングニアウイルス(CHIKV)はネッタイシマカとヒトスジシマカを媒介としてヒトに感染する。DVはデング熱や出血熱という異なる病態を惹起する。地球温暖化と流行地の都市化現象により流行拡大が最も危具され、日本の輸入症例も年々増加している感染症である。また、2005年に西インド洋諸国で大流行したチクングニア熱は、南アジアや東南アジアに流行が拡大した。蚊媒介性ウイルス感染症流行の拡大傾向下で、より迅速な実験室診断法を開発し地方衛生研究所、検疫所等に技術移転する。海外渡航者への啓発ガイドブック等を作成し、海外での感染防止策を確立する。媒介蚊対策は、国内のヒトスジシマカがCHIKV、DV媒介能があるため、国内蚊の両ウイルス感受性を検討する。多くの日本人はDVと近縁な日脳ウイルス(JEV)抗体を保有している。抗日脳抗体がDV感染者における感染増強現象を、Fcレセプター発現BHK細胞を用いて感染増強抗体を測定し、日本人の重症デング熱発生頻度を推定する。また、細胞培養日脳ワクチンを旅行者ワクチンとして評価する。
研究方法
現場で迅速に対応できる前処理簡略化検査法確立のためにLAMP法のDV、CHIKV検出法(ヒト検体および蚊)を改良した。またJEVレプリコンを用いて1回感染性粒子産生系を構築し、抗原性の保持だけでなく中和試験など機能的検査にも利用できる方法を検討した。抗体検査では、より高感度なイムノクロマト法を開発した。DVに感受性の高いマーモセットが、CHIKVに感受性があるかを病理学的に検討した。マーモセットの免疫学的背景は不明な部分が多い。そこでマーモセットのCD14、IL-1a、IL-1b、IL-12b遺伝子およびT細胞レセプター遺伝子のα、β鎖可変領域遺伝子を同定したデータをもとに、免疫関連遺伝子発現量を評価できる定量リアルタイムPCRを検討した。タイとフィリピンのネッタイシマカ、ヒトスジシマカに関し、ペルメトリンなど薬剤に対する感受性を検討した。海外渡航者や海外派遣企業の健康管理担当者を対象に、蚊媒介感染症のうちでもデング熱に関する意識調査や知識レベルをアンケート調査、e-learning Webサイトを通じて調査した。
結果と考察
1)DV新規中和抗体測定法を評価、従来法より生体内の防御能を反映することが明らかとなった。ウイルスRNAの常温安定化法の有効性を確認した。2)遺伝子情報のみで同一表面を持つウイルス作製系が機能的検査にも応用できた。変異ウイルスなどへの対応が容易になる。3) DV全血清型対応型RT-LAMP法を開発した。GENECUBE遺伝子迅速診断法はDV1-4型すべて検出可能であった。4)健常成人への細胞培養日脳ワクチンの1回接種による有効率は88%であったが、接種1年後には抗体価は約1/4に低下し、陰転率は21.4%であった。旅行者ワクチンとしての使用法を考える必要がある。5)フィリピン、タイの媒介蚊の薬剤耐性率が高いことが判明した。6)デング熱に関心は高いが、流行状況や媒介蚊の対策特にデング熱媒介蚊が夕方や明け方に活動するという知識に乏しかった。媒介蚊に関する啓発ツールの開発が必要である。7)マーモセットに対する免疫学的ツールを開発し実用性を確認した。DV、CHIKV感染実験における免疫応答を評価できる。8)CHIKV、DV感染蚊および患者全血から直接増幅・検出が可能であることを確認した。9)マウスに短時間DENV血症おこしマウスを吸血させ感染蚊作製ができた。10)タイの野外蚊に薬剤抵抗性が認められ、その抵抗性はナトリウムチャネルの点突然変異に起因していた。11) CHIKV感染マーモセットの病理学的に解析し、脾臓,リンパ節,肝臓のマクロファージや内皮系細胞にウイルス抗原や遺伝子を検出した。
結論
現場対応遺伝子検査法としてRT-LAMP法の確立と蚊および臨床検体(血液)への応用を検討し、前処理の簡略化を図った。また、全自動遺伝子解析装置によるDV検出法も検討した。また、イムノクロマト法によるIgM抗体検出キットの開発を開始した。1回感染性JEV粒子産生系を確立し、それらは中和アッセイ等機能的検査法にも使用できる。DV感染動物モデルとして有用なマーモセットのサイトカイン、T細胞関連の遺伝子など免疫学的測定系を確立した。細胞培養日本脳炎ワクチンの旅行者ワクチンとしての有効性は、2回接種が望ましいがその防御抗体の維持能が長くないという問題点が明らかになった。ウイルス遺伝子RNAの常温保存・輸送法を確立した。デング熱流行地の在留邦人の認識度調査を行った結果、媒介蚊に関する知識が不足していることが判明した。日本人海外旅行者向け感染症に関するホームページ、ポスターを作成した。

公開日・更新日

公開日
2013-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201225032Z