潜在性抗酸菌感染症の病態機構の解明及び診断・治療・予防に関する研究

文献情報

文献番号
201225030A
報告書区分
総括
研究課題名
潜在性抗酸菌感染症の病態機構の解明及び診断・治療・予防に関する研究
課題番号
H23-新興-一般-008
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
小林 和夫(国立感染症研究所 免疫部)
研究分担者(所属機関)
  • 御手洗 聡(結核予防会 結核研究所 抗酸菌レファレンス部)
  • 松本 壮吉(大阪市立大学大学院)
  • 杉田 昌彦(京都大学ウイルス研究所)
  • 小出 幸夫(浜松医科大学)
  • 前倉 亮治(独立行政法人 国立病院機構 刀根山病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
21,588,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
世界人類の約1/3(20億人)が結核菌に無症候潜在性感染(日本:2,500万人)しているが、その細胞・分子機構(休眠菌及び宿主因子)は不明である。感染者の約5-10%が活動性結核を発症し、多くの活動性結核は潜在性感染からの内因性再燃に起因している(70-80%)。結核を含む潜在性抗酸菌感染病態機序の解明は新規診断法、抗結核薬やワクチン開発を促進し、結核制圧に寄与することが期待される。潜在性抗酸菌感染に関わる宿主および菌の分子機構を解明し、病態の理解、診断・治療やワクチン標的候補の探索を目的とした。
研究方法
抗酸菌遺伝子・蛋白質・脂質や糖脂質解析、薬剤感受性、宿主免疫応答、DNAワクチンの作製、潜在抗酸菌感染の臨床検査体外診断(酵素抗体法)を用いた。生命倫理、動物愛護や遺伝子組換実験など、規程に準拠し、機関承認を得た。利益相反はなかった。
結果と考察
長期低酸素培養結核菌は死菌と休眠生菌の混合状態と考えられ、増殖期と異なる形態学的特徴を示し、長期培養株に特異的な発現を示す遺伝子が同定された。休眠分子である抗酸菌DNA結合蛋白質は抗結核薬:isoniazid(INH)抵抗性に関与し、その機構はINH活性化酵素:KatGの発現抑制であった。すなわち、休眠菌のINH抵抗性は薬剤標的遺伝子の変異に依らず、形質抵抗性(phenotypic resistance)に起因していた。潜在感染者でT細胞応答が亢進している休眠結核菌由来蛋白質を12種類同定し、その1つであるRv2031cに由来する蛋白質を免疫遺伝学的に解析し、ワクチン抗原候補としての可能性を示唆した。ヒト陳旧性や潜在性結核菌感染症由来血清は分裂増殖期および休眠期結核菌抗原に対する抗体を含有し、血清診断開発の可能性が示唆された。活動性Mycobacterium avium complex(MAC)感染症の迅速・簡便な特異的血清診断キットは良好な感度(84%)や特異度(100%)を示し、診断における臨床的有用性が確認された。活動性MAC感染症迅速免疫診断キット(キャピリアMAC抗体-ELISA、株式会社タウンズ)は既に製造販売承認・保険収載(点数:120点)されているが、2012年9月から一般臨床検査機関(BML)の受託項目となった。診断所要時間の大幅短縮:3時間(従来法:約1か月)、かつ、体外診断用医薬品であるため非侵襲性・安全であり、保険診療における本キットの普及が期待される。活動性MAC感染症における抗体価の基準(カットオフ)値は0.7 U/mLであるが、基準値を0.3 U/mLに設定した場合、潜在性MAC感染症における血清診断の可能性が示唆された。加えて、本キットの臨床試験はアメリカ合衆国や台湾でも実施され、国際的性能評価が集積しつつある。
結論
・長期低酸素培養結核菌は死菌と休眠生菌の混合状態と考えられ、長期培養株に特異的な発現を示す遺伝子も同定された。
・ヒト陳旧性や潜在性結核菌感染症血清は分裂増殖期および休眠期結核菌抗原に対する抗体を含有し、血清診断の開発に可能性が示唆された。
・休眠結核菌のINH抵抗性は薬剤標的遺伝子の変異に依らず、形質抵抗性(phenotypic resistance)に起因していた。
・潜在感染者でT細胞応答が亢進している休眠結核菌由来蛋白質を12種類同定し、ワクチン抗原候補としての可能性を示唆した。
・活動性MAC感染症に関する迅速・簡便な特異的血清診断キットの臨床的有用性が確認された。活動性MAC感染症迅速免疫診断キットは既に製造販売承認・保険収載されているが、2012年9月から一般検査機関(BML)の受託項目となった。所要時間の大幅短縮:3時間(従来法:約1か月)、かつ、体外診断用医薬品であるため非侵襲性であり、保険診療における本キットの普及が期待される。活動性MAC感染症における抗体価の基準(カットオフ)値は0.7 U/mLであるが、基準値を0.3 U/mLに設定した場合、潜在性MAC感染症における血清診断の可能性が示唆された。加えて、本キットの臨床試験はアメリカ合衆国や台湾でも実施された。

公開日・更新日

公開日
2013-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201225030Z