新型インフルエンザ発生時の公衆衛生対策の再構築に関する研究

文献情報

文献番号
201225025A
報告書区分
総括
研究課題名
新型インフルエンザ発生時の公衆衛生対策の再構築に関する研究
課題番号
H23-新興-一般-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
押谷 仁(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 砂川 富正(国立感染症研究所 感染症情報センター)
  • 和田 耕治(北里大学医学部 公衆衛生学)
  • 神垣 太郎(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 齋藤 玲子(新潟大学大学院 医歯学総合研究科)
  • 吉川 徹(公益財団法人 労働科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
11,970,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
インフルエンザA(H1N1)pdm09ウイルスは2009年に世界中に急速に拡大して、多くの感染者と死亡者が発生するパンデミックを引き起こし、社会的にも大きな問題となった。そもそも新型インフルエンザ対策としては、ワクチンや抗ウイルス薬以外にも、学校等の休業措置・水際対策・手洗いなどの個人防御を含む公衆衛生対策も重要な対策として考えられてきているが、これらの有効性に関する科学的根拠をさらに積み重ねていくことが今後の新型インフルエンザ対策には重要であると考えられる。
我々は研究1年目にインフルエンザ(H1N1)2009に対する公衆衛生対策の有効性に関して文献調査を行い、その成果をウェブに公開した(新型インフルエンザ対策に関するエビデンスのまとめ)。
各国で実施された新型インフルエンザ対策を知ることは、わが国における対策の推進に有用である一方、例えばインフルエンザ(H1N1)2009の際にわが国で実施された大規模かつ継続的な学校の休業措置、手洗いやマスクの使用が積極的に行われたことなどは諸外国とは異なり、この対策への評価が求められている。将来には高い病原性の新型インフルエンザが発生する可能性もあり、これまでの知見を集約して、効果的でかつ実施可能な対策を構築していく必要がある。
研究2年目となる平成24年度は1)地域におけるインフルエンザ流行の動態に関する疫学研究、2)公衆衛生対応としての検疫の有効なあり方に関する研究、3)新型インフルエンザ流行時の公衆衛生対応に必要なデータ解析を行うとともにそのツール開発を目指した研究、および4)新型インフルエンザ等発生時の診療継続計画作りに関する研究を実施した。
研究方法
1)地域におけるインフルエンザ流行の動態に関する研究については、国内2か所のフィールドにおいてインフルエンザの流行に関するデータおよび学校の休業措置に関するデータを収集してその解析を行った。2)公衆衛生対応としての検疫の有効なあり方に関する研究では、国内検疫所に併設されている健康相談室入所者のなかで検疫所医師により要フォロー(経過観察例)と判断されたものと非フォローになったものの違いについて検討を行った。3)新型インフルエンザ流行時の公衆衛生対応に必要なデータ解析及びツールの開発研究については、まず被害想定を香港のデータを元にシナリオ分析を行った。さらにツール開発にむけた課題点とニーズの整理を都道府県・市町村の担当者及び有識者からなる委員会を立ち上げて、検討を行った。4)新型インフルエンザ等発生時の診療継続計画作りに関して様々な有識者からの意見聴取や他国のガイドラインの翻訳などを通して行った。
結果と考察
2011/12年シーズンではA型インフルエンザ(A/H3N2)とB型インフルエンザの混合流行であったが、A型インフルエンザでは未就学や学童から流行が始まり、他の年齢層に拡大していったが、B型インフルエンザでは未就学や学童の年齢層のみの流行であった。さらに地理的な分布を検討すると、人口の多い都市に隣接する地域から流行が始まっており、インフルエンザの流行動態に関する因子として人口密度と未就学・学童という年齢層の影響が明らかとなった。検疫所における検討では要フォロー者では上気道炎症状などいくつかの臨床徴候が有意に高かったが、これらの組み合わせによる探知には限界があることが明らかとなった。ツール開発に向けた取り組みとして行ったグループディスカッションでは、教育ツールに関する要望があり、そのためのスライドおよびビデオ教材を研究班で作成したウェブ(新型インフルエンザ対策エビデンスのまとめ)にアップロードした。診療継続計画作りについては、医療機関の規模による新型インフルエンザ等特別措置法やそれに基づく国や地方自治体の行動計画の中の役割の具体性が重要であることが確認され、それに基づいた継続計画のガイドラインが作成された。
結論
上に示したの結果をまとめることでさらにインフルエンザ流行時の公衆衛生対応の効果について知見を深めていく。また自治体における新型インフルエンザ対策に有用なツールの開発を行うとともに、平成25年度は新型インフルエンザ等特別措置法の施行をうけて自治体や医療機関での対策が進むものと考えられ、それらに対する効果的な情報発信を進めていく必要があると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2013-05-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
201225025Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,561,000円
(2)補助金確定額
15,561,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,343,675円
人件費・謝金 2,665,320円
旅費 2,583,550円
その他 3,377,541円
間接経費 3,591,000円
合計 15,561,086円

備考

備考
預金利息 86円

公開日・更新日

公開日
2014-05-15
更新日
-